圧勝だったねぇ。
いや、強ぇや、セキト。
そして弱虫の野郎も、あんな情けない面して、強気でしたねぇ。
スタートで隣の馬にぶつけられて最後方に下がった時はどうなるかと思ったけど、
腹くくったねぇゲン君。
高木さんと大井さんが、ほっとしたような顔で話している。
ねえ、ゲンちゃん勝ったの?
ああ、無事勝ったよ。
高木さんがにっと笑った。
しかも、ただ勝っただけじゃない。
文句なしだ。強かったねぇ。
レース前に心配したのが、阿呆らしいほどの勝ちっぷりでしたね。
心配して損しちまった。
ねえ、強気って言ってたけど、ゲンちゃん、何が強気だったの?
ん?お前ぇに言ってわかるかな、スタートしてすぐに弱虫が一番後に下がっちまったのは見てたな?
うん、「あくしでんと」ってやつだね。
ああ、隣の馬がスタートでよれてぶつかってきたからな。
セキトは好位につけて直線向いたところで先頭に立って押し切るっていう、
横綱相撲でずっと勝ってきた馬だ。
本来なら前目でレースをしたい、最後方ってのは、ま、最悪だわな。
ふーん。
距離も1200mだし、脚を使っても前に上がりたくなるところを、
弱虫の野郎、じたばたせずにそのまま最後方でじっとしてやがった。
へーえ。
そして直線に向いたところで、最後方から全馬ごぼう抜きだ。
スタートのあの一瞬でよく腹くくれたよ。
それだけじゃないんだ。
高木さんがにっこりしながら口をはさむ。
一見、派手な直線一気の競馬だったけど、セキト号に全く負担をかけていない。
道中もリラックスして走らせていたし、直線でも無理な追い方はしていない。
ゲン君の大ファインプレーだ。
うわぁ、すごいんだねぇ。
でも。。。
うーん、やっぱりよくわかんないや。
えへへ。
舌を出すボクを、大井さんは呆れた目で見ていた。