「電力会社のお仕事」 10.08.21

出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
日本電気協会新聞部4-902553-82-62009年12月12日1300円全一巻

世の中にお仕事はたくさんあります。でも普通は自分が従事した仕事とか、身近に見たことがある仕事しかその内容は知らないでしょう。私が体験した仕事といえば、高校時代にアルバイトをした自動車修理屋やスーパーの売り子を含めても、いくつもありません。世の中の多くの人は、自分が体験した仕事以外はあまり知らないわけですし、中にはまったく想像もつかない仕事もあるでしょう。
ISO審査員なんて、審査員本人と会社のISO担当者以外は何をしているか知らないでしょう。
電力会社のお仕事 この本は、たまたまお邪魔した電気工事の会社で見かけました。応接室のテーブルにありましたので、どんな本だろうかと手にとってパラパラとめくっていたら、そこの人が「持って行っていいですよ」という。
その口調からあまり大事な本でないという印象を受けました。それで私は電力会社の無料の広報用パンフレットかと思い、遠慮なくいただいてきた。

帰り道の電車の中ではじめから読み始めますと、序文に「電力会社に入社したばかりの社員のみなさんのガイダンス用として、また就職を控えている学生のみなさんを対象としたリクルート用として編集した」と書いてある。後ろを見るとISBNコードも値段もついていて、本屋で売られているちゃんとした本で、無料のパンフレットでないことを知った。しかももう何刷もされている。ベストセラーとまでは行かなくてもけっこう売れている本のようである。

読み進むと、電力会社ではどんな仕事をしているのか、こんなことをしています、あんなことをしていますと書いてある。本の冒頭に「電力会社とは仕事のデパート」とあるが、まさに発電所の建設から、外国での燃料買い付け、原発の運転、送電線の保守、一般家庭まで電気を届けること、検針、集金・・いやはや、まさに仕事のデパートである。 そして地震や台風や豪雪などの際の対応など、実際のエピソードがいくつも載っていて、その奮闘に目頭が熱くなる箇所もある。 また電力関係の主要な数字も載っており、これを読むと電力会社のお仕事だけでなく、日本の電気エネルギー事情が一通り分る。
もちろん、自分に都合の良いことばかり記述をしているのではないか、という見方もあるかもしれない。特に原発や新エネルギーに対する記述などは、それなりのスタンスと読めるかもしれない。誤解なきよう、うそを書いているとか、偏っているというのではない。反原発の言い分を記述していないというだけだ。とはいえこの本の発行者の立場からすればまっとうだろうと思う。私は反原発団体のパンフレットで、原発がない場合のエネルギー対策が書いてあるのを見たことがない。

ともかくこの本一冊で電力会社とはいかなるものかということが一通りは分かる。一般人の持つべき知識レベルとしては必要十分だろう。単なる宣伝やかっこいいところばかりではなく非常にためになったと申し上げる。


「BARレモン・ハート 会計と監査」

出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
日経BP社4-8222-4410-52004年8月23日1000円全二巻

「電力会社のお仕事」と似たような本といえるか、いえないか?
日本公認会計士協会が編集したコミックである。ご存知、ちょっとウンチクが行き過ぎて鼻につく古谷三敏のBARレモンハートに、見知らぬ人物がやってくる。
その客は一人酒を飲んでいるが、やがてしびれをきらしたレモンハートの常連がちょっかいをだし、なぞの人物は公認会計士であることが分かる。そして公認会計士のお仕事を説明するという、お仕事の内容紹介のパンフレット的書物である。
実際にこちらは最初、日本公認会計士協会広報委員会が「公認会計士とは?監査とは?」を一般の方に広報しようとして作成し無料配布した冊子だそうです。その後、あまりの人気に増補して一般書籍として売り出したそうです。
実を言いまして、私が仕事でお世話になった方(女性)のだんなさんが公認会計士をしていて、忙しいときはもう家に帰ってこれないほど大変なのよとお聞きしました。私は公認会計士なんて方にお世話になったことがなく、いったいどんなお仕事をしているのだろうかと思いました。
もちろん公認会計士といえば、中央青山の事件は有名でしたし、ライブドアの事件のときも、公認会計士はちゃんチェックしていなかったなどと話題になりました。でも具体的にどんなことをしているのか、伝票や現金はどこまでチェックしているのか、そんなことは分かりませんでした。
この本を読みますと、漠然とではありますが、公認会計士のお仕事がどんなものか分かります。もっともホントに理解するにはこの本を読む前に、簿記を勉強していないとだめみたいです。

