イソ中 10.10.02

この駄文は私のブログうそ800でのリス様との掛け合いをヒントに書きました。

アル中ってご存知ですよね? 私も自分がアル中かなあと時々思うこともあります。
アル中とは、正しくはアルコール中毒といいます。
お酒だ もっともアル中といってもふた通りありまして、ひとつは急性アルコール中毒といい、大学に入った新人に、イッキ・イッキなんておだてたりすかしたりして一度に大量の酒を飲ませ、その結果倒れるってケースです。もっとも最近の大学では学生を子ども扱いしておりまして、入学時に宗教、左翼テロやねずみ講の勧誘に注意しなさい、覚せい剤・薬物に手を出さないようになどに加えて、お酒の正しい飲み方なんてパンフレットを配ったりしております。
私が酒を飲んだのは高校を出て就職したその日のこと、職場の先輩が安い飲み屋に連れて行って、お酒を飲ませてくれたのが始まりです。あの頃はイッキどころか、アブサンを飲まないと仲間にしないとか脅されて、強烈なにおいと味を我慢して飲んだ記憶があります。
みなさんはアブサンをご存知でありましょうか? 我が愛しき影浦安武のことではありません。もちろんマンガのアブサンは名前と共にお酒のアブサンにかけているのですが・・
アブサンにもアルコール度数が低いものから高いものまであるそうです。私が連れて行かれたところでは、バーテンがアルコール度数が高いことを示すために、カウンターにアブサンをひとたらししてマッチの火で燃え上がるのを客に確認させたものです。火がつくのはアルコールが70%以上とか聞いたことがあります。
おっと、付け加えておきますが、翌年高卒の新入社員が来たときには、私が率先してそいつにアブサンを飲ませたのはいうまでもありません。 

もうひとつのアル中というのは、言わずと知れたアルコール依存症。私もアル中かなあと申しましたのは、こちらのほうであります。もっとも私はみずからアル中になろうとしているのではなく、家内が飲め〜、飲め〜とヤギのような声を出すのでついつい飲んでしまい、気がつくと飲みすぎていたという悪循環によるものです。家内は私をアル中にしたくて仕方がないようです。困ったものです。
アル中とは酒を飲まないと落ちつかない、酒が切れると手が震える、いつも顔が赤いと、肉体的にも精神的にもアルコールなしには生きていけない病いの人で、体つきとか態度を見ればハハーンとわかります。
私が子供時代住んでいた長屋には国鉄に勤めているアル中がいまして、毎晩のように奥さんを殴ったり、大声で怒鳴ったりしていました。その奥さんは何度か我が家に逃げてきたことがあります。当時長屋には戦争に兵隊に行っていた人が何人も住んでいまして、そういった人たちは怖いもの知らずで、そのアル中を押さえつけて警察を呼んだりしました。警察官が来て豚箱に一晩置いてもらうだけでみな満足していました。ISO的には処置だけで是正処置がとられなかったようです。 
昭和30年頃はお酒というものは当時の所得からみて高価なものでしたから、毎晩飲むなんてことは一般庶民にはできませんでした。アル中は精神的な問題だけでなく、そのご家庭にとって経済的な問題でもありました。

アル中になりますと、酒を飲まなくちゃいられない。朝、目が覚めると酒に手が伸びるんです。それは本当です。昔、私の部下に重度のアル中がいました。朝出勤してくるといい香りをしているんですよ。普通昨夜飲みすぎたという場合、アルコールは酸化してアセトアルデヒドになっていますから、いわゆるいやな臭いになっているのですが、朝飲んできた場合はアルコールそのもののいい香りなんです。
酔っ払って仕事をして怪我なんかされたらたまりませんから、芳しい匂いがするときはとにかく帰れと追い返したものです。それは簡単なことではありませんでした。
一般サラリーマンで朝から酒を飲みたいという人はあまりいないでしょう。でも夕方になると酒が飲みたくなるというのは、アル中のはじまりといわれています。
アル中になりますとご自身も肉体的な病気になりますし、精神的にもまっとうな社会生活を送れなくなります。そして家族、職場など回りに迷惑をかけますから治療しなければなりません。アル中は病気なのです。
そうすると私も治療が必要かもしれない・・
私の場合は、家内に酒を勧めないように治療せねば・・・

