あの人にそんな過去があったとはねぇ。
スカイクルー兄さんが頭を振った。
あとは、厭世的な気分というか、無力感というか、いろんなことが嫌になったとか、
そんな思いも重なっているんじゃないかなぁ。
高木さんはそう言うと腕を組んで天井を見上げた。
そして目線下げて、ボクのほうを見ると、にっこりと笑った。
彼は、嫌い、という感情も持ちたくないと思っているはずだよ。
嫌いは愛情の裏返しだからね。
だから、さっきのオラ君の質問に対する答えは、嫌いじゃない、だな。
むむ、高木さん、なんか難しいこと言ってるぞ。
とりあえず、大井さんはボクのことは嫌いじゃないらしいってことらしい。
喜んでいいのかな?
あっはっは。なんか腑に落ちない顔をしているねぇ、オラ君。
よくわからなかったかな?
そう言いながら高木さんはボクの鼻をなでてくれた。
大井さんがあんな感じなのはそういうわけがあるんだな。
でもよ、さっきも言ったけど、なんでかあの人はオラには口数が多い気がするんだよな。
それって、オラにはちったぁ感情が動いてんじゃねぇか?
兄さんがぶふんと鼻を鳴らしながら首をかしげた。
そうだといいねぇ。
高木さんが目を細めた。
僕はね、入厩することが決まってオラ君のことをいろいろ聞いた時、
大井君を担当にしようと思ったんだ。
オラ君みたいに、なんというか、天真爛漫な仔の担当になれば、
少しは昔の大井君に戻ってくれるんじゃないかと思ってね。
ぶふっ、先生、天真爛漫って、オラは馬鹿ってことですかい。
いやいや、スカイ君、いい意味だよ、いい意味。