ゲンちゃんが「れーす」に乗るために頑張っている間、ボクも頑張っていたよ。
何回か「れーす」で走ったんだ。
けっ、そんなこと言ったって、お話にならねえ着順じゃねぇか。
頑張るなんて言ってちゃあ、おてんとさんに顔向けできねえぜ。
むむ、相変わらずの大井さんだ。
大体この間なんて、あの早さんに乗ってもらったてのに、さっぱりだったじゃねぇか。
早さん、っていうのは、何年も連続で「りーでぃんぐ」を取っている、すごい「じょっきー」なんだって。
えへへ、頑張ったんだけどね。
でも、あの時は走りやすかったなぁ。
一流はさすがに違う、か。
でもそれであの着順じゃ、おめぇ駄目じゃねぇか。
大井さんが頭を抱えた。
そう言えばチビ助よ、レースの後に早さんに何か話しかけられてたな。
なんだったんだ。
うん、ゲンちゃんの様子を聞かれた。
もうすぐ「れーす」でも乗れるみたいって話したら、楽しみだ、って。
彼は昔からゲン君のことを買っていたからねぇ。
声がするほうを向くと、高木さんがにこにことしていた。
ゲン君が騎手に復帰した時は、人知れず喜んでいたしねぇ。
そういやぁ、昔、何かの取材で期待する若手騎手を聞かれて、弱虫の名前を上げていたことがありやしたねぇ。
周りは冗談だと思って、記事にならなかったですけどね。
そんなことあったねぇ。
高木さんは思い出したようにくすくすと笑った。
それで、そのゲン君だけどね。
いよいよレースに復帰することになったよ。
オラ君、君の次走はゲン君が鞍上だ。