あんちゃんの「はないき」が静かになった。
おっちゃんとおっかちゃんは空っぽの「おちゃ」をひっきりなしにすすっている。
もうすぐお姉ちゃんの「れーす」が始まるんだ。
「てれび」の中のお姉ちゃんは、歩きながらゆっくりとあたりを見回している。
とっても落ち着いている。
ように見える。
近くにいるわけじゃないからよくわからないや、えへへ。
そうこうしているうちに、みんなが「げーと」に入っていった。
いよいよスタートだ。
よし、いいぞ。
おっちゃんが小さく叫んだ。
「げーと」の中からお姉ちゃんが一番に飛び出してきた。
そのまま。。。あれ、あれれ?
あんちゃんが素っ頓狂な声を上げる。
お姉ちゃんは「げーと」を飛び出した勢いのまま、一番先頭をすごいスピードで走っている。
わあ、お姉ちゃんすごいや。
かかったか!(※)抑えないと。。。
おっちゃんが頭を抱える。
あんちゃんは口をパクパクさせて、あうあう言っている。
おっかちゃんは両手をぎゅって握って、目をつぶっている。
お姉ちゃん一番前で走っているのに、なんでみんなそんなに心配そうなんだろう?
お姉ちゃん一番速いね、このまま一等賞だね。
ボクがニコニコとそう言うと、おっちゃんが頭を抱えたままボクを見た。
あんなに飛ばして、最後まで体力が持つわけないだろう。
ええ、そうなの!?
ボクは急に心配になって「てれび」の中のお姉ちゃんを見た。
相変わらず先頭で走っている。
後ろとはすごく差がついているけど、だんだんとその差が縮まっている気がする。
お姉ちゃん、頑張って!
ボクは思わず叫んでいた。
※かかる・・・レース中に馬が騎手の制御を無視して暴走する状態。