「ISOが進めるマネジメントシステム規格の統合的な利用」
2009.05.30

著 者出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
国際標準化機構日本規格協会4-542-40237-92006年4月24日3300円全一巻
【MSS】マネジメントシステムスタンダードの略、マネジメントシステム規格あるいはMS規格ともいう。ISO9001とかISO14001その他最近とみに粗製乱造されているものをいう。
たとえ話である。笑い話かもしれない。
エアロパーツというものをご存じだろうか? 車のボデーにつけて高速走行時に安定して走れるようにするいろいろなパーツである。昔よく見かけたのはリアウイングスポイラーといって後部のトランクにつける水平尾翼のようなもの。最近はあまり見かけないが、どうしてだろう。
サイドスポイラーというのは左右につけて車体の横を空気がきれいに流れるようにするため。エアダムというのはフロントバンバーのあたりの空気の流れを整流するため。
しかし、ほとんどのエアロパーツは、かっこよさが目的で、実際の効果は気は心程度と聞く。
おっと、ここまでは、まだたとえ話の前ふりなのだ。
そういうエアロパーツはメーカー純正もあるが、純正以外にもたくさんの会社が作っている。ところで、ある会社でサイドスポイラーとエアダムを売っていたとして、お客さんが両方をつけようとしたら、ぶつかってしまって取り付かないとしたらどうだろう? お客さんはメーカーに「お宅が作っているものを取りつけようとしたら取り付かない。欠陥品だ」と苦情を言うだろう。
あっ、つまらないですか?
車なんか興味がない、という方もいらっしゃるでしょう。
ではもう一つ、たとえ話を・・
パソコンのソフトってものは微妙でして、アプリケーション同士が干渉して動作が具合悪くなってしまうということはよくあることです。このとき、ふたつのアプリケーションのメーカーが違えばあきらめもつきますが、同じ会社の製品でしたら、「真面目に作れよ」と言いたくなりませんか?
ハードであろうとソフトであろうと、メーカーであれば自社の製品がバッテングしてしまって使えないんじゃ、メーカーの恥ではありませんか?
そんな会社はないだろうですって?
まあ、たとえ話ですよ、たとえ話ですって 

ISOマネジメントシステム及び第三者認証制度の評論家(!)である私は「マネジメントシステム」とか「システム統合」という語句の入った本を見ると買わないとならないという強迫観念を持ってしまう。この本の公告を見たとき、そのへんの怪しげなコンサルが書いたのではなくISO(国際標準化機構)が編集したとあるので、買う価値があるだろうと思った。
まして尊敬する(?)吉澤先生監訳とあるじゃありませんか。期待できそうです。
しかし買うのを逡巡した。だって安くはない。もちろんそんなに高くはないが、たった150ページしかないのに3450円なのだからどうみても高すぎる。
日本規格協会がもうけすぎているのか、あるいはISOの版権が高いのだろうか?
ともかく、公告をためつすがめつ、そして本屋にも足を運び現物を手に取り立ち読みもした。そして結局買ってしまったのである・・
しかし手に取ればいっそうこの本が安っぽいのが気になった。
紙質はISO対訳本の紙質のような上質紙ではなく、安物コミックのようにざらざらで厚手の紙である。
まあ、外観はどうでもよい。「人は見た目が9割」とかいう本があったが、本は中身がすべてだ。
なになに、「組織は、適用の複雑さとそれらの関係経費の増加の問題に直面している。本書は、これらの問題に取り組み、複雑なマネジメントシステム規格の要求事項を適用する組織に、統合的取り組みを利用するガイダンスを提供したい(p13)」とある。
複数のMSSがあることについて、実際にはどのようにしたらコンフリクトが生じなくまた手間暇かけないかということを親切にもアドバイス(?)してくれるそうだ。
しかし、これっておかしいよね!
「ISO規格の統合的運用を考える」と一般人、いや、コンサルや審査員、あるいは認証機関が語るのは許す。
しかし、ISO規格を製造(!)しているISOが、そのようなことを語るのは許せない。
己が作っている規格が入り乱れ、ユーザーがそれらの関係を改めて整理しなければ使い物にならないのだろうか?
取り付けるとぶつかってしまうようなエアロパーツを作っているのと同じではないか。そのようなMS規格を作っていることを恥じなければならない。

うそ800 いやしくもISO(国際標準化機構)なら、こういいなさい
「どのMSSでもそれを具現化すれば、当然他のMSSも満たしますから、心配することはありません」
しかし、現実はそうではない。だからそういう規格を作ったISOとISO-TC委員、その他もろもろは十二分に反省しなければならない。

