第99話「絶好調」


次の「れーす」に向けてボクは一生懸命頑張った。
かけっこもたくさんしたし、ご飯もいっぱい食べたよ。

う〜ん、前にも言ったけどかけっこじゃなくて調教なんだけどねぇ。
高木さんが苦笑いをする。
カイバをたくさん食べるのはいつものことじゃねぇか。
それなのにちっとも大きくなりやがらねぇな、チビ助。
大井さんも相変わらずの「にくまれぐち」だ。
まあ、あいかわらずちっちゃいのは本当だし、何も言い返せないや。
でもボク元気いっぱいだよ。

うん、実際、体調は上がって来たねぇ。
状態だけで勝負が決まるなら、ぶっちぎりで優勝だ。
それだけじゃ勝てないところが競馬の難しいところだねぇ。
状態が良すぎて調子に乗ってたバカもいやがるしな。
大井さんがちらりとボクの隣の「ぼぼー」に目をやった。

いや、めんぼくねぇ、反省してますよ。
あんまりいじめないでくだせぇよ。
スカイクルー兄さんが恥ずかしそうに頭を下げる。
兄さん、この前の「れーす」ではりきりすぎて、
「れーす」がはじまる直前に出られなくなっちゃったんだって。
「きょうそうじょがい」(※)とか言ってたな。

いや、あまりにも調子が良かったもんで、早く走りたかったから、つい。。。
つい、じゃねぇや。
ゲートの前扉に突っ込みやがって。
下手したら、おめぇもジョッキーも大けがしてたところだ。
大井さんが舌打ちをしながら、今度はじろりと睨みつけた。

まあまあ、大事にならなかったからよかったよ。
高木さんが大井さんをなだめるように声をかけた。
でも、今度からは調子がいい時ほど気を引き締めようね。
気ぃ付けます。。。
兄さんは消え入りそうな声で身をすくめた。
ま、チビ助はゲートで突進するような心配はねぇけど、
お前はお前でレース中に調子に乗ることがあるからな。
弱虫の言うことをよく聞いて競馬するこった。

うん、ボク、ゲンちゃんの言うことよく聞くよ。
あれ?っていうか、ゲンちゃんはボクにあれしろこれしろとか言わないっけ。
あはは。

※競走除外・・・装鞍所からレースのスタートまでに病気やケガ等でレースに出れなくなること。




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