価格破壊 2009.02.28

中国の農薬汚染野菜、毒物混入食品、欠陥家電品などなど最近とくに中国製品の評判は悪い。悪いだけでなくその評価は落ちる一方、下がる一方だ。それは風評被害でなく、実質的な問題があるからだろう。家内も私もお店で手に取った商品に「メイドインチャイナ」あるいは「中国産」と書いてあると、熱いものに触れたようにすぐに手を離す。正直言って中国製品は使いたくないし、食べたくない。 特に食品は絶対買わない。中国産食器からは重金属の溶出も報じられているので中国産と表示があると買わない。命が惜しいから、口に入るものは安全第一である。報道によれば、衣類でも禁止殺虫剤付着があるとか。

しかし中国製品は悪なのか?なんていえばそんなことは絶対にない。中国製品は日本人にものすごいショックを与えてくれた。日本人の目を覚ましてくれたのである。
../stpchaina.gif 1991年頃だろうか、田舎町にも100円ショップというのが現れた。私は買うものがなくても休みのたびに100円ショップにいってあふれるほど並んでいる商品を眺めていた。今まで高価だと思っていたもの、あるいは日用品でも一定の相場があったもの、そんなものをぜーんぶ100円で売っていた。商品のほとんどは中国製であった。中国製でなければそれほど安く作れるはずがない。もちろん、ほとんどの製品の質は悪く、使い物にならないものも多かった。数冊で100円のノートは学校で使うというより、とりあえず今日の町内会の集会でメモに使うかという程度であったのは事実。ビニールのふで箱などは触った感じがベトベトした。一度額をかけるフックを買ったが、形は日本製と全く同じだったが、額をかけた瞬間に壊れた。大半の製品はまっとうではなかったが、ともかく安いというだけで大ショックだった。
もちろん中国製といっても、それほど粗悪ではなく実用的なものもあった。ユニクロは安い中国製の衣類を提供した。その値段が安いために、必要ないものまで大量に買う人もいたし、現在もいるようだ。そういった人々をユニクロ症候群と呼ぼう。 
娘はヴィトン大好き女だ。私が彼女のヴィトン好きをからかうと娘はユニクロで無駄使いするより良いと反論する
私はヴィトンにもユニクロも買わずお金を溜め込んでおくほうが好きだ。
日本では品質や機能にこだわるあまり、必要以上の品質、使わない機能まで盛り込みしすぎて高いものを作り、消費者は高いのがやむを得ないと思い込んでいたということはあると思う。
中国製品による価格破壊は雑貨、衣類に止まらず、食品、食器、家電品、家具、自転車、バイクとあらゆる分野に拡大していった。自転車など剛性がなくてグラグラして不安があるが、1万円以下という値段ならしかたがあるまい。
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中国製バイクなんて見たことないとおっしゃる方へ
中国製電動自転車がおおはやりだそうです。あれは法律上電動アシスト自転車ではなく、登録と免許が必要な原動機付き自転車つまりバイクになります。
中国製品が安かろう悪かろうであっても、安いものが欲しい人、とりあえず間に合えば良い場合、多機能はいらない場合は中国製品を買うことは合理的行動である。その結果、日本製品も安くなり、というか中国製品に対抗して単機能とか細かいことにこだわらないものを製品化したために価格破壊が起こったと思う。
もちろんバブル崩壊、共産圏の崩壊とともにグローバル化の進展、流通の変革、大規模店の伸張もあったろうし、いろいろな要件によって価格破壊は起きて現在に至る。今では不動産など日本製以外ないものであっても1990年頃の価格相場とは大違いとなった。そりゃ名目賃金が下がればそうなるのだろう。
その結果、製造業は絞れるものは絞りに絞り、賃金や雇用などにしわ寄せがきたのも事実だ。
ともかく今現在はブランド品以外あらゆるものといっていいほど商品全体の相場が下がったのは事実であり、それは悪いことではない。所得が下がったとか月給が上がらないとかいうマスコミや一般人は多いが、購買力は決して下がっていない。実質国民所得から見れば失われた10年は存在しない。
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http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe084/gaku-jfy0841.csv及びhttp://www.amy.hi-ho.ne.jp/umemura/konna/gdp.htm#nendoから作成。
このグラフを見ると94年から04年までの10年間、名目では日本経済が停滞しているように思えるが、実質購買力は継続的に上昇している。
バブル崩壊とは経済崩壊ではなくデフレでもなく、単なる価格のデノミでなかったのだろうか?

