ボクがつまずかなければゲンちゃんケガしなかったのに、ごめんなさい。
そ、そんな、き、騎手にけがは付き物だよ。
そ、それよりも、お、オラ君が大したことがなくて良かったよ。
ボクが「きゅうしゃ」に戻ってくると、包帯姿のゲンちゃんが出迎えてくれた。
ゲンちゃんが「たいいん」した時は、ボクはお休みであんちゃんの「ぼくじょー」に帰っていたから、
高木さんのところにいなかったんだ。
だからゲンちゃんと会うのは、あの時以来だ。
ゲンちゃんも意外と元気そうでほっとしたよ。
う、うん。ほ、骨もきれいに折れていたから、時間はかからずに治りそうなんだ。
あ、あとは、落ちた筋肉を戻すのと。。。
そこで、ゲンちゃん下を向いて、ちょっと顔を赤くした。
た、体重を落とさなくちゃ。
ぼ、ぼくには、こ、これが一番きついなぁ。。。
最後の方はほとんど聞き取れなかった。
じゃ、じゃあ、ぼ、ぼくはこれで帰ります。
ゲンちゃんは、ボクに会うためだけに来てくれたらしい。
でも、本当にゲンちゃん、大したことなくて。。。
ん?、いや、結構大したことだよね。
うーん、それでもそこまで大したことなくて良かった。
そうだねぇ、並のジョッキーだったら、あんなもんじゃすまなかっただろうねぇ。
いつの間にか、高木さんがボクの横にいた。
ゲン君は、バランスを含めた身体能力は実はジョッキーの中でもぴか一なんだよ。
騎乗技術もね。
ただ、あの性格だからねぇ、一部の人しか知らないんだけど。
そこでちょっとため息をついて、クスリと笑った。
まあ、一番の問題は本人がそれに気が付いてないことなんだけどねぇ。
ごめんなさい、ボクも知らなかったよ。
ほら、オラ君、ゲン君が乗っている時は走りやすいだろう?
あ、確かにそうだ。とっても走りやすいよ。
技術と能力だけでも勝てないのが競馬の難しいところなんだよねぇ。
むむ、高木さんの言っていることのほうが難しいな。
ボクが「ばぼー」に戻ると大井さんが、ボクの寝床を作っていた。
よう、チビ助。