ケーススタディ 順守評価 09.10.19
この文章、たった一時間で書きました。
どこかのコンサルさん、認証機関さん、あるいは出版社さん、アイデア豊富な定年退職者を雇ってくれませんか!
才能がありませんか?
やはりないですか、そうですか・・orz

「山田君、順守評価の時期になった。」
平目が話しかけてきた。
「ISO規格の5.5.2の順守評価ですね。どのような方法をするのでしょうか?」
山田は規格を読んでも順守評価とはどういう仕方でするのかわからなかった。規格では規制を受ける環境法規を守っているかどうかを点検することなのだが、具体的にはどうすればその要求を満たすのだろうか?
「まず4.3.2で作った該当法規制一覧表というのがあるね、知っているかい? あれを作るのは大変だった。試行錯誤の繰り返しで4ヶ月くらいかかったように思うよ。」
平目は過去の思い出話、自慢話になると止まらない。元々そういう性格らしいのだが、間もなく定年なので一層感慨深いのだろう。
山田は話がそれる前に口をはさんだ。
「平目さん、該当法規制一覧表は分かります。それを持って各部門を歩いて合否を点検するのでしょうか?」
平目は話の腰を折られていささか心証を害したようだ。この人はカラオケでマイクを持ったら離さないに違いない。
「山田君、そんなことをしていたら日が暮れてしまうよ。該当法規制一覧表の電子ファイルを各部門に電子メールで送って、点検結果を記入して返送してもらうのだ。我々はそれがすべて○になっていることを確認すれば良いんだ。」
「平目さん、そんな方法で遵法確認は大丈夫なのですか?」
「大丈夫、過去のISO審査では太鼓判をいただいている。審査員の方は当社の方法ほどしっかりしているところはないとおっしゃったよ。この方法はボクが考えたんだ。」
山田は過去の順守評価結果のファイルを持って自席に戻った。昨年同様に一覧表を添付してメールをばらまけば任務完了らしい。どうもこんな簡単な方法では月給分の仕事をしている感じがしない。まるで捨扶持をもらっている身分のようだ。
【捨扶持】(すてぶち)
江戸時代、武家ではあるが老幼・婦女・不具者など役に立たない家に救済として与えた録(ろく)。転じて役に立たない者に与える給料をいう。

山田は半日、昨年実施した各部門がチェック印を付けた該当法規制一覧表を眺めていた。
リストのトップには環境基本法があり、次に循環型社会形成推進基本法があり、以下省エネ法、廃棄物処理法、グリーン購入法・・・と並んでいる。そして表の右側の列には○×をつける欄があり、点検者のサイン欄がある。
該当法規制一覧表
法令名
判定
点検者
環境基本法
山下
循環型社会形成推進基本法
山下
エネルギーの使用の合理化に関する法律
岩手
廃棄物の処理と清掃に関する法律
宮城
・・・・・・・・・・・
宮城
・・・・・・・・・・・
宮城
山田は環境法規制など全然知らない。しかし営業で20年仕事をしていたので営業関係の法規制はあらまし知っていた。もちろん知らなければ仕事にならない。民法、商法、下請法、建設業法もある。据え付けなど作業が発生すると建設工事に該当する。外為法(がいためほう)もある。北朝鮮に迂回輸出されてえらいことになった会社もある。そういった法律を守っているかをチェックしようとしたら、それぞれの法律にただ一つの○×をつけることは不可能だろう。契約書の有無、内容、印紙の金額から消印、実際の支払い、法律によって点検項目は異なりそれぞれ数十項目あるに違いない。
いったいこれらの○×は法律の何を点検したのだろうか?

