いよいよ「せーる」の日になった。
その日の朝早くあの化け物がやって来た。馬運車だ。
え?ボクがあれに乗るの?
後ろの大きい口が、がぁーっと開いた。
あんちゃんがボク引っ張って、そっちに連れて行こうとする。
ちょっちょっと待って。
なんだオラ、もう馬運車なんかじゃ驚かないって言ってなかったか?
いや、そ、それはそうだけど。ほ、ほら、なんて言うかさ。
あたふたしているボクを見て、あんちゃんがにやりと笑った。
もしかして馬運車がまだ怖いのか?
な、何言ってるんだい。こ、怖いわけないやい。
そうか、じゃあ、行くぞ。
あんちゃんはそう言うとボクを、ぐいっと引っ張った。
ちょっちょっと。。。ああ〜っ、た、食べられるぅ〜。。。
気がついたらボクは馬運車の中につながれていた。
馬運車の中は思ったより狭かった。
ほとんど身動きが取れないくらいだ。
でも意外と快適だ。ちょっと意外だな。
がたっと体が揺れた。馬運車が動き出したんだ。
うわっ、なんか変な感じだ。自分はじっとしているのに、ゆらゆら揺れるんだ。
うー、気持ち悪いよぉ。
そうこうしているうちに、揺れが止まった。
お疲れ、オラ。着いたぞ。
大きい口が開いて、あんちゃんが入ってきた。
よく我慢したな。
そう言うとボクの首を優しくなでてくれた。
ふぅ〜、馬運車に食べられるときはどうなるかと思ったけど、やれやれだ。
馬運車の奴、化け物だと思ってたけど、そう悪い奴じゃないのかも。