まだまだレースに出れる体じゃないけど、ゲート試験を早めに受けてみるかな。
高木さんがボクを見ながら小首をかしげる。
「げーとしけん」?
オラ君は見たことあるかな?
レースの時みんな箱みたいな檻みたいなところに入るだろう、あれをゲートっていうんだ。
うん「げーと」は知ってる。見たこともあるよ。
君たち馬は、基本的に狭いところでじっとしているのは苦手なんだ。
だけどレースでは必ずゲートに入らないとならない。
だからちゃんとゲートに入れるかをテストして、合格した馬しかレースに出れないんだよ。
ふーん。
そのためにゲートに入る練習を、そろそろ始めてみよう。
あ、「げーとれんしゅう」って、小父ちゃんが一番苦手だって言ってたやつだ。
ボクの「にゅうきゅう」が間近になった時に、サイキョウ小父ちゃんが言っていたことを思い出した。
ああ、サイキョウ君か。彼はゲートが大分うるさかったらしいねぇ。
そう言うと、高木さんはまたにっこり笑った。
じゃあ、さっそく明日やってみようか。
今ボクの目の前に「げーと」がある。
「げーと」には前と後ろに扉があるんだけど、今はどっちも開いていて、
ボクはその中を歩いて通り抜けなきゃいけないらしい。
「げーと」が口を開けて待ち構えているんだけど、馬運車のような怖い感じはない。
へへん、お前なんて怖くないぞ。
あの化け物と比べたら、なんてことはないや。
じゃあ、行くぞ。
ボクの背中に乗った「にんげん」がそう言ってボクのお腹をちょっと蹴った。
ボクは「げーと」の中をすっと歩き抜けた。
お、上手だな。
へへん、どんなもんだい。全然へっちゃらだよ。
何度かそれを繰り返すのを見ていた高木さんが声をかけた。
じゃあ、今度は前を閉めてやってみようか。