ありゃー、びりっけつだよ。
ちょっとがっかりして戻っていくと、高木さんと坂石のおいちゃんが待っていた。
残念だったねぇ。
高木さんがボクの首をポンポンと叩く。
すみません。指示通りぽんと出て前につけようと思ったんですが。
ボクに乗っていた「きしゅ」のひとが頭を下げた。
あ、この時はまだゲンちゃんじゃないんだ。
ちょっと滑っちゃったねぇ。
うん、頑張ってすぐに「げーと」から出ようとしたんだけど、ずっこけちゃった。
ボクはちろっと舌を出した。
でも、そのあとみんなに追いつこうと思って、頑張って走ったんだよ。
だけどどんどんみんなから置かれていっちゃった。
なんでだろう。
緊張してたのかなぁ。走るフォームがばらばらだったねぇ。
ちゃんと走れてれば、あそこまで離されなかっただろうね。
そこで、坂石のおいちゃんのほうを向いて続けた。
とりあえず今回は、レースに慣れさせるのが目的で、その後も間を開ける予定でしたから、
タイムオーバーは関係ありません。
気はいい子ですから、じっくり鍛えますよ。
おいちゃんは高木さんの言葉ににっこりとうなずいた。
今日は真矢ちゃんは来てないの?
ボクはきょろきょろとあたりを見回した。
オラ君のデビュー戦だからとても来たがってたんだけどね。
人が多いところは怖いんで、やっぱり来れなかったんだよ。
おいちゃんはボクの鼻に手を置いて、そう言った。