けっ、去年無敗の短距離王が5番人気たぁ、はぁー、さすがになめすぎだって。
いやぁ、大井君、さすがにそれはしょうがないねぇ。
高木さんと大井さんが「てれび」を見ながらしゃべっている。
今日は「たかまつのみやきねん」の日。
ゲンちゃんの「はつじーわん」ってやつだ。
そういえば、競馬がある日に高木さんが「きゅうしゃ」にいるのは珍しいな。
いやぁ、今週は土日とも出走がなかったからねぇ。
高木さんがボクの方を振り返った。
ぎく、高木さん、ボクが考えていることが分かるのかな?
松沢先生が言っていた通り、セキト号はだいぶ急仕上げだったんだろうねぇ。
ひいき目にみても完調一歩手前って感じだよ。
そうですけど、他の出走馬はもう勝負付けが済んだ相手ばっかりですぜ、
いくら状態が万全じゃないからって、そこまで人気落としますかね。
ふたりは「てれび」で「ぱどっく」を見ているらしい。
まあ、テン乗りでゲン君だしねぇ、お客さんが買いたくなる要素は、うーん、無いだろうねぇ。
身も蓋もねぇですねぇ。
そこで、はあー、とため息をついて大井さんは首を振った。
まあ、弱虫のあの顔色見たら、確かに強気にゃあなれねぇかぁ。
ちらりと「がめん」を覗くと、ちょうどゲンちゃんが映っていた。
青い顔をして汗がだらだら流れているよ。
なんだかおかしいや。ぷぷ。
こら、笑い事じゃねぇ。
大井さんがボクの鼻をぺちりと叩いた。
さあ、もうすぐ発走だ。
頼むからちゃんと乗ってくれよ、弱虫。
大井さんが柄にもなく目をつぶって手を合わせている。
ボクもなんか緊張してきたぞ。
大丈夫かな、ゲンちゃん。