別の疑問もある。環境基本法と循環型社会形成推進基本法に○印がついている。
山田は環境基本法を読んだこともなかったが、ふつう基本法というものはプログラム規定と呼ばれ、国の行為を定めているもののはずだ。それは個別法に展開されて初めて一般企業や国民が関わることになる。基本法を守るということ、いや守っているかどうか確認することってあるのだろうか?
眺めていると疑問がふつふつとわき上がってきた。ただすぐに平目に聞くことはしなかった。ここ2週間の経験から、平目に聞いても頼りになる回答があるとは思えなかった。
いったい順守評価というのはどういった方法が適正なのだろうか?ということだ。
山田はインターネットで順守評価というキーワードで一時間以上の時間、検索してみた。いろいろな方法が見つかったが、はたしてそれで良いのか?どれが良いのか?見当がつかない。平目方式もあるにはあったが、山田は信頼性が乏しいと思う。各部門にチェック表を渡して法律を守っているか回答せよという方法で安心できるはずがない。ISO規格が組織のあるべき姿を示すものならば、そんなもので十分なはずはない。審査員がOKしようがだめなものはだめだ。
ISO14004というガイド的位置づけの規格には具体例が載っている。これを見ると順守評価とは記述が具体的ではないがいろいろな方法がある。平目方式はこれのどれに当たるのだろうか?どうも当てはまらないような気がする。
実施間隔とか記録はともかく、どんな方法で行うことが良いのだろうか?
無意識にISO14001対訳本のページをめくっていると序文で自分が何度もマーカーを付けたセンテンスが目に入った。
「組織がこの規格の要求事項に適合した環境マネジメントシステムを構築するに当たって、既存のマネジメントシステムの要素を適応させることも可能である。」
ちょっと日本語としてこなれていないなあと思いつつ何度となく読み返した。何か引っかかるのだ。
山田はアッと思った。
「適応」の原語は「adapt」だ。辞書を引けば確かに「適応」という日本語もある。しかしここは「当てはめる」と訳すべきではないのか?おお、ちゃんと「合うようにする」とか、「改造する」などの後ろに「当てはめる」という言葉もあるじゃないか。
つまり、ISO規格のために順守評価として新たに何かを行えというのではなく、過去より行っている決裁や点検を当てはめるべきじゃないのか? 具体的には管理者の検印や決裁、あるいは内部牽制を行っていることが順守評価ではないのだろうか?
そういう見方をするとISO規格って常識そのもののように思えてきた。
しかし待てよ、それはいいけど環境基本法なんて守っているかどうかどうやって調べるのだろう? 努力義務とか訓令規定なんて合否判定ができそうない。

../coffee.gif 山田は腕組みをして天井と床の間あたりをずっと眺めていた。
つまりその前の段階で何かつじつまが合わないのではないだろうか?
山田は該当法規制一覧表を見なおした。該当法規制とはそもそもなんなのだろう?
本社が該当する環境関係の法律のリストなんだろう。とすると環境基本法は該当しないのではないだろうか?
いや待てよ、環境活動をするにあたって日本の環境に関するもっとも最高位にある環境基本法が該当しないと考えることは間違っているんじゃないだろうか?

山田は考え続けた。
はたして該当法規制一覧表というものは必要なのだろうか?
今環境保護部は環境に関わる法律を調べ上げ、それを守らせ、守っているかを調べようとしている。だけど会社が廃棄物処理法に違反するのと、セクハラで問題になるのと、偽装請負で摘発されるのは同列だ。環境だからと言って特別扱いする必要はないし、そのような運用管理はあきらかにおかしい。ならば環境に該当するとかしないということで、法律を色分けすることは意味がないのではないか?
じゃあ、営業では業務に関わる法律をどのようにして教育し守らせ、遵法状態をどのようにして点検していたのだろうか?
外為法はチェックリストがあり契約時に担当である山田がそれに記入する、そして上長が確認し、外為法担当の係が内容と添付資料をチェックしてOKになって初めて契約できた。あの外為法の係のチェックを遵守評価と言えないだろうか?
いや一般の契約だって単に課長、部長が決裁してOKというわけではない。法務部というところがあり、取引先が暴力団など反社会的団体ではないこと、契約条件が商法、会社法などに反していないかを点検した。営業担当としてはせっかくとった契約をチョットした瑕疵でパーになるのではないかと心配したこともあったが、あれは会社としてやるべきこと、あるべき姿であると今思った。
そうか!やはりISO規格の序文でいう「組織がこの規格の要求事項に適合した環境マネジメントシステムを構築するに当たって、既存のマネジメントシステムの要素を適応させることも可能である。」とは、個々の法規制の順守状況を現在どのように点検しているかを調べそれを当てはめることに間違いない。

