審査員の力量 その3 10.10.30

審査員の力量を語るのはもう何度目になるだろうか? 同じことを何度も語らねばならないということは、実際に問題があり、そしていまだに解決していないということである。
審査員の力量とはなにか?なんて考えることはない。ISO19011というありがたい経文にちゃんと書き表してある。三蔵法師ならぬISO-TC委員たちが遠い天竺まで行って手に入れてきたのだ。 
そこに書いてあることを実現すればよいだけなのだが、実現することは難しいというより、不可能に近いのだろうか? まさか三蔵法師や孫悟空たちを苦しめるような、妖怪や盗人たちがいるとはおもえないのだが・・

現在、私は審査の対応を卒業して、審査を見物する立場になった。それが出世なのか格下げなのか、どちらなのだろうか? いやもう関係者ならぬ、無関係者、部外者になってしまったのだろう。
そんな立場になっても初めの頃は、やはり審査員がおかしなことを語ると「ちょっと発言していいですか?」なんて、おせっかいというかちょっかいを出したものだ。しかし今では己の立場をわきまえて、だまって聞いていることができるようになった。進歩したのだろうか? 単に歳をとったということだろうか? それはともかく、審査で自分が応対するのと違い、審査の応答を傍で聞いていると、審査員の規格の理解の間違いに気がつきやすい。面白いといっちゃ面白いけど、組織は審査費用として大金を払っているわけだから、それに見合ったサービスを提供されなくては、異議申し立てではなく、品質が悪いと苦情を言いたくなるのは間違いない。
審査はサービスである。認証機関はサービス業である。別に私がそういわなくても、帝国バンクの分類では認証機関は「その他サービス業」というカテゴリーになっている。ちなみにプロレスもその他サービス業だったような気がする。というと審査員はプロレスラーなのだろうか? いやレフリーという可能性もある。でもレスラーよりレフリーが多いプロレスってのはみたことがない。

しかし隠退した私が審査を見てると、進歩がないと感じることが多い。
まず環境側面の審査に問題がある。有益な環境側面とか、数値化して計算しなくてはいけないと語る審査員は、今でも掃いて捨てるほどいる。
本当にほうきで掃いてゴミ箱に捨てたいものだ。
今ではサイクロン式の掃除機が全盛であるが、審査員も吸い込んでしまえるのだろうか?
気がかりである。

ISO14001の第三者認証が始まって15年も経っているのに、継続的改善ができないなら、もう救いがないのかもしれない。いっそのこと、次回のISO14001規格改訂で、環境側面は点数で計算すること、有益な側面が必須であることとしたらいいじゃないか!
そうすれば審査員たちは、間違いではなく、堂々と間違いを・・いや堂々と正しい規格の理解を語ることができるだろう。
ついでに環境目的は環境方針と整合する環境の到達点ではなく、3年後の目標と定義を変えることも良いかもしれない。もちろん環境目標は1年後の目標である。環境目的は著しい環境側面から選ぶことを条件としたら良いだろう。
しかしまあ、そんなことを言い出したら日本のISO-TC委員は物笑いになるだろうし、日本の審査員の恥をさらすだけだから言っちゃいけないことは言うまでもない。

話がそれるばかりだ。なんとか戻さねば・・・
今でも「環境側面評価」なんてことを語っている審査員がいます。環境側面評価という言葉を私は知らない。一体全体、ISO規格のどこにそんな言葉があるのだろうか? しかし、現実の審査では何のためらいも、説明も、形容もなく、審査員があたり前のこととして語り、企業のほうも疑問も持たずに応対している。ISO規格しか知らない私にはそんな審査には対応できない。きっとその審査はISO14001規格ではなく、USO14001規格が審査基準になっているに違いない。
しかし初回審査ならともかく、認証して10年以上経過した組織に行って、環境側面の特定、決定方法を審査する意味があるのかどうか?
 あなたはどう思います?
組織の活動や設備は常に変わるでしょう。法規制も時代とともに変わっているでしょう。ですから組織は環境側面を常に見直さなければならない。(ISO14001 5.3.1最終段落)それは正しい。
だから、環境側面が最新化されているかを審査でチェックしなければならないことは言うまでもない。しかし、環境側面を特定する方法とか、決定する方法を毎年修正しなければならないという要求事項はない。必要なら方法手順を見直せばよく、特段問題がなければ見直す必要はない。当然、毎回の審査で、環境側面を特定する方法や、著しい環境側面を決定する方法をチェックする必要はなさそうです。
しかし、初回審査でなくても、毎年のサーベイランスで環境側面を特定する方法や、著しい環境側面を決定する方法をチェックする審査員は大勢いる。いや、あなたの会社の毎年の審査プログラムを見てもわかりますが、毎年の初日に環境側面の審査があるはずで、その中では、毎年、毎年、環境側面の特定方法、著しい環境側面の決定方法をチェックしているのではないですか?
面白いことに、環境側面の特定方法、著しい環境側面の決定方法を、ためつすがめつチェックする審査員は。その結果特定された環境側面や、決定された著しい環境側面が適切であるか、間違いないか、漏れていないかはあまりチェックしない。というかほとんど見もしない。
既に廃止されたが、以前のJABRE300:2006ではIAFガイダンスを引用しており、その中では、「環境側面及びそれに伴う影響のうちどれが著しいかを特定するための基準を設定し、これを行うための手順を開発するのは、組織の仕事である。」と書いてあった。
環境側面の特定や著しい環境側面を決定する手順を、根掘り葉掘り取り調べる審査員はこの文章を見たことがないに違いない。
ともあれ書面で一生懸命環境側面関係を審査する審査員は現場での審査ができないからではないのだろうか?
実力のある審査員なら、現場を見て、組織が抽出した環境側面がまっとうであるかどうか、把握している法規制が適切であるかを判断するはずだ。そんなことできないなんていっちゃいけない。私なんて法規制一覧表も、環境側面リストなんて見もせずに、いつも監査をしてますけど、困りませんね。
だいたい、相手が提出した環境側面や法規制を眺めてOK、NGが言えるはずがない。相手が提出したリストを見るだけなら、それは数学的不定でしかありません。自分の目で現場を見て、ああ、ここに事故の危険性があるぞ、おっと、規制を受ける○○法を忘れているぞと気づかなければなりません。
だいたい、書面を見ただけでその会社がリスクを把握しているか、法規制を認識しているかがわかるはずがない。
すくなくとも私は分からない。
やはり現場を歩き回って、何があるのかを見てからではなくてはね
もっとも現場を見た歩いてからでは、わざわざ環境側面評価表なるものを見る必要がない。ましてやそれを著しいとした経過などは無用というもの。
もちろん環境の審査員にだって、専門家でない人も多い。そんな人は現場で何を見てよいのかわからない、現場で見ても何も気がつかない。変なことを言うと、会社に人たちに笑われる。そんな危険(?)がいっぱいの現場を避けて、書類を相手の審査ならドップリと自分の世界に浸っていることができるからではないのだろうか?
なにしろ、審査員研修で、コンプレッサのどこからドレインがでるのか、毒物の表示がどこになくてはならないかを習わなくても、環境側面を特定したり、決定したりすることについては十分に勉強しておられるでしょうから、環境側面の特定方法の専門家であることは間違いない。
とはいえ、環境側面の特定方法の専門家よりも、著しい環境側面が適正か否かを判断できる人のほうが好ましいのは言うまでもない。

