じゃあ、前を閉めてやってみよう。
何日か「げーと」を歩いて通り過ぎることを繰り返した後で、高木さんがそう言った。
まえを閉める?それって何だろう。
ボクが考え込んでいると、「げーと」の前のほうについている口が、ぱったりと閉まった。
前にも言ったけど、「げーと」ってやつには、前のほうにも扉がついているんだ。
それが閉まると、なんか今までと違うものになったみたいな感じがする。
むむ、意外と手ごわいやつなのかな。
また「げーと」の後ろに近づいていく。
さっきまでは、前の口も開いていたから、先のほうも見えていたんだけど、
今はふさがれていて「げーと」の中しか見えない。
そのせいか、後ろの口がなんか大きく見える。
ずるいな、今まで弱いふりをしていたんだな。
むむむぅ、ま、負けないぞ。
口が目の前に来た。
近づくと「ばうんしゃ」のような怖さはなかった。
実を言うとかなりドキドキしていたんだけど、ちょっと拍子抜けだった。
「げーと」に入ってしばらくじっとしていると、後ろの口も閉められた。
「げーと」の中は結構狭い。まわりからぎゅーっとボクの体を押さえつけてくるような感じがする。
ああ、この感じって。。。
その時、前のほうの扉が開いた。
おい、もう出ていいんだぞ。
ボクの背中に乗った人間に声をかけられて、ボクははっとして「げーと」の中を出た。
どうだった?
高木さんがボクの鼻をなでながらにっこりと笑った。
うん、なんか落ち着いて眠くなっちゃった。
すると、高木さんはびっくりしたような顔で一瞬固まって、それからあっはっはと笑い出した。
狭いところで落ち着くってネコみたいだねぇ。
「ねこ」?「ねこ」って何だろう。
「ばぼー」に戻ってスカイクルー兄さんにその話をすると、
お前って変わったやつだなぁ、
って呆れた顔で感心された。