環境の対象となる法律 10.10.11

これは私のブログに書いたことの総集編というか、完結案というべきか・・・

私は遵法監査とか環境法の説明が商売だから、公害関係、廃棄物やリサイクルに関わる法律、化学物質、フロン、PCBその他いろいろな法律を知っているほうだと自負していた。
しかしそれは過去形になってしまった。ソクラテスではないが、私がいかに無知であるかを自覚してしまったのである。私は己の不勉強を思い知った。
法律をわける方法は多々ある。私法、公法、行政法というわけ方もあるし、実体法、手続き法というわけ方もある。場合によっては国際法なんてのを付け加える場合もある。まあ、国際法というのは条約、お約束であって国内法とはちょっと性格が違うのでおいておく、
実は私が知っているのは環境行政法限定であったのだ。
行政法というのは、例えば公害関係、水濁法、大防法、騒音規制をはじめ、廃棄物処理法、リサイクル関係法律、水道法から下水道法などなど、一般に日常のお仕事やISOのために調べている法律の90%はこれに入る。
私を含めて、環境管理担当者あるいは管理者は環境法を遵守しよう、環境事故が起きないようにしよう、パフォーマンスを改善しようと常に努力している。いや心からそう思わなくても、エネルギー管理指定工場や廃棄物多量排出者には量的な削減義務があるし、あるいは削減義務がなくてもPRTR法などは実態を丸裸に公表されるので、他社よりパフォーマンスが悪ければ外聞が悪く、世間並みに改善しないとならないのが渡世の義理。だから目の前ににんじんを見せられお尻は鞭打たれるような状況で、とにかく努力しなければならないし、実行しているのである。

しかし法律を守ろうと努力しているのだが、関心の対象は行政法限定で、その先の対応策を考えていないように思う。いや、私自身の経験というか、してきたことがそうであったから・・
前述したように事故や違反をしないようにがんばっているのだが、万が一近隣から苦情があった場合とか、事故を起こした時の対応とか、もつれて裁判になった場合の処置対応などをあまり勉強していないのではないだろうか。
../2009/meeting.gif リスクコミュニケーションをしていますとか、近隣と定期的に協議する場を設けていますよとか、情報公開していますとおっしゃる方はいるだろう。しかしそういう、ある意味軽いものではなく、苦情が公害審査会に持ち込まれた場合とか、裁判になった場合とか、そういう事態の対応までは、私自身は考えていなかった。
まず自分自身が警察の事情聴取を受けるなんて思いもよらないだろう。・・私が現実にそういう目にあったことはない。
だが、廃棄物の不法投棄があれば、排出者責任の有無を調査するのは当たり前であり、立ち入り調査とか事情聴取など普通に行われる時代になった。

話は大きく変わる。
昔、日本軍は捕虜になるな、捕虜になるなら自決せよ、程度しか兵士を教育していなかった。だけど生きて捕虜になった兵士も士官も大勢いたわけだ。捕虜になった時の心構えも対応策も教えていないのだから、もうアノミー状態
国際法では官姓名と階級を名乗ればよいところ、聞かれれば軍の機密までも何でもかんでも話してしまったという。

話を戻す、
公害紛争について普段から対処方法を学び対応を考えておかなければ、近隣住民と問題が起きた場合とか、あるいは自分自身が逮捕された場合は、どうしたらいいかわからない。だから余計なことを口走って墓穴を掘るようになるのではないだろうか。
別にうそをつくとか、会社側に有利な対応をせよとは言わないが、己が属する組織に忠実であり、また己の仕事を正当に説明することは権利でもあり、義務でもある。

ISOなんてやると緊急事態の対応手順なんてどこの会社でも定めているが、油流出とか排水処理施設の故障などにとどまっているようだ。そういったことだけでなく、警察が突然来た場合の対応とか、書類の提出を求められた場合の対応手順の整備と教育などが必要不可欠だろう。
そしてまた、住民がプラカードを持って工場の正門に詰め掛けた時の対応とか、告訴されたときの連絡ルートだって決めておかなくてはならない。
ガードマン会社の方にお聞きしたことがあるが、右翼とかサヨクの街宣車が来た場合の対応はマニュアルになっているそうだ。それによって教育されたガードマンはあわてることなく、その手順に従い対応できるというものだ。

私はそういう場合に備えて、公害紛争処理法、民法の瑕疵担保責任、仲裁法などを勉強しなければならないと思い知ったのである。更には内部的な責任問題になった場合に備えて会社法なども一応読んでおいたほうが良いかもしれない。あるいは自分の身を守るために公益通報者保護法も必要かもしれない。
自分の身を守るためというと聞こえが悪いが、社会正義を守るためでもある。
しかし、私の知る限り、そういう法律を該当法規一覧表に入れている会社事業所は見たことがない。緊急事態として、工場に操業停止を求めるデモ隊が押しかけることを想定している会社も見たことがない。
そんな法律まで含めたらきりも限りもないよとおっしゃるかもしれない。でも環境管理に縁のない法律をたくさん一覧表に記載しているかもしれませんよ。私が思いますに、まず環境基本法なんてのは企業において知る必要なないでしょう。環境基準はどうするの?といわれるかもしれないが、そんなもの知らなくても困りません。排出基準を知っていれば十分です。オゾン層保護法や環境教育推進法なども勉強する必要はなさそうです。
東京のテナントビルに所在する商社がISO審査を受けた時、瀬戸内法まで該当法規制リストに記載している事例がありました。はたして、該当法規制の意味を理解していたのでしょうか?
ISOはマネジメントシステムのツールではなく、全員参加のゲームなのでしょうか?

具体的にはどういうことだろうか?
たとえば事故が起きたり、あるいは同僚の誰かが警察に事情聴取を受けるような事態になったと想定しよう。
一般社員が知っておくべきこと、やるべきことはたくさんある。
記録を隠せとか改ざんしろということではない。
その真逆である。
つまり、シュレッダーを使用禁止にする、当面はOA用紙の廃却やリサイクルを中止しすべて保存することとする、サーバーのバックアップをとり第三者に保管してもらう、全員にメールの削除を禁止する、そのほかやるべきことはたくさんあるだろう。
また口裏を合わすような行為を禁止するのはもちろん、そのように疑われる行為をしないことなど、常識で考えられることはたくさんある。
要するに、当社は隠すとか改ざんするという悪意はありません、公明正大ですよというメッセージをかもし出すことが必要だ、
ともかく、平常時に緊急事態の対応策を決めておき、万が一の時には粛々と行動できることが重要です。
それは単なる常識ではないだろうと思います。
私法関係、ADRでの取り扱い、捜査や起訴に関する法規制その他を理解して、はじめて実行できることではないでしょうか?
そう思いました。



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