う〜んとね、よくわかんない。
坂石のおいちゃんに、レースで走りたいか、と聞かれたボクは、そう答えた。
だって、よくわかんないんだもん。
でも、お兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに、みんなより早く走ったら楽しそうだなって思うよ。
ボクがそう続けると、おいちゃんはにこりと笑った。
そして、あんちゃんとおっちゃんの方を振り向いた。
もしよければ、オラ君を私に売ってもらえませんか。
それを聞いて、あんちゃんとおっちゃんは目を丸くした。
ほんとにまん丸になったんだよ、なんだかおかしくなっちゃった。
みずくさいですよ、オラ君をせりに出すなら、一言私に声をかけていただいても。
おいちゃんがまた水が臭いって言った。
でも、今年はもう。。。
なんでも坂石のおいちゃんは、「うまぬし」さんでもそんなにたくさん馬を持ってるわけじゃなくて、
年に1頭か、多くても2頭くらいしか買わないんだって。
今年はもう2頭買っていたらしいんだ。
オラ君がせりに出て主取りになった聞いたものですからね。
買い手が見つかっていないんだったら、買わせてもらおうと急いで来たんですよ。
それだけならわざわざ来ていただかなくても。
おっちゃんがそう言うと、おいちゃんは首を振った。
ひとつ自分の目で確かめなきゃならないことがありましたんで。
おいちゃんはそう言うとボクのほうに目を向けて、そっと首筋をなでてくれた。
オラ君がレースで走りたいのかそうじゃないのかをね。
あんちゃんとおっちゃんは、坂石のおいちゃんに頭を下げた。
ありがとうございます、坂石さん。宜しくお願いします。
おいちゃんはボクの首筋をなで続けながらにっこりと笑った。
私が一応馬主ですが、実質的なオーナーは真矢のつもりです。
こうして、ボクは真矢ちゃんの馬になった。