そろそろボクの話をしようかな。
あ、その前にボクの相棒になってくれる人のことを忘れてたよ。
その人の話を先にしようか。
その人の名前は「げんじ」、みんなからはゲンって呼ばれてた。
ボクにずっと乗ってくれることになる人だ。
ゲンちゃんと最初に会った日は、いいお天気だった。
あれ?、それともどんよりしていたんだったっけ。
うーん、どうだったかなぁ。
ゲンちゃん印象薄かったから、あんまりよく覚えてないや。
ただ、高木さんがみんなにゲンちゃんのことを紹介した時に、
スカイ兄さんが、おやゲン坊戻ってきたんだ、って驚いていたのだけはよく覚えている。
実はスカイ兄さんは昔は別の「きゅしゃ」にいたんだけど、そこにゲンちゃんがいたんだって。
いたんだってことはやめちゃったの?
ボクが聞くと、兄さんが、お、お前にしてはカンがいいな、って褒めてくれた。
ん、褒められたわけじゃないのかな?
まあいいや、細かいことは気にしないんだ。
どうやら、ゲンちゃんは「げんりょう」(※)がきつくて、「きゅうしゃ」から逃げ出して、
そのまま「きしゅ」をやめちゃったらしい。
だけど、結局あきらめきれなくて、試験を受けなおして、また「きしゅ」になったんだ。
「きしゅ」にはなったけど、昔のことがあるんでどこの「きゅうしゃ」にも所属できなかったんだけど、
高木さんのところに来ることになったんだって。
どうしてうちに来ることになったの?
なんでもゲン坊の親父さんに昔世話になったらしいぜ、高木さん。
スカイ兄さんはそう言うとちょっと鼻を鳴らした。
※減量・・・競馬は騎手も含めて馬が背負う重さが決められているので、
ほぼすべてのジョッキーは減量する必要がある。