寿命の話 10.12.19

だいぶ前の本であるが、「ゾウの時間 ネズミの時間」(1992、本川達雄)というものがある。この本によるとどんな哺乳類でも、心臓が15億回動くと寿命がくるらしい。
15億回というととんでもない回数のように思えるが実はそんなでもない。
ハツカネズミなどは、脈拍がものすごく速く1分間に600回から 700回つまりドキンの間隔が0.1秒、普通のネズミは毎分300回でドキンの間隔が0.2秒、ネコは毎分200回でドキンの間隔が0.3秒、そしてゾウは毎分20回でドキンの間隔は3秒という。それぞれの心臓の脈拍間隔の時間に15億回かけると

動物の種類寿命
ハツカネズミ4.7年
ネズミ9年
ネコ14年
ゾウ142年
私の友人には、たぬきとかモグラとかバイキンなどがいるのだが、その本にはそういった動物(ばけもの?)が何歳まで生きるのかは書いてなかった。魑魅魍魎(ちみもうりょう)は死なないのかもしれない。

この計算で行くと人の寿命は26年(26歳)なんだそうだ。そしてまた実際にはゾウは50年くらいで歯が磨り減って食べることができずに死んでしまうそうです。だから15億回ぴったりでもないようだ。しかし人間は病気になれば医療が受けられるし、体の機能が劣化すれば、めがね、補聴器、車椅子といろいろな裏技を使って生きています。ゾウも入れ歯をすればこの数字くらい生きるのかもしれません。
もっともその後いろいろな方から「寿命はそんなに簡単には決まらないよ」という意見が出されています。まあ、それはそれとして・・
とそんなことを思い返していると、私の頭には妄想がモクモクと湧き上がってくるのです。

自動車のタイヤは車の寿命の間に何回転くらいするものでしょうか?
1億回転? 10億回転? まさか100万回転ってことはないよね?
タイヤの大きさは軽自動車から大型ダンプまで様々ですが、ここでは1.5リットルクラスの普通のものを想定します。タイヤの外周の直径はおおよそ60センチくらいでしょう。
そうしますと、廃車になるまで10万キロ走るとすると、
(100,000km×1、000)÷(0.6m×3.14)=53、000、000回転
えっつ! たったの5000万回です。そうです、それほどの数ではありません。
昔のこと、私は生産現場におりました。工作機械の主軸のベアリングはしょっちゅう寿命がきました。ベアリングを毎日交換していたような気がします。
本当はそれほど交換していたわけではありませんよ。
そのとき仲間と次のような話をした記憶があります。
「工作機械のベアリングは質が悪いのかな? 車のベアリングなんてめったに交換しないよね」
相手は几帳面な人だったので、すぐさま電卓を叩きました。
「この機械の主軸は毎分1万回転で回転している。だから1日7時間としても毎日400万回回転している。それに対して車は毎日30キロ走ったとして、たった16,000回転しか回転していない。だから工作機械のほうが250倍も回転している勘定になる。ベアリングがへたるのは当然だ。」
なるほど、それほど回転数が違うなら交換頻度が違うのは納得です。
もっともベアリングの場合は回転数といっても、重負荷のときと軽負荷のときではもちろん違い、その計算式もあります。

ベアリングの寿命が回転数だけでは決まらないように、寿命は心臓の拍動だけでは決まらないでしょう。日本人の寿命がドンドン伸びたというのは、昔と比べてあまり重労働をしなくなったからだと思います。私が子供の頃はつらく厳しい農作業によって腰が曲がり、歳をとると地面をなめるようになる人が多かった。今ではそんな人を見かけません。
ちょっと違うかもしれませんが、スポーツ選手が長生きするかといえば、一般人と変わらないし、場合によっては運動のしすぎで障害を起こすこともあります。
もっとも人間の体力にはルーの法則というものがあって、使わないほうがよいというわけではない。ちなみにルーの法則とは「筋肉は適度に使うと発達し、使わなければ萎縮し、過度に使えば障害を起こす」と半世紀前に中学校で習いました。
つまりなにごとも中庸が大切のようです。

とここまできて、またまた私の頭には妄想がモクモクと湧き上がってきました。
それはISO第三者認証制度にも寿命があるのだろうか?ということです。
この場合、なにをもってカウントするのだろうかと思いめぐらせば、思いつくのはひとつしかない。それは審査というイベントでしょう。
昔、1990年代初めには審査は半年ごとというのが一般的でしたが、1994年頃から1年に1回が多くなったように思います。簡単に年に1回と仮定します。そうしますとある時点での審査回数の総和は、それ以前の年毎の認証件数の累積値に等しくなります。
日本のISO9001認証件数は次のように推移してきました。
../9001gurafu.gif

そうしますと、2010年末までのISO9001の審査回数の総和は1,550,000回となります。
ちなみにISO14001の審査回数の総和は630,000回です。
ISO9001のグラフを見ると、青年期を過ぎ、壮年期を過ぎ、現時点は入れ歯、老眼鏡、補聴器、杖を使って生きているように見えます。そのうちベッドに寝たきりになりチューブをつけられるようになるのではないでしょうか?
そんなことから推定するとISO9001の寿命は審査回数200万回というところなのでしょうか?
さらに想像をたくましくすると、ISO14001の寿命はまだまだであり、現状の認証件数ですと2025年くらいまでは安泰なのでしょうか?
いや、本日の駄文には一切責任を持ちません。 

本日の裏話
私の文章をいつも読んでいる人は、わかっちゃっているでしょうけど・・・
ネズミとゾウのお話は、単なるまくらです。実は、後半つまりISOの認証制度の寿命を考えていてこの駄文を思いつきました。だからそれ以外は単なる文字稼ぎ、埋め草です。



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