「れーす」の当日は、真矢ちゃんと坂石のおいちゃんは「てれび」でボクを見ていたらしい。
おいちゃんはおしごとから帰ってきたばかりだったんだって。
最後の直線では、思わず叫んでしまいましたよ。
近所迷惑だったですね。
気が付いたら、解こうとしていたネクタイを逆に締め上げていましたよ。
危うく窒息するところでした。
おいちゃんは高木さんにそう言いながら頭をかいた。
真矢もよほどうれしかったのか、画面を見ながらぽろっと涙を流したんですよ。
へええ、涙ってうれしい時にも出るものなんだ。
おいちゃんだけかと思ってた。
またひとつおりこうになっちゃったな。えへん。
でも、そうか、だからなんだな。
ボクは一人で納得した。
おいちゃんがボクを見るなり泣き出したわけだ。
ボク、そういうところ、「にんじょうのきび」って言うの?
そういうのもわかるようになったんだ。えへん。
あの親父さんは、お嬢さんのことになるといっつもあんななのかい?
スカイクルー兄さんが、びっくりした顔をしてボクに尋ねた。
うーん、そうだね、うん、そうかも。
ボクはちょっと考えてからそう答えた。
ふうん、でも、なんであのお嬢さんが涙を流すと、親父さんはあんなに大喜びするんだい?
兄さんは不思議そうな顔をしている。
うーんと、あのね。。。
ボクは兄さんに真矢ちゃんのことを話した。
へえ、そいつはてぇへんだったなぁ。
でも、そうか、お前のおかげでちょっとずつ笑ったり泣いたりできるようになったてのか。
そりゃよかったじゃねぇか。
ぐしゅって音がしたので、兄さんの顔を見上げると、ぽろぽろ涙を流しながら、鼻をすすっていた。
兄さんもちょっとおいちゃんに似ているところがあるようだ。