ボク、そこで売れなかったらどうなるの?
ふと浮かんだことを口に出すと、あんちゃんはボクの鼻を軽くなでた。
お前はあいつの唯一の忘れ形見だしな、うちで自由気ままにしているがいい。
お前1頭くらいなんとか世話することはできるさ。
フローラがいい仔たちを生んでくれたからな。オーガもポピーも頑張ってくれているから。
じゃあ、ボクは小父ちゃんとかお兄ちゃん、お姉ちゃんのように「れーす」で走ることはできないの?
オラ、お前は走りたいか?
逆にあんちゃんがボクに聞き返してきた。
どうなんだろう、ボクは将来はみんなと同じように「れーす」で走るもんだと思っていたから、
走りたいかどうかなんて考えたこともなかったな。
ボクは思わず考え込んだ。
そんなボクを見て、あんちゃんはほほえんだ。
ま、いずれにせよ、売れなきゃ走れないし、売れたら走らなきゃならないんだけどな。
わからないなら、無理に答えを出すことはない。
いずれにせよ、お前が走りたいんなら、なんとか走れるように頑張るさ。
そう言うと、あんちゃんは伸びをして「ばぼー」を離れていった。
「れーす」か。
よく小父ちゃんから「れーす」の話しを聞いて、わくわくしてたけど、ボク走りたいのかな?
「ばぼー」から外を見ると、あおい空がどこまでも続いていた。