文章は起承転結という。実を言って今までは前振り、起承転結の「起」と「承」なのである。
では次から本題である「転」にはいる。
1994年以降日本の物価はあまり上がっていないし、製品によっては大きく値下がりしているが、下がっていないものも多数ある。例えばNHKの受信料金は変わっていない。物価が下がっているのだから、実質値上がりというべきだろう。
週刊誌も値段が下がっていない。新聞はさまざまな値引きがあり、トイレットペーパーから野球のチケットなどの現物給付もあり本当の相場は分からないが、家電品のように下がっていないことは間違いない。
まさか、文字が大きくなったり紙面がカラフルなったから、実質的に値下げになっているなんてボケは語らないだろう。
さて最近の話題であるが、大手新聞社といわれる朝日新聞や毎日新聞社は大赤字だそうだ。一般企業なら赤字決算だとマスコミは水に落ちた犬を叩くように悪しざまに報道し、その結果そんなに悪くない企業が倒産まで追い込まれるケースもあるようだ。
流通業界の有力者が「日本経済を悪くしているのは何か?」とマスコミに問われて「マスコミだ」と答えたというのは、まさに真実をついている。
「日本の政治を悪くしているのは何か?」とマスコミに問われて「マスコミだ」と答えても真実だろう。(09.02.26麻生首相はそう語った)
しかしマスコミは右も左も助け合い、仲間の傷口に塩をすりこむようなことは絶対にしない。他の新聞社の損益が悪いことを批評しないだけでなく、マスコミ関係者が不祥事、性犯罪、凶悪犯罪、大麻、暴行事件、脱税、経済犯罪をしようと紳士協定があって報道しない。ああ麗しき同胞愛 
ともあれ、新聞社は今ビジネス上大変な時期だ。インターネットの影響で人々は正しいニュースを早く知ることができ、新聞は配る前から旧聞になっている。
私たちが子供の頃のなぞなぞでは「一日経つと古くなるものなーんだ?」といったものだが、現在では「はじめから古いもの」と言わねばならない。もっとも現在では、なぞなぞ遊びそのものが死滅したようでもある。
../nude2.gif そして週刊誌もダメージを受けている。ニュースであろうと、スキャンダルであろうと、ニュース写真であろうと、ヌード写真であろうと、エロ話であろうと週刊誌の得意としていたものすべてがインターネットにお株を奪われてしまった。週刊誌を読むのはネットにアクセスできない人、できない場合のみである。
テレビは新聞や週刊誌より速報性があるから大丈夫か? 大丈夫ではないようだ。
まずインターネットによってテレビの偽善性、偏向性、独善性がばればれとなった。やらせが恒常化していることもばればれとなった。テレビもやはりインターネットが提供する情報との戦いに遅れをとり、その競争力は大幅に低下した。それによってコマーシャルが減り、経営は危機である。
しかし!そういう状況下においてもマスコミのコストには価格破壊はない。名目国民所得が上向いていないからNHKの社員の賃金を減らして一般庶民に合わせようという話を聞いたことがない。民放ならそれも許されるだろうが、国民のみなさまから貴重なお金を強制的に徴収している、おごり高ぶるNHK様はいかがお考えなのであろうか?
以前からのアイデアであるが、NHKの日曜大河ドラマでぜひともNHKの大奥の物語を期待したい。男と女の関係、権力闘争、国民を操ろうとする思想闘争、使いこみ、うそ800の内部告発者をどのように処遇したのか、これは金太郎飴のようにパターン化した大河ドラマよりはるかに面白いと確信する。NHKだけでなくテレビを見ない私であるが、そんなノンフィクションが放送されたら受信料金を払っても見ることを約束する。
マスコミ再生のためにすることはたくさんあるだろうが、まずマスコミ以外の商品やサービスを見習って、価格破壊をしなければならない。
NHKなら受信料を3分の一にしてみる。そのためにはアナウンサーやディレクターの賃金を半分にしよう。民報もコマーシャル料金を半分に、人件費を半分に、国民をこけにする番組をなくすなど、トライすべきことはいっぱいある。
週刊誌でもお値段を100円にする。そのためには経営者から記者から末端の社員まで賃金を3割にする。新聞も同じく、大幅値下げしよう。
そういうなりふりかまわない行動によってはじめてインターネットと戦う土俵に立てる。その上でインターネットより正確で公平中立な報道をするのだ。即時性がないぶん、一層の知的成果を求められるが、それは言い換えれば時間的余裕があるのだからできなくてはならないし、できるはずである。
10年前を思い出せば、地図ソフト、時刻表、ニュースなどはインターネットでもお金を払って情報を得たものだ。それが今は無料!
新聞がインターネットと戦うにはそうとうな技術革新と、ビジネスモデル改革が必要なことは明白だ。
そうしても勝てるかどうかは分からない。
しかし、昔の商法にあぐらをかいていては、勝つ以前に戦うこともできないよ
ともかく過去20年、日本の名目物価が相当に下がっているのにマスコミの価格が下がらないのはおかしい。しかも内容がなく信頼性も怪しいのだからインターネットという情報源が出現した今、従来の価格ではそっぷを向かれるのは当たり前だ。新聞というビジネスモデルが時代遅れなのかどうかはまだ議論の余地はあるが、利用者から見て費用対効果がないのは議論の余地はない。
新聞社の経営者から末端の社員まで、顧客満足、サービスマインド、職業倫理というものを省みなければ世界最大の発行部数なんてあっという間に無に帰しますよ。

