第6話「坂石家」


真矢ちゃんのお父ちゃん、サイキョウ小父ちゃんの「うまぬし」さんは、「坂石」さんって言うんだってさ。
サイキョウ小父ちゃんが最初に「じゅうしょう」っていうのをもらったからって、小父ちゃんの事が大好きらしい。
「じゅうしょう」ってなんだろう。一緒に遊んでくれるのかな。ボクも欲しいなぁ。

坂石のおいちゃんが来る時は、いつも真矢ちゃんが一緒だ。真矢ちゃんは、あれ以来、いつもボクの
「ばぼー」のところに遊びに来てくれるんだ。
相変わらず黙ったままだから、いっつもボクが一人でお話してるんだ。ずるいな。
何かお話してよ、そう言うと、いつもちょっと困った顔をしてうつむいちゃうんだ。
恥ずかしがり屋さんなんだな。変なの。
変といえば、小父ちゃんと小母ちゃんも変なんだ。真矢ちゃんがいる時は、いつもちらちらこっちの方を
気にしてるみたいなんだ。
二人とも、気のせいよ、って言うけど絶対嘘だな。お姉ちゃんだって変だって言ってたもん。

ある時、いつものように真矢ちゃん相手におしゃべりをしていたんだ。お姉ちゃんと一緒に遊んだ話を
していて、真矢ちゃんが、くすっ、と笑ってくれた。
その時、がたん、となんか凄い音がしたんで、びっくりしてそっちを見ると、坂石のおいちゃんが「ばぼー」の
入口のところでびっくりした顔で突っ立っているんだ。
おばけでも見たみたいな顔をしているんで、おばけが出たと思って恐くなっちゃった。ぶるぶる。
真矢、お前笑ってるのか、なんて坂石のおいちゃん変なこと言うんだ。
ええ、オラと一緒の時はたまに笑ってるんですよ、とサイキョウ小父ちゃんまで変なこと言い出した。
楽しいお話してるんだもん、当たり前じゃないか。それともボクのお話はつまらないのかな?
気がつくと、坂石のおいちゃんがボクの首に抱きついて泣いてるんだ。
目から出る水は涙って言うんだ。ボクも少しお利口になったでしょ。エヘン!
おかげでボクの首はおいちゃんの涙と鼻水でべとべとになっちゃった。きもちわるいよぉ。

真矢ちゃんが小さい頃、お母さんと一緒に交通事故にあい、その時以来言葉を話すことも、感情を表に
出すことも出来なくなったということを知ったのは、ずいぶん後になってからだ。
真矢ちゃんが教えてくれた。
お母さんは、真矢ちゃんの目の前で息を引き取ったらしい。




第7話へ
オラ日記バックナンバーへ
オラ日記タイトルへ戻る