その後も何度かレースに出たけど、結果はいまひとつだった。
けっ、いまひとつどころか、さっぱりじゃねぇか。
タイムオーバーになってないだけ、ましになっちゃいるけどよ。
むむぅ、確かに大井さんの言うとおりだ。
一生懸命走っているけど、みんなどんどん前に行っちゃって、追いかけるのだけで精いっぱいだ。
ずーっと、後ろのほうを走っていて、最後に疲れて下がってきたうまを抜かすのがやっとなんだ。
うう〜ん。
調教だともうちょっと走れているんだけどねぇ、レースだと勝手が違うのかねぇ。
高木さんが首をひねる。
まだ勝ち負けまでは厳しくても、相手次第では掲示板(※)くらいまでは行けると思うんだけどなぁ。
あ、あの。。。
その時か細い声が聞こえてきた。
みんなが声のするほうを向くとゲンちゃんだった。
ゲンちゃんいたんだ。気が付かなかったよ。
れ、レースの時の、オラ君、た、楽しそうに見えないです。
んん〜、そう言われてみればそうだねぇ。
調教の時はこっちがやめさせようとしても、いつまでも走ってそうな時があるけど、レースの時は違うなぁ。
高木さんがあごに手をやってボクのほうを見た。
オラ君、レースは楽しいかい?
ええ〜、あんまり考えたことなかったなぁ。
楽しいかどうかはよくわからないけど、頑張らなきゃって思っているよ。
それかなぁ。レースだと走りがぎこちなく感じてたんだよねぇ。
よし、オラ君の次走は、ゲン君、君が乗りなさい。
高木さんがにっこりと手をたたくと、ゲンちゃんは目を白黒させていた。
※掲示板・・・5着までに入ること。