第85話「心配」


すまなかったな、チビ助。
大井さんがボクに謝っている。
もうボクびっくりだ。
ただな、人間そう簡単にゃ変われねぇ。多分憎まれ口はそのままだ。悪いな。
うむむ、これからもボクは大井さんに憎まれ口をたたかれるのか。
でも、これからはボクとおしゃべりしてくれそうだな。
よかった。

ああ、そうそう、そういえば、ボクのことをとても心配してた人が他にもいたな。
真矢ちゃんだ。
あれは、今からちょっと前、まだあんちゃんの牧場にいた時だ。
いつものぶるぶると音を出すすました「くるま」がやって来た。
坂石のおいちゃんだ。
話しかけてもお返事をしてくれないのが分かったから、もう「くるま」とはおしゃべりをしない。
おとなだな、ボク。

ぶるぶるという音がやむかやまないかのうちに、
とたたたという足音が聞こえたかと思うと、真矢ちゃんが飛び込んできた。
うわ、真矢ちゃんがあんなに速く走るのを見るのは初めてだ。
ボクの「ばぼー」の前で止まると、真矢ちゃんはおろおろとボクの顔と脚に目をやった。

ボク、元気だよ。
ボクは真矢ちゃんににっこりと笑顔を見せた。
すると、真矢ちゃんはほっとした顔になって、その場にぺたんと座り込んだ。
遅れておいちゃんが入ってくると、真矢ちゃんの頭に手を置いた。
ほらね、大丈夫だって言った通りだろう?
そして一緒に入ってきたあんちゃんに顔を向けた。
すみません、騒がしくして。
オラ君の顔を見るまで、心配でたまらなかったようでして。
いえ、最初は私たちも肝を冷やしましたから。

そして、あんちゃんは真矢ちゃんの前にしゃがみこんだ。
心配してくれたんだね、真矢ちゃん。
ありがとう。
真矢ちゃんは、恥ずかしそうにちょっとだけ微笑んだ。




第86話へ
オラ日記バックナンバーへ
オラ日記タイトルへ戻る