「はつしょうり」をあげたあとも、ボクの日常は変わらない。
ひとりとだったりみんなとだったりで、何回もかけっこしたりする。
かけっこじゃなくて調教って言うんだけどねぇ。
高木さんがぽりぽりと頭をかく。
うーん、前もこんなこと言ってた気がするねぇ。
「ちょうきょう」でたくさん走った後は、ご飯を食べるんだ。
おなかがペコペコになるから、とってもおいしいんだよ。
オラ君はいつもそう言ってるねぇ。
でも、最近はちょっと体が大きくなってきたね。
そこは前とは違うところかな。
高木さんがにっこり笑う。
でもチビ助にゃあ変わりねぇですぜ。
ボクのご飯の用意をしてくれている大井さんが毒づいた。
お、オラ君、毒づくなんて言葉を覚えたんだね。
えへん。ボクはちょっと自慢したい気分になった。
けっ、調子に乗るんじゃねぇや。
調子に乗るなら、せめてまぐれじゃなくて、実力でもう一つ勝ちやがれてんだ。
大井さんはそう言ってひきあげていった。
うーん、彼も相変わらずだねぇ。
高木さんは、大井さんを目で追いながら「にがわらい」した。
そうそう、勝つといえば、次のレースを決めたよ、オラ君。
高木さんがボクのほうに向きなおった。
今度の相手はみんな勝ったことがある馬ばかりだ。
だから大変だろうけど、次も楽しく走ることを目標にしよう。
まあ、慣れるというか、ちょっと強い馬たちを相手に、
どこまで走れるか試してみる感じかな。
そう言いながら、高木さんはボクの首をぽんっと軽く叩いた。