私は高校を出て就職したとき、真剣に考えていませんでした。いや真剣に考えてはいたのですが、その仕事がどんなことをするのかを良く調べはしなかったというのが本当でした。私が社会人になったのは1960年代末のことで、就職先を探すのに月給2万円より2万1000円のほうがいいとか、土曜日が午後半日休みだったらいいという程度の基準で選んだことを覚えています。
当時は休みは日曜日だけで週6日労働なんて普通でした。週休2日が広まったのは1980年以降のことです。
これから社会に出る人たちは、テレビドラマでかっこ良かったからとか、高給そうだからとか、女性にもてそうだから、ということで仕事を選んじゃいけません。その仕事を通じて社会に貢献してほしいなんておばかなことは言いませんが、その仕事が自分にあっているのか、自分が本当にやりたいと思っているのかを良く考えてほしい。そのためには仕事の内容をよく知らないといけません。
こういうパンフレットだけで仕事の内容が分かるとは思えませんが、私が就職したときはそんなものさえ見なかったのですから無謀としか言いようがありません。

ところで、今の時期、会社訪問の学生を良く見かける。東京駅あたりで黒スーツの女子学生、男子学生が大勢いるとからすかと思ってしまう。
しかしそういう人たちの中にいると、ノーネクタイで上着なしの半そでシャツの私などまっとうな社会人でないように見えてしまう。でも訪問先で応対する人事担当者はノーネクタイです。スーツを着ていく必要があるのかどんなものなのでしょうか?
それとも人事担当者は自分はクールビズであっても、訪問する学生は黒服でないと評価が悪いのでしょうか?


KY様からお便りを頂きました(10.08.22)
「電力会社のお仕事」に関して
福島第二原電内の売店でジブリのキャラグッズが販売されていたのを、どこのお節介か知りませんが、「ジブリキャラが原発のマスコットになっているのでは?」という投書やメールをよこし、それにびびったジブリトップが商品の販売を中止したというニュースを思い出しました。
一部では宮崎監督の意向では、と言われていますが記事を読んだ私の感触ではジブリ社長のチキンハートと事なかれ主義が原因に思えました。このパターンは所ジョージのコードレスフォンのCMが「肢体障害者を差別している」とのヤクザの因縁同様のクレームで放映中止になった1件と似ていますね(当時は言葉狩りが嵐のように吹きまくり、筒井康隆が『断筆宣言』をして抗議するくらい酷かった時代でした)。
「うかつだった」というのは単に勇気がないだけの話で、一会社の経営者ならありとあらゆるクレームがつく事態を想定すべきでしょう。ジブリ社長は信念云々以前に、経営者としての自覚に欠けていたのでは?今回下らないクレームに屈して販売を放棄したことより、ジブリ社長の経営手腕の雑さに失望しました。
自社のキャラクターが「原発PRの手先」とレッテル貼りをされるのが怖い、という懸念は多分にイデオロギー的ですが(宮崎監督の自然志向に反するから?)、電気がなければトトロも動かせない、というジレンマには気付いてほしいもので宇賀、ジブリ社長には無理でしょうね。
KY様 毎度ありがとうございます。
ジブリ宮崎はもともと左でしょう。左右はともかく、あの人の映画は好きではありません。観客も絵の美しさにだまされているだけで、ストーリーとか理解しているどころか理解できるものではなさそうです。
家内も動く城とかポニョなど難解でわけがわからんといっています。正直言いまして神隠しも私には意味が分かりません。きっと感受性がないのでしょう 
蛍の墓とかああいったイメージだけの映画が増えると日本人は考えなくなるのではないでしょうか。
考えるな、感じろ、なんて語った人までいるのですから・・

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