区分 | 拠点数 | 毎年の 実施数 | 参加人員 (人) | 事前検討 (日) | 現地監査 (日) | 移動時間 (日) | 事後まとめ (日) | 拠点当た り工数 (人日) | 小計 (人日) |
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社 内 | 工場 | 6拠点/2年 | 3 | 7 | 4 | 3 | 1 | 1.5 | 66.5 | 199.5 |
支社 | 10拠点/2年 | 5 | 2 | 2 | 1 | 1 | 0.5 | 9 | 45 | |
関 連 会 社 | 製造業 | 10拠点/2年 | 5 | 2 | 3 | 2 | 1 | 1 | 14 | 70 |
非製造業 | 110拠点/2年 | 55 | 2 | 2 | 0.5 | 1 | 0.5 | 8 | 440 |
あまり大きな声では言えないが、私が現役の時はこの倍以上の監査を仕切っていた。それは簡単な仕事ではなかった。
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ISO審査員の中には、毎年100件審査しているとか、100日現場で審査をしていると豪語する方がいる。はっきり言ってそのような審査員はまっとうな審査をしているはずがない。あるいは単なる数合わせ要員だろう。そのように数多くの審査を行っているということは、しっかりした準備ができるはずがなく、組織にとって失礼極まりないことだ。本当にまじめに審査をしようとすれば、週に1件、年間50件が限度ではないだろうか。CEARの基準によれば、50件でも準備やまとめに200日以上費やさなければならない。もちろん認証機関もそれに見合った費用を請求してよい。 おっと当然だが、それに見合った成果、つまり審査報告書を提供しなければならない。それができないなら審査費用を安くするのではなく、力量がないと自覚して認証ビジネスから撤退すべきだろう。 |
「森本さん、関越工場の村上さんと監査に行ったことがあるよね?」
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「はい、一度一緒に販売会社に行きました」
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「村上さんはどうなの?」
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「どうというのは、彼が一人前かということですか?」
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「早い話がそう。一人で派遣しても大丈夫ですか?」
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「新しい監査基準はだいぶ飲み込んでくれたと思います。しかしあの方は元々電気主任技術者なので、省エネ、それも電気に限定した監査をしていますね。遵法全般については心もとない感じです」
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「法規制すべてについて詳しくなくても、法規制の把握と遵守状況を見てくれればよいのだが・・・」
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「村山さんを一人で派遣しないほうが良いのは知識がないからではありません。臨機応変に機転を利かせて対応できないだろうと思うからです」
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「なるほどねえ〜、じゃあ一人で関連会社の監査は無理だね?」
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「そうですね。でも環境保護部からも参加するのでしょう?」
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「うーん、ちょっと監査予定が混んでいてね、来月半ばに同じ日に3社予定があり森本さんと私だけでは手が足りないんだよ」 森本は立ち上がり山田のパソコンをのぞきこんだ。 | |||
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「山田さん、そもそも監査の日程が平準化されていないのですよ。もう少し前後にならせば派遣する人の割り当てに苦労することはないのに」
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「森本さん、そう言えばそうなんだが、相手はみなお客様と認識しなければならないよ。基本的に監査の日程は、監査を受ける会社に自己申告してもらっている。こちらは可能な限りそれを尊重して計画を立てている。監査を受ける側だって諸事情があって予定日を提案しているのだからね」
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「山田さん、おっしゃるとおりです。ええとこの日は社内の工場と関連会社は製造業と倉庫会社ですか。社内の工場は監査責任者として山田課長が行かないとまずいですね。でも倉庫会社の監査は社内工場の二日目ですから、山田さんが初日と三日目だけ参加して二日目は倉庫会社に行くということはできないか・・工場は九州で倉庫は大阪ですか。ちょっと無理ですね。となれば僕が倉庫会社に行って、関連会社の製造業には村山さんだけでなく工場の人をもう一名を投入する手もありますが」
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「オイオイ、お金が無限にあるわけじゃない。一人派遣するといくらかかるか知っているかい。それにそもそも関越工場から派遣してもらおうとしたのは、ほかの工場からはその前後の週に派遣依頼しているからで、連続で出させるのは気が引けるよ」
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「状況はわかります。やはり一人で監査できる人を、あと何人か養成しないと回りませんねえ〜。とりあえずここは環境保護部から出すことにしましょう」
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「森本さん・・・まさか廣井さんに」
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「横山さんに監査に行ってもらいましょう。彼女も山田さんに教育を受けてその成果を発揮しないと腐りますよ」 山田はハットした。横山のことが頭に浮かばなかった。そして、森本も結構考えているものだと思った。 | ||
「彼女は監査に参加したことがあったっけか?」 横山が聞き耳を立てていたと見えて、立ち上がって山田のところに来た。 | |||
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「お忘れになりましたか? 山田さんと一緒に、工場の監査に1回参加しています。関連会社には、販売会社に2回、製造業に1回、森本さんに同行しています。一人で行っても大丈夫でしょう」
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「既に横山さんとは話がついているのか?」 森本はニヤニヤした。 山田は立ち上がって向かい側の机の中野に声をかけた。 | ||
「中野さん、○月○日横山さんを貸してもらえませんか」 中野はびっくりしたように顔を上げた。 | |||
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「はあ!山田君、聞き取れなかったが」
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「横山さんに監査応援を頼みたいのですがね」
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「横山さんがいいならいいよ。オーケー? じゃあ横山さん頼むわ」
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「すみませんねえ、環境報告書の発送の時は私も手伝いますから」
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「それは元々あたりまえじゃないか」
