「生き残る判断生き残れない行動」 10.07.25

出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
光文社4-334-96209-82009年12月25日2200円全一巻

あなたは飛行機に乗ったときに、前の椅子の背もたれに入っている緊急時のパンフレットをお読みになるだろうか?
ホテルに泊まったら非常口の確認をするだろうか?
車を運転していて長い下りに差し掛かったら、後方の安全を確認してからブレーキのききを確かめるだろうか?
ビルの中で火災報知機が鳴ったら、とりあえず非常口から脱出するだろうか?
ちなみに私はすべてノーである。私のような人間は危機に陥ったら簡単に犠牲になるらしい。

911のテロのとき、大勢の方が亡くなった。確かにテロリストの飛行機がぶつかった階より上であれば助からなかっただろう。しかし飛行機がぶつかった階よりも下にいて、逃げ遅れた人、いやそれどころか逃げようとしなかった人が大勢いたという。そしてそうした人々の多くが亡くなった。
これはマンハッタンではなく丸の内でも起きるかもしれないテロは悪である

14歳のパレスチナ自爆テロリスト
テロを撲滅せよ

OH,NO!

しかしWTCビル内のモルガン・スタンレー社に勤務していた2700人のうち2687人は無事に避難したという。その違いはなんだろうか? なぜその違いがあったのか?
モルガン・スタンレー社の警備主任リック・レスコラはテロや災害に対していかに避難するかを常に考え、社員に対して避難訓練をしていたという。驚くことに訪問客に対しても避難訓練に参加させていたという。そして911に彼はメガホンをとって社員を誘導した。悲しいことに英雄は残った人を救おうとして還らなかったという。

WTCから脱出した人々のインタビューした結果、驚くべきことに多くの人は発生した事態を認識しようとしなかったという。これは現実じゃない夢なんだよと自分に言い聞かせてしまうという。そしてひたすら仕事をしていたらしい。
私たちが日常会社で仕事をしているとき、地震が起きたとき椅子から立ち上がる人が臆病で仕事を続けている人が沈着と思うのが普通だが、案外立ち上がる人が沈着で仕事を続けている人が現実認識を拒否する臆病な人かもしれない。

イギリスの空港で旅客機が地上で衝突して炎上したとき、無事に脱出した老夫婦がいた。彼らは特段肉体的に優れたいたわけではなく、非常口に近かったわけでもない。しかし彼らはほかの乗客たちとはちょっと違って、自分の席についた後に、席から立ち上がり非常口まで歩いていって確かめていたという。

別の飛行機事故で非常口を開けようとしたが、どうしても開かなかった。後で調べたら座席のアームレストを非常口のとってだと思って引っ張っていたという。人間は緊急時には考える能力は非常に低下するという。また騒音や暗いと一層知能も知覚も低下する。だからこそ普段から緊急時に備えて逃げ場や方法を練習しておくことが大事だ。

実は本日、私の住むマンションで避難訓練があった。消防署から消防車も来て、AED自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき)というのを使う訓練、非常階段などの使い方なども練習するという。訓練時は非常ベルがなり、訓練があることを知らなかった私は驚いて家内のところに飛んでいった。家内は落ち着いて、今日は避難訓練があるのよとベランダから庭を見て「あれ!何人しか着てないわね、いけないなあ〜」と平然としている。オイオイ、お前も参加していないじゃないか。
実を言って私は昨夜深酒してレベル5の二日酔いで、とても避難訓練に参加する気にはなれず、家内と一緒に見下ろしていた。
たぶん震度5かアドベンチャーゲームのレベル5の二日酔いだろうと想像してほしい。

敵地深く進入する特殊部隊になるには先天的な才能が必要らしい。はっきりいってランボーのような乱暴な力だけでは生き残りもできないし任務も果たせないようだ。特殊部隊は選抜したエリートだけが参加すればよい。しかし、災害には私たち全員が参加を強制される。ぼくは地震に会いたくないといっても逃げることはできない。テロリストは嫌いだといっても相手はあなたを嫌ってくれない。
私たちは災害にあった時に、適切に対応できるようにならなければならない。それは難しいのだが、やろうとすれば準備はできる。
ときどきエレベーターを使わずに非常階段を下りてみることでも良い。電車を一駅前で降りて一駅分歩いてみても役に立つだろう。
疲れるだけなんていってはいけない。飛行機に乗ったときに非常口まで行って確認した老人に笑われてしまうぞ。
実をいって私は勤務しているビルでときどき非常階段を登り降りしているのだが、5階ほど階段を登り降りしただけで息切れする。非常口を知り、どこに逃げるのかと頭で考えているだけでは役に立たない。

リック・レスコラの霊よ、安らかに眠りたまえ
そして私たちの安全をお守りください。


外資社員様からお便りを頂きました(10.07.26)
佐為さま
本旨と関係ない話で恐縮ですが、避難訓練は大事なのです。
私も出張が多いのですが、ホテルに入ると必ず部屋から非常口までを歩いて、警報がならないならば非常口も開けてみます。
そういう習慣が出来たのは、出張先で大地震にあってからです。
面白いもので、ホテルのレベルと、非常口の整備状況は、結構比例しています。
安いビジネスホテルでは、非常口を開けると物が置いてあったり、面白かったのは従業員同士が隠れてラブシーンということもありました。
熱海の激安ホテルでは、従業員が中国人で、日本語がまともに通じないので北京語で話しました、火災になったらどうなるのか興味深いです。
さすがに高いホテルや、名高いホテルチェインですと、そのようなことは無く、非常口の中は清掃も行き届いていて、通路までの誘導灯や案内版などもしっかりとついています。 某高級ホテルでは、外国人宿泊客向けに、米国仕様の火災警報器もついていました。(白色でフラッシュラウトが点滅)
きっと放送も数カ国語でやるのでしょうね。
私は、ISOの審査は縁遠いですが、会社内部の安全審査はします。
その観点から、ホテルをみると、安全への取り組みは非常口をみると良く判ります。 日ごろ無駄な場所でも、しっかりと整備・清掃しているような場合には、宿泊客としても非常に安心できます。また顧客満足度も、安全への配慮と相関性が高いと感じます。
安いビジネスホテルでも、非常口に物を置かない、防災設備がしっかりと点検、整備されている所は、会社としての意識の高さを感じます。
是非、ご自身も、出張が多いのでしょうから、ホテルにチェックインしたら、非常口まで行ってみて可能ならば開けてみる事をお勧めします。
きっと新たな発見があると思います。
外資社員様・・・尊敬します。
私が斃れ家内が火に包まれても、外資社員様はきっと生還することでしょう。
しかしラブシーンですか・・・ぜひ見たいものです。
JRの駅では最近は日本語のほかに英語、中国語のアナウンスがありますね。ヨドバシカメラでは韓国語もあります。避難訓練も日本語だけでは足りないでしょう。私の勤めているビルでも避難訓練は日本語のほかに英語もあります。ところが今年の訓練の英語はそれはそれはバリバリのジャパングリッシュで私でさえ顔が赤くなりました。もう日本語で逃げろと怒鳴ったほうが早いのではと・・
ともかくこの本を読んだのですから少しは参考に、避難口のチェック、危険なところには近づかないように注意いたします。
といいつつ、一番改めないといけないのは飲みすぎのようです。

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