「明治国家と日清戦争」 

12.06.16
著者出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
白井 久也社会評論社4-7845-0543-11997/1/152500円全一巻

日露戦争ものをだいぶ読んだので、今度はさかのぼって日清戦争ものを読もうと思った。そして例によって図書館に行き、日清戦争と題したものを何冊もまとめて借りて読んでいる。その中に、これがあったというわけだ。

読んで実に面白い、うきうきして楽しくなってしまうと言ったらよいのだろうか?
サヨクの頭脳というか思考回路が手に取るようにわかる面白い本だ。
まずこの人にとってアジアとは中国と韓国だけを意味するようだ。さすがに北朝鮮の主張をアジアの主張とするには気が引けたようだ。そんなことに気を使わず大いに北朝鮮の主張を盛り込んで日本が悪いことを羅列してほしかった。
橋竜といえば愛国者からみて唾棄すべき売国奴、媚中主義者であるが、この白井先生から見ると橋竜は右派も右派、唾棄すべき反動主義者なのである。白井先生の座標は世間一般とはかなりずれているような気がする。
韓国兵士がベトナムへ
韓国はベトナム戦争に派兵しており、
さんざん人殺しも混血児生産もした
他方、中国人が語ることはすべて正しく、尖閣列島は中国固有の領土であり、日本人は速やかにお返ししなければならない。残念ながら、そのとき尖閣列島に熨斗(のし)をつけるかどうかについては言及していない。
平和憲法は守るべき聖典であり、アメリカの軍事同盟などもってのほか、恥じるべき行いである。
もっとも韓国がアメリカとつるんでベトナム戦争に介入して悪事を働いたことには言及していない。きっと白井先生は韓国がベトナム戦争に参戦したことはご存じないのであろう。
そしてもっと重大なことだが、中華人民共和国がソ連と戦火を交えたことも、ベトナムに侵攻したことも記憶にないのだろう。
もちろん西域で核実験を多々行い、少数民族が放射能で多くの死者を出しているなんて知る由もないだろう。更に、チベットで大殺戮を行っているなんて、聞いたこともないに違いない。
要するに、白井先生は善意の人であり、それは法的には無知を意味する。

南京事件は歴史的事実であり、ありえないなどと語る者は反動勢力であり抹殺すべきだと語る。百人切りは日本刀の優秀さを示すもので、日本人がいかに悪逆非道かを立証する証拠である。
多くの日本人を見殺しにした村山翁こそ理想の日本人であり、姜尚中は同志である。いやはや、考えがここまで逝ってしまうと救いがたいとかではなく、さわやかすぎる。
このようにこの本は首尾一貫、趣旨が一貫していてさわやかである。もっともそのさわやかさが正しいとは限らないし、大いに間違っているような気がするのは私だけであろう。 

そして日本人の存在が悪であることは、太平洋戦争だけでなく、日露戦争、日清戦争もしかりであり、もう救いがたいことであると力説する。さすが白井先生である。
感動を通り過ぎてあきれる・・・いや感動を通り越して、失笑するのではないだろうか?
まともな人なら最後まで読み通すことができず、本を放り出すことだろう。
私?
実を言って自虐史観が発酵しているところは読み飛ばした。

最近、「坂の上の雲」がもてはやされているが、私は司馬史観が嫌いだ。司馬は明治という国家は良かったが、昭和の日本は悪かったという主張である。私は明治も昭和も良くも悪くもない。その時代の人たちは一生懸命に生きたことは間違いないことで、それを後世の人が後知恵で批評することは失礼であるだけでなく、己自身が後世から批評されることを是とすることだろう。私が考えることは過去を良く調べ、そこからこれからの生き方を学んでいかなければならないというだけである。
おっと、白井先生は司馬史観とも、もちろん違う。白井先生は、明治という国家も悪であったという。じゃあ正義の国家はなかったのか? ご安心あれ、ちゃんと共産中国という正義の国があるじゃありませんか。
この御仁、ソ連崩壊の時は、それこそ足元が崩れたように驚いたと思う。天安門もしかり、
白井先生がまだご存命かどうかはインターネットではわからなかった。もしご存命ならば、中国崩壊をぜひ見てほしいと思う。もちろん私もみたいけど、
そのとき白井先生は何を語るのだろうか?

まとめ
一言でいえば、自虐史観満載のサヨクさんの妄想である。
しかし東西両陣営の冷戦時代ならともかく、これほど世界がアンステイブルで昔の戦争のように敵がはっきりしていて戦線が明確な時代ではなく、経済戦争の敵もわからずゲリラうようよという時代に、このようなお花畑で生きてきたということは幸運そのものだろう。あるいは白井先生があまり有名でないから叩かれないですんだのだろうか?
ながらくアサヒ新聞で働いていたという。ヤッパリと言ってしまえばそれまでか・・・

この本を読んでからアマゾンで調べた。書評が一人もいない(2012.06.15現在)。そして古本も値段もつかないほどだ。要するに人気がないのだろう。白井先生にとっては残念かもしれないが、日本のために良いことだ。

一言にまとめると
こんな日本人になってはいけない。あるいは白井先生は日本人ではないのかもしれない。


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