お姉ちゃんが最後のコーナーを曲がって、「ごーる」まで一直線の道に出てきた。
まだ、先頭で走っているけど、後ろの馬達がどんどん大きくなってくる。
ああ、大変だ、「ごーる」の前の坂道でお姉ちゃんのスピードが遅くなった!
でも、お姉ちゃんに近づいてきた後ろの馬達も坂道で遅くなっているよ。
あと少しで「ごーる」だ、お姉ちゃん頑張って!
その時、後ろの馬達の中からすごい勢いで飛び出して来た1頭がいた。
あっという間にお姉ちゃんに追いつく。
うわぁ、お姉ちゃんが抜かれちゃう!
と思った瞬間だった。お姉ちゃんがぎゅんっとスピードを上げた。
追いついてきた馬との差が開いた。
と、お姉ちゃんが急にぴょんと斜めに跳ねて、その馬の前を横切った。
そこが「ごーる」だった。
やった、お姉ちゃんが勝った!
ボクは思わず声を上げてみんなの方を見た。
おっちゃんは頭を抱えたまま目を見開いている。
あんちゃんはぱくぱくさせていた口の動きが止まって、のどの奥が見えるくらい口をあんぐりとさせている。
おっかちゃんは両手を握ったまま、更に目をぎゅっとつぶっている。
あれれ、みんなどうしたの?お姉ちゃん、勝ったよ?
審議だ。
あんちゃんが口をかくかくさせながらつぶやいた。
しんぎ?
ポピーの勝ちが取り消されるかもしれない。
どうやら、お姉ちゃんが斜めに飛んだのが、後ろの馬の進行妨害をしたことになるかもしれなくて、
そうなると順番が変わる可能性があるらしい。
ええ?!そんなぁ。
結果が出るまではすごく長い時間がかかったような気がしたけど、もしかしたらそうでもなかったのかもしれない。
でも、ボクたちには「えいえん」のような感じがした。
もしかしたら、お兄ちゃんの「しゃしんはんてい」の時より、長い感じがしたかもしれない。
とっても息苦しかったのを覚えている。