じゃあ、君がこれから過ごす馬房に案内するよ。
調教師の高木さんはそう言うとボクの引き綱をつかんだ。
本当は大井君の仕事なんだけどなぁ、いなくなっちゃたしなぁ。
そう独り言を言うと、ちょんと引き綱を引いた。
さあ、オラ君こっちだよ。
ボクは促されるまま脚を進めた。
疲れただろうから今日はゆっくり休むといい。
これからたくさん練習しないといけないしね。
さあ、ここだ。
高木さんがひとつの「ばぼー」の前で足を止めた。
ボクが今までいたところよりちょっぴり明るくて、きょっぴりきれいで、
過ごしやすそうな感じだ。
ボクはちょっぴりうれしくなって、ぶふっと鼻を鳴らした。
すると隣の「ばぼー」から一頭の馬がにゅっと首を突き出してきた。
先生、そいつが新入りですかい?
ああ、そうだ。オラ君だ、仲良くしてやってくれよ。
高木さんはそう言うと、ボクのほうに顔を向けて、
彼はスカイクルー、みんなスカイって呼んでるけどね。君のひとつ年上だな。
そう言うとにっこりと笑った。
さあ、今日はもうご飯を食べてゆっくりお休み。
高木さんに促されてボクが「ばぼー」に入ると、どこからともなく大井さんが現れた。
ちっ、チビ助なんか寝藁でも食ってりゃいいんだ、と独り言を言いながら
ボクの「かいばおけ」にご飯を入れると、さっといなくなっちゃった。
ボクのおなかがぐぅっと鳴った。
あっという間にご飯を平らげると、疲れがどっと出てきて眠くなってきた。
さあ、もう寝ようかな。
すると、隣からスカイ兄さんが首をにゅっとのぞかせてきた。
おい、新入り、お前名前はなんていうんだ?