実はここまでは前振りなのです。私の駄文は前振りが長い、前振りが空振りして本論にかすりもしないということもが多いのです。困ったものです。

さて、イソ中(いそちゅう)という病気があります。お!ご存じないですか? それでは説明申し上げましょう。
今の時代、ISOマネジメントシステムなんてのが流行しております。どんな流行かといいますと、まずISOマネジメントシステム規格というのがありまして、それに会社の仕組みがあっているかどうかを調べて、仕組みが規格にあっていると、めでたくお免状がもらえるという、書道とか舞踊のような家元制度の一種らしいのです。
そういえば、ISOの世界でも「家元」とか「師範」なんて名乗っているお方がいるようです。やはり華道とか詩吟の世界のようであります。 
スポーツや武道なら勝ち負けがはっきりしています。どうせ名乗るなら家元ではなく、チャンピオンとか日本一とか、そこまでいかなくてもせめて県代表とか名乗りたいものです。
囲碁の場合、5段6段といってもたくさんいて、県代表クラスというのがそのひとつ上の階層というか階級になっています。「あの人は県代表クラスなんだ」そんな風に呼ばれてみたい。アッツ、私にとっては雲の上、夢であります。
さて、イソ中とはこのISOのお仕事に就いたためにISOの考えが身についてしまい、会社の常識、社会の常識で考えられなくなってしまうという、恐ろしい病気なのです。
病気と書くより、ビョーキと書いたほうがその恐ろしさがお分かりかと・・

通常の会社員はイソ中にはならないようです。だって考えて御覧なさい。ISO規格なんて会社を良くするとか、効率を上げるためのツールに過ぎません。ISO規格以上のものが現れたらISOを、ほおってそちらに切り替えるのが当然です。ISOに義理立てする人はいません。
ですからイソ中になるのはだいたいがISO事務局なるお仕事をしている人が罹患しやすいようです。ISO規格でいう管理責任者を担当される人はあまり感染しません。これは会社の仕事を大局的に見るバランス感覚が感染するのを防ぐのでしょうか? もっともたまには管理責任者でもこの病魔に倒れる方もいます。「我は品質管理責任者であるぞ!」とか、「環境管理責任者であるぞ!」などと会社を自分が動かしているような誇大妄想になりケースが見られることがあります。
それ以上にISO事務局担当者が一番この病気にかかりやすいようです。一旦これに感染してしまうと、自分が会社の仕組みをつくり動かしているような妄想をいだくようになります。まさに覚せい剤と同様のアブナサです。
もうひとつイソ中の恐ろしいことは、一旦イソ中になると常識といいますか通常の価値観に戻ることが困難になのです。アル中が酒を断つのが困難なのと同様です。一度ISO規格が崇高だという妄想にとりつかれると、もはや企業の中枢である、開発、営業、資材、サービスという基幹業務に復帰することはできません。ISOから離れると手が震え、精神状態が不安定になり、周りの人に危害を加える恐れがあります。みなさん、ISOなんてものと付き合っても、イソ中になってはいけませんよ。

イソ中になると朝起きるとISO規格に手を伸ばし般若心経のように読みふけるようになり、会話をしていても「規格では・・」と口走り、他の人たちをぎょっとさせるのです。こんなイソ中の方は他のイソ中の人と会ったりすると、もう周りの人が理解できない言葉や理屈を嬉々として語りあうという症状がでます。イソ中の人たちは、新興宗教と同じく、サヨク思想と同じく、そのグループ内では価値観を共有して盛り上がるのですが、一歩外に出ると通用しないようです。
「規格に書いてあるからしなくてはならない」なんて言い出すと、周りの人たちは「この人は会社の目的とか定款を知っているのだろうか?」と心配になります。
「審査員が言ったから、そうなんです」なんていうと、同僚は「審査員なんて問題があっても責任を取らないのに、なんでそんな人の話を聞くのか?」と納得いきません。
「水平展開は是正処置で予防処置ではない」なんて大声で叫んだところで、上司は「こいつは使えないな、成果を出さない奴はいらん」とどこかに出してやろうと思うのが関の山
しかし、売り上げにも貢献せず、利益拡大にもなんら寄与しないのに、イソ中が天井天下唯我独尊と思いこむとは恐ろしいことです。ナンマイダブ、ナンマイダブ
浅草寺のお札を貼っておけば効き目があるのでしょうか?