だが、山田はさらに考える。
そうだとすると、いまさらISO事務局が考えて指導するまでもないことではないか。会社というのは会社法をはじめとしてダブルチェックが当然なのだ。ならば、5.2.2項に対応する記述として
「当社においては環境だけでなく業務に関わるすべての法規制について、実務担当者の執行をその処理ルートにおいて第三者が点検しその点検結果を記録する仕組みとする。」としてはまずいのだろうか?
参考
4.5.2.1 順守に対するコミットメントと整合して、組織は、適用可能な法的要求事項の順守を定期的に評価するための手順を確立し、実施し、維持すること。
組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。

会社その他の法規制に従って、業務の会社規則においてその点検方法は決められている。もちろんその記録についても。輸出管理や契約決裁権限のチェックは企業存続に関わるもので厳しいこと言うまでもない。現在ISOの順守評価として該当法規一覧表に○×をつけているのとは大違いだ。

では運用としてはどうしたらいいのだろうか?
なにもせずに、各部門が司司(つかさつかさ)で業務を粛々と行ってくれればそれでよいのではないだろうか?

ちょっと待てよ! 環境に関わる法規制という前提がある。環境に関わるかどうか、どうして示せば良いのだろうか?
会社の事業に関わる法規制をすべて把握して守っていることを示せば良いのだろうか?
あるいはこれは環境に関わる法規制だと表示しなければならないのだろうか?
山田は考え続けた。



本日の課題
・4.3.2を満たすためには環境に関わる法規制を明確にする必要があるだろうか?
・会社の業務において点検する方法を4.5.2順守評価として問題ないだろうか?
・環境基本法の順守評価は必要だろうか?




湾星ファン様からお便りを頂きました(09.10.19)
佐為さま
湾星ファンです。宿題回答です。

・4.3.2を満たすためには環境に関わる法規制を明確にする必要があるだろうか?

JIS版には、「組織の環境側面に関係して適用可能な・・・」とあります。
湾星ファン 環境側面=業務ですから、業務に適用される法規制、が規格要求事項であり、「環境関連法」のみを特定しろ、とは、どうしても読み取れません。私は、頭が悪いのでしょうか。いや、本音を言えば、審査員は「環境関連法」しかご存知ないので、それ以外の法規制も含めて審査しろと言われても困るから、規格要求事項には書いてなくても、組織に「環境関連法のみを抽出」することを強要しているに過ぎない、と理解しております。もちろん、環境関連法すらご存知無い審査員もたくさん居るなんて失礼なことは、夢想だにしていません。

・会社の業務において点検する方法を4.5.2順守評価として問題ないだろうか?

それ以外に、どんな方法があるのか、浅学非才の私には想像もできません。
どうすれば規格に「適合」できるのか、是非ご指導賜りたく・・・orz

・環境基本法の順守評価は必要だろうか?

いやもう、伏してお詫び申し上げます。佐為さまのご指摘をいただくまで、環境基本法を順守評価する必要があることを全く理解していませんでした。
今後は、心を入れ替えてISO事務局業務に邁進いたす所存で・・・(ry

湾星ファン

湾星ファン様 毎度突っ込みありがとうございます。
つまり、湾星ファン様は、頭が悪く、浅学非才で、腹黒い人だったというわけですね
いけませんね〜
これからは審査員様のありがたいお経を・・いや違った・・誤解釈を・・いや違ったご解釈をうやうやしく傾聴し精進に励まなければなりません。
いや、まだあなたはおばQジジイと違って若い、ISO教の悟りを開くことができるでしょう。
励めよ わぁはぁはぁぁああああ〜


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