第68話「ゴール」


なんとうかの「うま」たちがぐんぐんスピードを上げて走っていって、
「れーす」が「はいぺーす」っていうやつになった。
一番さいしょに「げーと」を出て先頭だったのに、ボクは今はまんなかくらいを走っている。
うーん、ほんとうにいいのかな?
ちょっと心配になってきたぞ。

オ、オラ君、他の子達のことは気にしないで、
さっきまでみたいに、た、楽しく走ろう。
ゲンちゃんはそう言うと、ボクの「たづな」をちょっとゆるめた。
そう言われると、ボクはまたなんだか楽しくなってきた。
やっぱり走るのって楽しいなぁ、あははは。

メリーポピーお姉ちゃんとかけっこをして、ボクはいっかいも勝ったことがなかった。
かけっこのあとは決まって、お姉ちゃんは、ふふん、って笑って、
あなたもまだまだね、って言いながらボクの首をかむんだ。
くそー、今度こそ負けないぞぉ。
目の前にお姉ちゃんのお尻が見えてきた。
今日は絶対抜いてやるんだ。
いつもはお尻に近づいたと思うと、すぐに離されちゃうんだけど、
今日のそのお尻は見る見るうちに近づいてきて、ボクはぐんと前に出れたんだ。

それはお姉ちゃんじゃなかった。
あ、そうだよね、ボク「れーす」を走ってるんだもん。
気が付いたら、ボクの前を走っている「うま」はみんないなくなっていた。
そして、ボクの後ろを走っていた「うま」たちがすごい勢いで追い上げてきていた。
そこが「ごーる」だった。
ボクたちは勝ったんだ。

「れーす」のあと、みんなのところに戻ると、高木さんはにこにこして、
オラ君、ゲン君、二人ともよくやったね、って褒めてくれた。
今日はとってもいい感じで走れていたねぇ。
有力馬が前に行ってつぶれてくれてラッキーだったこともあるけど、それが勝因だね。
そう言いながら、高木さんはボクの首をなでてくれた。

久しぶりにお姉ちゃんとかけっこしている気分だったよ。
とっても楽しかった。
ボクが「きゅうしゃ」に帰ってそう言うと、スカイクルー兄さんは、ニッと笑った。
そりゃあれだ。
あの姉ちゃんと比べたら、ばてて下がってきた馬たちは止まってるみたいだったろうぜ。




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