第67話「前がかり」


となりの「うま」は「げーと」に入ってからもがたがたとうるさかった。
それにつられて、がたがたしだす「うま」が何頭か出はじめた。
みんな大丈夫かなぁ。
な、なんか他人事みたいだね、オラ君。
ゲンちゃんが珍しく小さく笑った。
え?だってボクのことじゃないよね。ボクは大丈夫だもん。

そうこうするうちに「げーと」が開いた。
そのとき、となりの「うま」が立ち上がって、がたんと大きな音がした。
うわ。ボクはちょっとびっくりして、ぴょんと前に飛び出した。
オ、オラ君、いいスタートだよ。
ゲンちゃんがボクの首をポンとたたく。
あれ?ちょっとラッキーだぞ。

「げーと」を出たのはボクが一番早かったみたいだ。
ボクの前には誰もいない。
ボクが先頭だ、とうれしくなった瞬間、
となりでがたがたしていた「うま」があっという間にボクを追い抜いて行った。
ありゃー、抜かれちゃった。
そして、その子につられて、ほかの子も何頭か後をガーっと追いかけていった。
ありゃりゃ、先頭だと思ったのに、あっという間にまん中くらいになっちゃったぞ。

み、みんなつられて、かかっちゃった(※)ね。
つ、ついていかなくてもいいから。
ぼく達は、お、落ち着いていこう。
ゲンちゃんがボクにそう声をかける。
そして、にっこりと笑って、
−ゲンちゃんの顔を見ているわけじゃないからわかるはずないんだけど、
でも、にっこりと笑たのが分かったんだ−、
ここが牧場だと思って、た、楽しく走ろう、って言った。

ボクは、お姉ちゃんとかけっこをしている時を思い出した。
するとなんだか楽しくなってきた。あははは。
でも、ボクを抜いた「うま」たちはかなり前のほうに行っちゃった。
ずいぶん小さく見えるな。
ねえ、ボクたちも追いかけなくていいの?
だ、大丈夫。あ、あの子達は、そのうち疲れて止まるから。

※かかる・・・29話を参照




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