そんなこと、たぁ、えれぇ言いようだな。
大井さんがあきれたような声を出す。
それは、あたしにとっては、元司さんよりオラ君のことのほうがはるかに重要ですもん。
なぜか、鍋井さんは得意げな顔をしている。
ああ、そういえば鍋井君はオラ君の母馬のことが好きだったとか言っていたねぇ。
高木さんがあごに手をやりながらボクのほうを見た。
好きなんてものじゃないですよぉ。
あたしが競馬にはまったきっかけは、たまたま見たあのオークスだったんですからぁ。
ああ、あの最後の直線のあの走り。
神様がこの世に降り立ったかと思いましたよぉ。
もう、しびれましたぁ。
鍋井さんがうっとりとした顔で天井を見上げた。
なあ、あの姉ちゃん見てると、なんかおいらみたいな気がしてくるぜ。
スカイクルー兄さんがボクのほうに首を伸ばして、ぼそっとつぶやいた。
確かに、サイキョウ小父ちゃんの話をしている時のスカイ兄さんにそっくりだな。
なんだかおかしいや、ぷぷ。
あの仔の唯一の忘れ形見であるオラ君に会いたいがために、
ずーっと競馬部への異動希望を出していたんですからぁ。
ようやく念願かなったんです、オラ君第一です。
おめぇ、そりゃ、完全に自分の趣味じゃねぇか。
公私混同もいいとこだ。
大井さんがさらにあきれた声を出す。
そうですよ、悪いですか?
こいつ開き直りやがった。
大井さんが首を振る。
ちゃんと仕事をしているからいいんです。
鍋井さんはけろっとした顔をしている。
で、次走はいつなんですか?
鍋井さんが高木さんのほうにくるりと顔を向けた。
そうだねぇ。
高木さんがあごにあてた手で、そのままあごをぽりぽりとかきながら首を傾げた。
前走の不良馬場の競馬のダメージが思ったより抜けないんだよねぇ。
もうちょっと先になるかなぁ。