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「じゃあ、詳細は私から横山さんに説明しますので。 村山さんについては、あと二三度陪席させて、今後監査を任せるのは無理だと判断したら、先方の課長にその旨説明した方が良いと思います」 | ||
「わかった、次回は私が村山さんと監査に行くことにしよう」 山田は、森本も本社に来て半年で成長したものだと感心した。 |
「森本さん」 と隣の森本に声をかけた。 | ||||||||||||||||
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「はい、なんでしょうか?」
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「九州工場の佐川さんってどんな人?」
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「あれえ、お忘れですか? 白髪頭のかっこいい方ですよ。もう定年を過ぎて嘱託なんですが、元九州工場の部長だって聞きました。部長になる前は環境部門の課長をしていたので、環境保護部の監査をしたいと向こうから自推された方です」
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「記憶がない、会ったことがあったかなあ? 10日ほど前、千葉と新潟に派遣したのだが、まだ監査報告書が来ていない」 | ||||||||||||||||
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「年配者で元部長となると、キーボードが苦手なのかもしれませんね」
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「どうしてそういう人を派遣したんだ。おれも一体全体どうしてたんだろう?」 これは独り言のつもりだったが、森本が応じた。 | ||||||||||||||||
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「課長、忘れてしまったのですか? 2か月くらい前に廣井部長のところに役員の方からぜひ佐川さんを環境保護部で使ってほしいという話があったでしょう」 山田は森本に言われて、そんなことがあったのを思い出した。 | |||||||||||||||
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「廣井部長はしょうがないと了解して、山田課長になんとか使ってくれという話になって、その後に課長は佐川さんを本社に呼んで打ち合わせしたじゃないですか」 山田はいきさつを思い出した。そうそう、そんなことがあったけ。忙しさにまぎれて忘れていたのだ。確かにしらが頭のおっさんだった。 | |||||||||||||||
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「そのとき佐川さんが環境監査など何十回もしているからわざわざ教育など受けることはないと力説して、課長もそれならと初めから一人で派遣するよう計画に入れたんですよ」
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「佐川様いらっしゃいますか? 本社環境保護部の山田と申します。ああ、佐川様ですか、ご無沙汰しております。早速ですが先週監査に行かれました千葉と新潟の報告書ですがまだいただいておりませんが・・」
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「ああ、山田君、そんなに急がされても良い報告書は書けないよ。じっくりと考えないとだね・・」
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「だいぶ前お会いして監査のご説明をいたしましたとき、監査実施後3稼働日以内に報告書・・正確には報告書のドラフトですが・・私宛に提出していただくことをお話したと思いますが」
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「山田君、何を言っているんだね。仕事というのは速けりゃいいというものではない。質だよ質」
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「はっきりさせておきますが、管理者は私です。私の指示に従っていただきます。一定の品質の報告書を期限までに出すのを仕事と言います。それで報告書はいつまでに出していただけるのでしょうか」
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「そんなことを言われても、すぐにはできないよ。来週くらいまで待ってもらいたいね」
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「明日定時まで猶予をあげます。それまでにお願いします」 佐川が何かわめいていたが山田はかまわず電話を切った。 | |||||||||||||||
「約束手形は呈示期間を過ぎたらお金にならないんだよね」 これも独り言だったが、森本は応じた。 | ||||||||||||||||
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「はっきり言って佐川さんから報告書が来たとしても、A4で1枚くらいのISO規格適合云々という報告書くらいしかこないでしょう。どうするのですか?」
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「うーん、すべて俺の責任だあ〜。もうしょうがない。今年は軽く流して来年も監査を行うことにしよう。毎日が勉強だよ。 しまった!毎日飛行機で往復するな、一泊しろと言うのを忘れた」 | |||||||||||||||
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「山田さん、その必要はないでしょう」
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「まあね」 山田は苦笑いである。
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「環境保護部です。ハイお待ちください」 森本は受話器を手で押さえて山田に声をかけた。 「山田さん、人事からです」 ![]()
「ハイ、山田に代わりました。ハイハイ、存じております。今回は教育の一環として計画しまして、ハイ、常にというわけではありませんので、やはり新人の育成時には計画的に発生すると思います。ハイそのように努めます」 山田がやれやれといった風情で電話を切ると、森本が恐る恐る話しかけた。 ![]()
「山田さん、何の話でしたか?」
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「一つの監査に金魚のフンのように何人も出張するなということだ。そりゃそうなのだが、教育中はしょうがないし・・」
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「まあ苦情を聞くのも管理者の仕事と割り切るしかないよ」 通りかかった廣井が話に割り込んだ。
「廣井さん、まだ管理者になる修行中です」
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「今まで僕に来ていたのが山田君に行くようになって、だいぶ楽になったよ」 山田はそれを聞いて、少しうれしかった。 |
私も「殺してしまえホトトギス」タイプなので、時々(いや、いつも)自己嫌悪に陥ります。 「鳴くまで待とう」ができないんで、出来る人は尊敬しちゃいます。 |
ぶらっくたいがぁ様 毎度ありがとうございます。 私も待つことができません。そして待たせたこともありません。 仕事とは、常に素早く処理するべきだと思います。 もっとも私は昔囲碁に凝っておりましたが、あれは仕事の要領でするとだめです。まっしぐらに進まず相手の手の内を見たり、相手が得意でない定石でいやがらせをしたり、相手が時間に追われるとコウに持ち込んで時間切れを狙ったり、とてもまっとうな人間のするもんじゃありません。 |
鶏は喧嘩が苦手なので「殺す」ことが出来ません。「待つ」か「方法を考える」の二択です。もっとも時間が掛かるものですから「遅い」と怒られてばかりですけどね。
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鶏様 毎度ありがとうございます。 喧嘩が苦手・・? 殺すことができない・・・?? ちょっと、ちょっと |