本日の「結」
中国は日本人の目を覚ましてくれた。さすがマスコミが中国を崇め奉るのは間違っていなかったのだ。
マスコミは真実を伝えなかったが、人々に真実を気付かせてくれた。
ありがとう 

本日の疑問
価格破壊って、実は本来の価格になることでしょうか?



あらま様からお便りを頂きました(09.02.28)
価格破壊
佐為さま あらまです
「価格破壊」というと、小生は ダイエーの創始者 故 中内功氏を思い出します。
とにかく「定価」に対抗して、より安く・・・が彼のモットーでありました。
しかし、廉売をすることは、結局は自滅するのが世の習いのようで、中内氏も寂しい最期であったようです。
やはり「適正価格」ということを無視してはいけないと思います。
それにしても、安さの秘訣は、結局は「人件費」のカットです。
そのために日本の企業は、人件費のより安いところを求めて、都会から田舎へ、日本からアジアへと、労働力を求めました。
その結果、日本は、アジアの安い労働力に対抗して、ワーキングプアー族を誕生させたという観測もあります。
「価格破壊」が世界経済を「破壊」してしまったということでしょうか。
なんでもかんでも叩くという手法は、結局は自分が叩かれるということではないでしょうか。
今の価格設定のあり方には、大いに疑問を持っています。
以前は、1000円亭主でしたが、今では 500円亭主の あらま です。

あらま様 毎度ありがとうございます。
グローバル化、中国展開の激動真っただ中のあらま様からの言には重みがありますね。
おっしゃるように適正価格というものはあると思います。
ただ私の駄文は、価格破壊がテーマじゃありませんよ  「転」からのマスコミ批判ですんで、そう真正面から問い詰めないでくださいな

KY様からお便りを頂きました(09.03.01)
シナチス製品を使うのは命がけ?
中国製品は日本人の目を覚まさせた
確かに「メイドインチャイナ」でも安全性に問題の無い製品なら使いますが、爆発するような椅子なら御免蒙ります。公共施設で使われる椅子にガス圧で座高を調整する種類があったときは、つい裏側を観る癖が付いてしまいましたが、当然の「癖」と思いますが、考えすぎでしょうか?

KY様 毎度ありがとうございます。
爆発する携帯電話、死に至るお酒、薬にも毒にもなる薬ではなく毒にしかならない薬・・・枚挙に困りません。
そのうち上海のビルが倒壊、崩壊するのが続出するのではないでしょうか?
向こうではビルは7年程度持てばよいらしいです。
私の知り合いは中国出張したとき、築後6年たったビルには近寄らないって言ってます。


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