結局、金儲けに目がくらんでMSSを粗製乱造して、世界に混乱をもたらしただけではないか。もちろん、そうなった背景は、初期のISO9001の認証制度の成功に味をしめたIAFや関係業界の要望にこたえようとしたことにあるだろう。
だが、そうであってもだ、新たに制定するMSSの相互関係を良く調整して、要求事項の矛盾や干渉などが起きないようにすることはできたはずだ。どのエアロパーツメーカーだって、実際に車に取り付けて、お互いにぶつかったりしないことくらい確認しているだろう。
ソフトの場合はもっと難しいことは認める。その会社のソフト間の関係だけでなく、ハードの影響もあるだろうし、他のソフトも大きな影響があるだろうから・・
だが、MSSなら単なる文字の連なりだ。他のMSSと比較検討して矛盾がないかどうかくらいは誰にだってできるはずだ。だからそのくらいしなければならないのは当然ではないのか?
しかし、ISOは大量生産するMSSの整合性をとることなく、リリースして企業に無駄と混乱をもたらした。それに不満を持ち苦情を言う人は少ないのかもしれない。しかし顕在的でなくても、潜在的・無意識にたくさんの人はMSSの要求事項の不整合に疑問を感じ、これらのMSSを見限りそれを捨て去りつつあるのではないだろうか。
それが読了感である。

本日の結論
ISOのMSSは粗製乱造だ。そしてくだらないMSSは世間から見捨てられるであろう。
それが性能の悪い製品を供給したメーカーへの報いである。

本日の反省
広告につられて3450円を無駄使いした私はバカでした。


名古屋鶏様からお便りを頂きました(09.05.31)
佐為様、いつもお世話になっております。
絶滅危惧種の水平尾翼車(笑)オーナー、名古屋鶏です。
アレはですねぇ、トランクを開ける時の取っ手代わりに便利なんですよ。

今度はISO50001(省エネMSS)なんてのが、出るそうですね。
「オレ様(ISO規格)の方法で結果を出せ」と言われてもねぇ・・・
こんなのが出てくると、また「認証の取得を」という話が来るんですかね。
昨日も私は省エネ関連の現場改善で休日出勤でした。
頼むから、これ以上仕事の邪魔をしないでくれ、と願いたいのですが。
名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
えつエアロパーツって、空力ではなくドアノブだったの知りませんでした。
省エネの規格・・聞いてます、聞いてます。規格に従って動けば省エネになるんですかねえ〜?
じゃあ、京都議定書対応手順てのを教えてちょうだいな 
おっと、ISO9001って品質マネジメントシステムの規格でしたよね?
 あれをやって早16年、一向に品質が良くならんのですよ・・・
そういえばISO14001って環境マネジメントシステムの規格でしたよね?
 あれをやって早13年、一向に環境が良くならんのですよ・・・
省エネマネジメント規格ですか?
 良くならないのは・・もう・・間違いないじゃないですか 
まきぞう様からお便りを頂きました(09.05.31)
雨が続きますね。
ごぶさたしてます。まきぞうです。
マネジメントシステム規格がやたらと作られていることに対し、社会がどんな受け止め方をしているのか、規格を作る側は分かっていないのでしょうね。
J▲COネット枠の会員サービスを見ていると、ISO規格になろうと頑張っている新たなMS規格が存在していることが月報とかいう形で読み取れます。

エネルギーマネジメントシステム?
余計なお世話ですよね。省エネは自社でやってます。経産省だけじゃなく東京都をはじめほとんどの自治体が独自要求しているじゃありませんか。これ以上の要求なんかいりません。冗談じゃないです。
カーボンオフセット規格?
どこどこでの風力発電分を購入、とかとか、いいことのように見えますが、またしても偽造偽装のネタを作っているように思えてなりません。ISOだろうがなんだろうが、MS規格が偽装防止をするのではないと思います。この偽装社会ではこの規格も汚されていくのでしょうか。心配。
カーボンフットプリント?
商品のCO2が少ないからって、それだけではモノを買いませんよね。今の携帯電話やテレビなんて必要なのか分からないような機能ばかりくっつけて、無駄を増やしてませんか?モノを買う時に冷静に何を手に入れたいのかを考えるのが普通だと思います。CO2が多い商品はいずれ淘汰される、なんて本当ですかね。現在省エネ法でトップランナーを満たしている機器は、使用中のCO2は少なくても製造までのCO2は多いように感じますが。
それに製造工程の外にいる人達にはフットプリントのためのデータ取りがどれだけ大変なのか分からないでしょう。徹底的にデータを取れ?そんな余裕ないです。暇な事務局でもくっつけといてください。一部の大企業や特徴的な工程だけをあげて世の中みなそういうもんだ、と思われてしまいそうで怖いですね。
他にもEMSの簡易版とかもあるようですが、ISO14001認証がハードルが高いのならやめればいいと思うし、この時代、認証をもってなければならない社会ではないでしょうに。
(認証が免罪符と思っているのでしょうか?企業は税金以外にも原罪を購わなければならないと?)