本日のおさらい
化学では同じ分子式でも異性体があるとき、たとえばC3H8Oの場合、CH3CH2CH2OH という構造とCH3CH(OH)CH3があり、後者をイソプロピルアルコールと通常呼ぶ。
ここでいうイソ中とはイソプロピルアルコールの中毒になった人のことではない。

ついでの話
実を言って、我が同志、名古屋鶏様のブログで、イソプロピルアルコールの毒性が強いか弱いかと議論になった。
毒性が強いとか弱いというのは、絶対的なことではなく、比較の問題である。お醤油はどの家庭にもあり危険だなんて思う人はいないだろう。しかし醤油をコップ1杯飲めば病院に行くような事態になります。
塩化メチレンを使っていればリスクを下げるためにトルエンかキシレンに変更しようと考えるだろう。
そして、トルエンやキシレンを使っている場合、より安全なイソプロピルアルコールに代替できないかを検討するでしょうし、現在イソプロピルアルコールを使っているなら、もっと安全なあるいは安いものに切り替えようかと考えるでしょう。まあ、そんな程度の話です。
実をいってそんなことは私の20年前のお仕事でした



ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(10.10.03)
ISO事務局を設けるのは社内失業対策という側面もあるようですから、当人がISO中毒になるのも致し方ないところもあるように思います。
ISOという調味料を実務という食材に数滴たらす程度なら大いにケッコウなのですが、コップ一杯をイッキに飲み干すような運用がアホなのですよね。
「7.5.5では・・・」とか、項番の数字を枕に語り出す人は要注意といったところでしょうか。

たいがぁ様 早速のツッコミありがとうございます。
社内失業対策
おっしゃる意味よく分かります。
更に言えば、審査員として出向した方々もまたそうであろうと思います。
うーん、そんなことを考えるとISO審査とは認証機関にお金をさげ渡す儀式であって、まじめに考えることはないのでしょうか?
おっと、刺客の足音が聞こえる・・・タスケテー


リス様からお便りを頂きました(10.10.04)
おばQさま おはようございます。
アル中、イソ中の話読ませていただきました。
おもしろかったです。
私はまだまだ、勉強中なので、イソ中になれるほど、ISOについてよく分かっていません。
しかし「自分が会社の仕組みをつくり動かしているような妄想をいだくようになります」という言葉にはドキッとしましたね。
ISOは経営だと教えられていたので、そういう気持ちでないといけないと思ってましたから…。

朝からこんなのんびりして、私ってやっぱりヒマ??
いやいや、やっぱりおばブロ中。
見ないと、手が震えて、仕事にならない…。
入院なんかしたら、ますます一日中ネット見てると思います(笑)

ではでは、よい一日を!!
リス

リス様 毎度ありがとうございます。
おばブロ中・・・そりゃ(絶句)もう治癒しません。予後は不良です。 
私は長いこといろいろな仕事、品質保証とか環境管理などをしてきました。今もですが。
どんな仕事をしても、常識が通用しないということはありません。そりゃ人工衛星とか半導体はごみを嫌うとか、鋳物工場は騒音がひどいのが当たり前とか、そういうちょっと普通の人の感覚と異なることはあるかもしれません。
しかしどんな仕事でもルールでも理由があって存在するはずです。その理由を理解できないはずはありません。説明できなければ、そのご担当者はまだ一人前でない可能性が高いです。
肩の力を抜いてISOのルールがどうしてできたのか?と考えれば難しく考えることもなく、理解せずに従うこともなく、常識だよねと思えるのではないでしょうか。
ともかく、リス様、私のウェブとかブログをみるのをやめて、1週間くらいほか方のISOについてのウェブなどを観てください。そうすると違いが分かり、弁証法じゃありませんが、見方、考え方の視野が広がるでしょう。
ぜひお試しください。


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