そういえば二月ほど前のこと、知り合いの会社でISO14001の初回審査を見物していた。一人の審査員(環境は審査員補)が品質の審査員を環境の審査員に拡大するために参加していた。
品質と環境のいずれかの審査員あるいは主任審査員があると、他の審査員や主任審査員になるのはまっすぐに昇格するより大幅に簡略化されている。これを拡大と呼ぶ。
リーダーはその方の審査員昇格のために、大幅に発言を任せていたようである。だがそいつが語ることはどうも変!
まず「環境方針に規格の文言が抜けている」ときた。
それで驚くようじゃ、この世界生きていけません。ああ、こいつもダメ審査員だなと心で思っても、じっとこらえるしかない。
「それは規格のどこにありますか」なんて言うものなら4.2を指し示し「ここです」なんて鬼の首でもとったような顔をするに違いない。寺田さんを持ち出すべきか、怒鳴りつけるべきか、認証機関に電話すべきか、種々選択肢を考えて、あいてが一番嫌いな方法を選択すべきであろう。
環境目的は著しい環境側面から選ぶのだそうだ。これも定番だ。
解釈が変というより、独自の解釈、妄想がどんどん発せられる。まるで規格解釈の間違いを集めた辞典のように、とんでもない発言を次から次へと・・
リーダー審査員も止めなかったのでそのリーダーのレベルもその程度かと・・

さすがに私も口を挟んだのだが
「あなたはISO規格を理解していません。私がいうのが正しいです。」といわれて、もう相手をする気がなくなった。
宮本武蔵がそのへんのチンピラを相手にはしないだろう。
とはいえ、いつかかたきをとってやろうと思う。いや、かたきをとるのではなく、その審査員様に、格違い、手合い違いであったことをはっきりと認識させてやろうと思う。
なにせ、私は・・・(ry


ぶらっくたいがざ様からお便りを頂きました(10.10.30)
「あなたはISO規格を理解していません。私がいうのが正しいです。」といわれて、もう相手をする気がなくなった。

も、もったいない。ここでキメ台詞の登場じゃないですか。
「ええい、静まれぃ静まれぃ! この紋所が目に入らぬか!!」
と、ここでおばQ師匠の印籠、もとい審査員証のナンバーが見えるように出すのです。

../mito.gifぶらっくたいがぁ様 毎度ありがとうございます。
水戸黄門は相手が徳川の権威を認識している場合においてのみ効力を有します。
私を水戸黄門と知らないアホでは・・・


名古屋鶏様からお便りを頂きました(10.10.31)
審査員の力量 惨
ISOの世界では「王様は裸だ」と指摘すると、「ははは、これは馬鹿には見えないISO規格の服なのだよ!」と自慢されてしまうようで。
しかも、王様に忠誠を誓うために「同じ素材」の服を強要される始末。・・・そんなんで風邪を引かされたんじゃぁたまりませんわ。

名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
三ではなく惨ですか・・・まさにISO業界の状況かと・・
ISOの裸の王様は自分が裸であることを認識しているのでしょうか?
規格ではなんて審査員閣下が語っているのを見ていると、ぜんぜん認識していないようです。
己の命が尽きる直前まで運命を知らないほうが幸せなんでしょうねえ〜 遠い目


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