どれもこれも、規格作る側は真剣に議論して結構ですが、会議で集まることだけでもやめたらよっぽどエコではないかと思うのです。
新しいMS作る前に、おばQ様のHPを5分でもいいから閲覧しなさい、と言いたいです。
まきぞう様 毎度ありがとうございます。
おっしゃるとおり、まったく同意です。
環境に良いことと思ってしているのか? お金になると思ってしているのか? 惰性でしているのか?
私にはよくわかりません。わかるのはあまり意味がなく、効果がなく、逆効果かと・・
大恐慌の今こそ、初心に帰り、品質保証、環境保護、安全、安心を考え直すべきです。

ただ、まきぞう様 一つだけ異議があります。
おばQのHPを除くのは最大の無駄かと・・・

ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(09.06.01)
まきぞう様
たしかにマネジメントシステムの濫立にはもうお腹イッパイの感がありますね。
カーボンフットプリントに至っては、何の冗談ですかと言いたくなります。
個々の製品がどのようなライフサイクルを迎えるかが定かでないのに、なぜにCO2発生量を定量化して表示できるというのでしょうか?
・大阪工場で生産された商品が大阪で消費される場合と、北海道まで運ばれて消費される場合とが、同じCO2発生量ですか。
・家電製品などの商品(耐久消費財)で、購買者が飽きて3年で廃棄する場合と寿命以上に15年も使う場合とが同じCO2発生量ですか。

結局、表示数値の信憑性というものは皆無ではないかと思います。
要するにライバル他社が100gなら自社の相当商品は95gでいこうか、根拠となる算定式と条件はこのパラメータをちょっと細工して、、などと環境側面の点数化などと同じようなインチキがまかり通るだけではないかと愚考いたします。

まきぞう様からお便りを頂きました(09.06.03)
おばQ様
ぶらっくたいがぁ様
コメントありがとうございます。
MS規格の乱立を奇異に感じているのが皆同じであることを願います。もっと願うはISO/TC委員の方々や認定機関、審査機関も同じようにこの無駄を感じ取ってもらえればと思いますが、まあ無理なのでしょうか。
ISO界というのは内側にいると盲目になるよう暗示がかけられているのかもしれません。規格の行間とやらには人の目には容易には見えない、サブリミナル効果みたいなものが存在しているのかもしれませんよ。だから日本規格協会の本は高いのではないでしょうか?特殊な印刷とか。
それは冗談としても、何か物事の内側にいれば、周りが見えなくなるのは当然のことです。自分の業務も少しは引いた目が必要なのだと言い聞かせています。反省。
旧知の設計士の方と先日お話ししていた際
「この10数年間で、日本でもっともボロイ商売した業界はどこだかわかりますか?」
と聞かれました。こたえはISO関連業界、ということですが、その方はISOとはなんら関わりはない人なので、そう感じている人は業界関係に限られたことではないようです。本当にボロイ商売だったかどうかはわかりませんが、客観的に見れば、規格を作って、認証して、一方で教えて、本を出して、コンサルタントもして、で、何も責任をとらなくていい、となると普通は「楽」でしいこと、と思います。
とりとめもありませんが。
まきぞう様 毎度ありがとうございます。
会社の不祥事はなぜ起きるのか? 周りの人は気がつかないのか? とはよく言われます。
たとえば漢字検定でも、トップがやりたい放題をしているのをまわりの職員が知らないはずはありません。結局、その状態に慣れていしまって不思議とかおかしいとか感じなくなってしまったのではないでしょうか?
審査員が「まあ、こんなものさ」と思いこんでしまう、認証機関が「従来の路線上だ」と認識する。認定機関が「どの認証機関も似たようなもの」と思う・・そういったことの積み重ねで現状を不思議とも何とも思わなくなっているのではないでしょうか?
だからその業界の自浄作用はあまり期待できそうありません。
ところで、ボロイ商売というと語弊がありそうですね。認証業界がものすごく大儲けしたのかといえば、実はそんなことはありません。日本の認証機関の利益率は1パーセントからせいぜいが3パーセントでしょう。
つまり30億の売上(ということは上位5本の指に入るという事です)があっても、利益はせいぜいが3000万から6000万というところでしょう。そういう認証機関は150人くらいの人を雇っていますから、3000万といっても微々たる金額です。
日本に認証機関は50社もあるのですから、下の方の認証機関はもう食うや食わずという状態でしょうね。帝国バンクなどを調べると各社の売り上げとか利益がわかりますが、もううらやましいどころではなく同情して憐れむほどの状態です。
ただ元手いらずという意味では悪くはないとは言えるでしょう。
認証機関にいて幹部だったり、評判の良い審査員だったりすると、停年になってから自分で審査機関を立ち上げて!なんて考えるようになるのでしょう。
でも行く手は厳しく、利益を出せるのはやはり大手審査機関だけのようです。
コンサルも営業から苦情処理までありますし、会社にやるきがなくてお金を出すから認証するまで面倒みてよなんて言われると、私だったらいやですね。
おっと、私の場合お足を頂かないボランティアですからなおのこと・・・
ぶらっくたいがぁ様にもまきぞう様からのお便りがあったことをお伝えしておきます。
また書き込んでくださいね。

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