よう、チビ助。
確かにそう聞こえたんで、ボクはあたりを見回した。
高木さんは黙ってにこにこしているだけだし、他には大井さんがいるだけだ。
スカイクルー兄さんも隣の「ばぼー」にいない。
そもそも、兄さんはボクのことを、「チビ助」なんて呼ばない。
そら耳かな?
その時、大井さんがちらりとボクのほうを見た。
よう、チビ助、お帰り。
大井さんだった。
大井さんがボクに話しかけることなんかなかったから、ボクはびっくりした。
た、たたた、ただ、ただい、ただま、ただ。。。
びっくりして、もごもごしているボクを見て、大井さんはポリポリと頭をかいた。
びっくりしたか。そうだよな。
そのまま話し続けるのかな、と思ったらそのまま黙り込んじゃって、仕事を続けてる。
う、うーん。
結局変わんなかった。
は、はい?
急にまた大井さんが話しはじめた。
な、なんか、調子が狂うな。
お前が落馬した時さ。
心を閉ざしていれば、苦しまずに済むと思ってたけどな。
そんなことはなかった。
そこでまた黙り込んじゃった。
ううん、これが続くのかな?
怖かった。
ぼそっと大井さんがつぶやいた。
同じだった。
お前が死んじまうんじゃないかって、怖かったし、苦しかった。
結局、何も変わらなかったんだ。
そこでまた少し口をつぐんだ。
結局、俺は逃げてるだけだったんだな。
だから、やめた。
もう、心を閉ざすことはしねぇ。
そこで大井さんが、かすかにほほ笑んだ。
今まですまなかったな、チビ助。