エコアクション21とISO14001 その1 10.11.18

エコアクション21とIS014001の比較検討をした人は大勢いる。エコアクションはISOの簡易版だという人もいるし、環境パフォーマンス向上を要求しているエコアクションのほうが厳しいと語る人もいる。
しかし認証制度というのは審査基準である規格要求だけで成り立っていない。比較の切り口をどう考えるかということも多様であろう。ここでは規格、スキーム(制度)、運用の三点をとりあげる。
規格とはもちろんIS014001とエコアクション21ガイドラインである。この二つを比較して、内部監査がないとか、ごみと電気の削減が義務であるとか義務でないとか議論する方は前述のように多い。
スキームとは認証する仕組みである。本日はスキームについて語る。

認証スキームとはなんぞやといえば、認証機関、認証機関の客観性公正性、力量評価、審査員の認定、更新、審査の公平性、認証した企業の情報公開などの仕組みを意味する。
比較しようとしてすぐに気がついた、そして驚いたことがある。エコアクション21は認証企業の環境報告書を公表することを義務付けているので情報公開が進んでいると思っている方は多いだろう。
ところが、エコアクションのスキームは情報公開していないどころか闇の中である。客観性公平性を論じる以前にまったく内容が分からない。
もちろんエコアクション21中央事務局なんていうたいそうなウェブサイトには関連規定類がアップされている。

しかし問題はその中身だ。
たとえば審査員については、IS014001では審査員登録制度があり、審査員登録機関があり、研修機関の承認ルールがあり、審査員の要件から登録、そして異議申し立て、更新においてはCPDとして何を認め何を認めないと、要件が漏れなく具体的に定めてある。
他方、エコアクション21はそういったスキームがないといっても良いような状態である。そもそも審査員の認定条件たるや、いったい厳しいのか大甘なのか‥・私には大甘のように思える。

エコアクション21認証・登録制度実施要領(h22.6.1版)
エコアクション21審査人試験を受験する者は、以下の1)及び2)のいずれをも満たすことが必要です。
1)環境カウンセラー(事業者部門)であること。又は、技術士(環境、衛生工学、上下水道、経営工学、化学、建設及び総合技術監理部門のいずれか)、公害防止主任管理者(公害防止管理者大気一種及び水質一種の資格をともに有する者を含む)、公害防止管理者大気三種及び水質三種の資格をともに有する者、環境計量士(濃度及び騒音・振動の資格をともに有する者)、エネルギー管理士のいずれかの資格を有すること。
又は、企業等の環境対策及び公害防止に関する部門に所属した経歴、若しくは事業者に対する環境保全のための具体的な取組、計画づくり等に対する指導、助言を行った実績が概ね5年以上であること。
2)環境マネジメントシステム審査員(審査員補を除く)であること。
又は、地域版EMSの主任審査員、環境プランナーERのいずれかの資格を有し、かつ10件以上の審査経験を有すること。
又は、企業等の環境管理に関する部門に所属した経歴、若しくは事業者に対する環境経営システム(環境マネジメントシステム)の構築、運用等に対する指導、助言を行った実績が概ね5年以上であること。

1)を見ると、難しそうな国家資格が並んでいるが、要するに企業で5年間環境管理業務をしていればよいということである。
2)もむずかしそうであるが、これもまた企業で5年間環境管理業務をしていればよいということである。
実際の運用基準は厳しいなんていっちゃいやよ 
文書化されていなければ無意味というのがこの世界のお約束
ところで、このエコアクションのルールを作った方は法律などに詳しいのだろうか? 「又は」とか「若しくは」などの使い方が・・略

他方、IS014001審査員のほうはどうか?
環境マネジメントシステム審査員の資格基準(2010/03/31)
5.環境審査員の資格基準
5.1審査員補
審査員補は、次の条件をすべて満たすこと。
1)学校教育法に定める高等学校卒業以上の学歴を有すること。また、次の者は相当以上の学歴を有する者とする。
@高等専門学校卒業者、文部科学大臣の指定を受けた3年制以上の高等課程専修学校修了者、文部科学省令に基づく高等学校卒業程度認定試験合格者、海外の中等教育以上の修了者。
A高等学校以上に相当する組織内教育施設の修了者。
2)技術的、管理的又は専門的立場での業務経験を5年以上有すること。この業務経験は、判断を下し、問題を解決し、他の管理者又は専門家、同僚、顧客及び/又はその他の利害関係者と意思の疎通を図るといった内容のものであること。
ただし、経験年数は、大学・短大・高等専門学校以上の学歴を有するものにおいては4年以上とする。
3)前項の業務経験のうち、2年以上はJIS Q 19011(IS019011)7.3.4項の環境マネジメント分野の知識及び技能に係る業務経験であること。この経験の要求範囲は別途定める。また、経験は申諸日をさかのぼる10年以内の経験であること。
4)業務上の関係が1年以上ある所属組織の責任者等から、企業等組織の.JIS Q 14001 (IS014001)への適合性監査を行う環境審査員に要求されるJIS Q 190H(IS019011)7.2項に示す個人的特質を有する者として推薦されること。
5)CEARが承認したJIS Q 14001(IS014001)フォーマルトレーニングコース(以下「フォーマルトレーニングコース」という。)を申請日前5年以内に合格修了していること。
ただし、5年以上経過した場合は、CEAR実施の筆記試験を改めて受験し合格すること。なお、この筆記試験は1回のみ受験可とし、不合格となった場合は、1年以内の再受験を1回のみ認めるものとする。
6)CEARが実施する環境マネジメントシステム審査員力量試験の筆記試験に合格していること。
7)CEARの環境審査員倫理行動規範を順守すること。

以下、審査員及び主任審査員の要件が並ぶが省略

まさに手順書の鑑(かがみ)である。手順書とはこうあらねばならない。審査員の力量を比較する前に、審査員の要件を定めた基準のレベルが違うことに気がつくだろう。月とすっぽんという言葉があるが、まさにそのようだ。ISO審査員の要件が安全基準だけでなく、より高い操作性、乗り心地を考えて作った車とすれば、エコアクションは動けばいいという車のレベルに思える。
いやエコアクションの実際の運用は厳しいんだとおっしやるかもしれない。もうしわけないが、ここではエコアクションは運用を論じてはいない。スキームについて論じれば、その明文化されたレベルの差はいかんともしがたい。双方のスキームの質、いやレベルは大きく異なることは間違いない。
ISO審査員の資格要件は公明正大に基準が決めてあり、更新時の専門能力の継続的開発(CPD)や異議申し立てについての取扱いについても定めてある。CEARの基準では CPDについて、受動的活動、主体的活動、プロジェクト活動などが定義され、それぞれの要件も定められている。
他方、エコアクションの手順には明文で記述されていないことは事実である。
審査経験もエコアクションでは10回とあり、回数だけはISOより多いが、その審査が初回なのか更新なのか維持なのかは明記されていない。ということはなんでも良いということだろう。
ISO 認証件数が飽和してきて初回審査が減り、主任審査員への昇格要件を満たすことが困難となったために、その対応として規定を変えたといういきさつがあるが、それをみてもわかるようにISO審査員のほうが基準が厳密かつ運用のそれを遵守していることは明白だ。エコアクションとIS014001の審査員の登録制度は比較できるレベルではない。

もちろん基準やルールだけから現実の審査員の力量がISOの方が高いといえるわけではないが、前述したように認証スキームとしては格が違うことがわかる。

本日の予想されるご質問
なぜその1なのかって?
IS014001とエコアクション21の認証の比較検討って結構面白そうだ。今後続きを書きたい。



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