成長の限界 10.05.29

著者 ドネラ・メドウズ、デニス・メドウズ、ヨルゲン・ランダース
書名出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
成長の限界ダイヤモンド社なし1972年5月25日950円全一巻
限界を超えてダイヤモンド社4-478-87027-61992年12月3日2200円全一巻
成長の限界
人類の選択
ダイヤモンド社4-478-87105-12005年3月1日2400円全一巻

持続可能性の話をしていたら、話の相手から持続可能性を語るなら「成長の限界」を読まなくてはいけないと言われた。その後すぐに話題が変わって限界の話はそれっきりだった。
分かれた後に、そういえばそんな本を読んだことを思い出した。何年前だろうか・・と帰宅してからネットで調べてみると初版は1972年、なんと40年も前のことであった。その後1990年頃にその続編が出ている。それも私は読んだ記憶がある。更に数年前にその続々編が出たはずだ。それも買った記憶がある。
まだ本はあっただろうか。相次ぐ引っ越しで私は持っていた多くの本を捨ててしまった。残っているだろうかと本棚に入らない本を入れている段ボール箱をひっくり返して探してみたら三冊ともありました。最初の「限界」はだいぶ黄ばんではいましたが、紙はまだぼろぼろというほどにはなっていません。
そしてここ数日通勤電車で「成長の限界」とその続編、続々編を読んだ。「成長の限界」は200ページほどの厚さで片手で吊革、片手で本を持って読むのは楽だったが、二冊目になると370ページとなり片手でもって読んでいると10分もすると疲れてくる。そして三冊目になると本のサイズも大きくなり400ページを超える。もう通勤電車で読める限界を超えている。 

読むほどに昔の記憶がよみがえってきた。初版本を読んだときは夢のない非常に陰気な本だなあと思った。二冊目を読んだ頃には、世界中がフロン問題でわいていて、地球は無限ではないということは実感していたので、永久に成長しない、いやいずれは崩壊するというのを読んでもそうだろうなと思ったことを思い出した。三冊目になると、もう流行に乗っているという感じであまり新奇なものとは思わなかった。

今、環境問題と言うと地球温暖化しか話題にならない。しかし環境問題は温暖化ばかりではない。そもそも地球温暖化を止めようという京都議定書を作った会議は「地球温暖化防止京都会議」であったが、その母体は「気候変動枠組条約」であり温暖化ばかりではなかった。私の先輩は今でも異常気象と言っている。狼少年のゴアさんも温暖化するところと寒冷化するところがあると「不都合な真実」(「都合のよいウソ」と呼ぶ人もいる)という本で書いていたではないか。温暖化は異常気象のホンの一部なのだ。
環境問題は川上から、資源枯渇、エネルギー枯渇、公害発生、廃棄物問題、砂漠化、生物多様性などなど両手では足りないほどのカテゴリーに渡っている。じゃあ、人間の行く手を阻むのは環境問題だけか?といえば、これまたそればかりではないということになります。
個人が一人生きていくだけでも一生の間にさまざまな問題があり、懸命に解決しようとしなければ生きていくことができません。
まあ、解決しようとしまいと最後は天国に行けるのだが・・・

この本では人間社会はどこまで成長できるのか?ということを、資源や栄養、人間が排出する広い意味での廃棄物など多数の変数をとり、将来どのような暮らしや人口になるだろうかと多面的にシミュレーションをした結果をしめしている。というかそれだけに過ぎない。それを見て、どうすべきかと考えるのは読んだ人に任せている。
一見無責任のようだけど、ああだこうだと押しつけがましく言わないのがかえってすがすがしい。
最悪どう考えても自分の代は大丈夫だとやりたい放題の人がいてもおかしくない。我が子の世代をよくしたいと自己犠牲をいとわない人がいても不思議ではない。しかしこの場合は自分だけが努力しても効果はなさそうだ。
いずれにしてもこの本を読むと、持続可能性というのはありえないように思う。

地球温暖化を止めようと顔を真っ赤にして演説をしている大学の先生もいるが、地球温暖化を止めたら人間社会は安泰なのか?といえば、そうではないのは間違いない。
化石燃料はまもなく枯渇する。だから風力や太陽光発電をしなければならない。車は水素エンジンだと語る人もいる。仮にだが、自然エネルギーでまかなえるという時代がきたとして、廃棄物問題はどうなるのだろうか?
実を言って今の日本で最大の環境問題は温暖化でもなければ、エネルギー危機でもなく、廃棄物問題です。廃棄物問題は牛乳パックのリサイクルとスーパーのポリ袋を断ったくらいでは解決しないことは保証する。
廃棄物問題といっても目の前のゴミをどうするかというだけではなく、北極のDDTとかPCB問題をどうしようということまでを含む。北極のPCBを心配するまでもなく、日本中に散らばっているPCB含有機器の処理もできないのが現状だ。可能性がゼロではないだろうが、解決は困難の極みであることは間違いない。

しかしこの本を読み返していて頭にひらめいたものがある。
いえ、解決策ではなくこの本の著者はある意味天から人間界を眺めているように思える。私たちも低レベルの生物の行為を愚かだと思うことも多い。天気の良い日に外から迷い込んできた虫が表に出ようとしてガラス窓にぶつかったりするのをよく見ますよね。ご本人は明るい方に行こうとして何度も何度もガラスにぶつかって痛い思いをしても外に出られません。そんなのを見ていると、ちょっと横にそれてガラス戸の明いている方を飛んで行けば良いのにと思います。でもご本人はそんなことは頭に浮かばずひたすら明るい方を直線的に目指してむなしい努力を重ねるばかりです。
トンボとかチョウならそっとつまんで外に出してあげますが、蠅とかハチですとスリッパなどで叩かれて一生の終わりです。

神様や天使が空から私たちの行為を眺めていたらそんな風に思うのだろうか?
お前たちに授けた貴重な資源を大事に使えば孫子の代まで使えるのに、そんなに無駄使いしてはなくなるのは当然じゃ! このごうつくばりの罰あたりめ、滅んでしまえ・・

やがてノアやロトのような良い行いをしている夫婦が選ばれて、その他大勢は神に滅ぼされてしまうのでしょうか?
しかし待てよ・・神様が存在していたならば、メドウズ以上に先を見通したはずに違いない。それならば「産めよ、増えよ、地に満ちよ」なんては決して言わなかったのではないだろうか?
神は「産めよ、増えない程度に、減らない程度に」といったのではないだろうか?
いや、単に人間が聞き違えたのかもしれない。

本日のまとめ
読後の印象は、やはりペシミズムでありました。


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