セールに出してみるか。
あんちゃんが言った。
「せーる」?
ああ、たくさんの馬をいろんな馬主さんに見てもらって、気に入った馬がいたら買ってもらうんだ。
ま、売れるとは限らないけどな。
あんちゃんは、ボクの首をぽんぽんと叩いた。
お前も血統だけはいいんだけどなぁ。
あれ、もしかしてボク馬鹿にされている?
お前は体に問題があるしなぁ。
ボクの体に「はんで」があるって話は前にしたよね。そのことはやっぱり気になるらしいんだ。
でも、血統はいいんだよなぁ。
あんちゃんはまた同じ言葉を繰り返す。
いや、血統で走るわけでもないしなぁ。
そうやってあんちゃんはしばらくボクの顔を眺めながら、同じことをぶつぶつと繰り返しつぶやいていた。
思わずあくびが出ちゃったよ。
とりあえず駄目でもともとだな。うん。親父達と相談するか。
なんか納得したらしく、一人でうなずくとボクににっこりと笑いかけた。
まあ、いずれにせよ、まだだいぶ先の話だ。
「せーる」かぁ、どんなことろなのかな。楽しいのかなぁ。
ボクを買ってくれる人いるのかなぁ。
そこで、ふとある疑問がボクの頭に浮かんだ。
ねえ、ボク、そこで売れなかったらどうなるの?