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お見込みの通り、教授のお名前は、リサイクルなどで有名な二人の教授の苗字と名前をいただきました。お二人の仲が良いか悪いかは知りません。
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私が武田教授である |
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「皆さんこんにちは、私はご紹介ありましたように鷽八百機械の山田と申します。本日はこのようなお話しする場を与えていただきまして、ありがとうございます。 私は環境保護部という組織におりまして、当社グループの遵法や事故防止の指導や、実際問題が発生したときの対応などを担当しております。その一環として環境監査やISO認証の指導や認証に関わるトラブル対策を行っております。 本日は『ISO14001認証の効果について』というテーマでお話せよということですので、一般論の後に当社グループでの実態についてなるべく具体的なことをお話ししようと思います。」 | ||||||||||||
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「ISO14001はEMSつまり環境マネジメントシステムの規格です。EMSの規格といっても多種あるわけで、その一つに過ぎません。またISO14001が完成されたものとか理想というわけではありません。もしISO14001が理想のものならば改定など起こるはずがありませんが、既に改定が一度ありましたし、現在も改定作業中です。 ISO14001の意図は『遵法と汚染の予防』と序文にあります。遵法とは法律を守ること、汚染の予防とは公害等を出さないことだけでなく、省エネや廃棄物削減などをすることにより環境負荷を下げることも含むと規格に書いてあります。 さて、ISO14001規格には要求事項、つまりこうあるべしと聖書のようなことが書いてあるわけですが、規格の使い方を決めているわけではありません。実際には規格の序文で使い方を4つ上げています。 以上は本日のテーマについての基礎知識です。これらのこと、及びその周辺の知識、情報がなければ本日のお題である『ISO14001認証の効果について』議論することができません。私はみなさんがどのくらい知識があるのかわかりませんが、これらを知っているという条件で話を進めていきます。 | ||||||||||||
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「ISO14001認証とは何かといえば、お金儲けということです。上品というかはやり言葉ならビジネスモデルというわけですね。企業のEMSつまり環境管理体制がISO14001に見合っているかどうかを点検して、合格のところに認証早い話が免状を出すというビジネスを考えた人たちがいたわけです。 ISOというのはWTOの下部機関で、更にさかのぼれば国連につながります。要するにビジネスとは無縁、認証制度とも無縁です。もちろんIAFと連携は取っていますけど。ですから認証の目的はなにかといえばビジネスというのが正しいかもしれません。 しかしISO認証の目的というと、普通は認証の意義を意味しています。認証の意義を確認しましょう。」 | ||||||||||||
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「認証の意義としてまず『組織のEMSが規格適合しているという信頼性を与える』といわれています。これはIAFが公式に説明しています。 単純に考えて自分で私は信用できるというよりも、他の人があの人は信用できると言った方が、信用されるということでしょう。 とはいえ認証機関が企業を認証してもその企業が行ったことについて責任は一切負いません。まあ責任を負ったら認証なんてビジネスは危なくてやっていけないでしょう。 もうひとつの目的は『組織のEMSを改善するための手掛かりとする』と言われています。しかしこれは関係者がそういうことを言っているだけで、公式な発言や文書で表明されたことはありません。 本日は『ISO14001認証の効果』のお話です。ISO認証の効果ということは認証の意義を達成したかを計ることになりますから。 まず最初に公式に掲げられている『組織のEMSが規格適合しているという信頼性を与える』という効果はあるのでしょうか? 具体例としてグリーン調達をとりあげます。グリーン調達ってなんですか? なんておっしゃるかたは大学院にいないと思います」 | ||||||||||||
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「グリーン調達においてISO14001認証のみならず、EMSについての要求は時間と共に減少しているようです。ということはISO認証しても効果がないといえるのではないでしょうか。現在は製品に6物質と言われる重金属を含有していないことが求められています。そういう社会的要求と比較するとEMSはプライオリティが低いようです。 さて、では私どもの企業グループにおけるISO14001認証の効果はどうかということを考えます。 どの企業においても環境法違反は皆無ではありません。勘違いはないと思いますが、環境先進企業と言われているIBM社は1990年代から、環境法違反、罰金金額、損害費用などを公表してきました。それを社会はどう見たかと言えば、正直で透明性があるとしてその姿勢を高く評価したのです。 君、日本で環境法違反が毎年何件くらいあるかわかりますか?」 山田は一番前の女性を指した。 | ||||||||||||
「わかりません」
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「そういうことは概数を知っておくことが必要ですね。隣の人は知っているかな?」
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「1万件位だと思います」
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「そのとおり、ではその内訳は知っていますか?」
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「わかりません」
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「隣の方は」 返事はなかった。 | ||||||||||||
「日本の環境法違反の9割以上は廃棄物です。日本の大手企業であっても廃棄物関連の法違反は珍しくありません。新聞をみていると結構みつかります。 さて当社グループでも環境法違反は皆無ではありません。廃棄物処理法で実質犯でなく形式犯が多いのですが・・ 二列目の右側の人、形式犯て、ご存知ですか?」 | ||||||||||||
「わかりません」
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「そうですか、勉強することがたくさんありますね、後で形式犯という言葉を調べておきましょう。 形式犯であっても罰則はありますから、適正に対策しなければなりません。ここでISO14001の意図は遵法と汚染の予防です。当社グループの中でISO認証している企業と認証していない企業では法違反の割合がどのくらい違うでしょうか?」 山田は一番後列まで歩いて行って居眠りしている女子学生に声をかけた。 | ||||||||||||
「はあ! わかりません」
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「隣の方はどうでしょうか?」
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「当然ISO14001認証している企業の方が少ないと思います」
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「普通はそう考えます。しかし鷽八百グループ企業においては、認証している企業と認証していない企業の法違反比率は違いません。もちろん認証している企業は大きなところが多く、環境負荷も多く、関係する法規制が多いという条件はあります。しかしそれは法律を調査する体制も環境管理の組織もあるだろうということになり、そうとも言えません。わかるのは認証しているから環境遵法が良いとは言えないということです」
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「それはISO規格の問題ではなく、企業のEMSがISO規格を満たしていないということはありませんか?」
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「そうかもしれません。しかし認証している企業と認証していない企業と遵法に差がないわけですから、ISO認証の効果がないということは言えますね」
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「そうですね、するとISO認証の信頼性がないということでしょうか? 言い換えるとISO審査の信頼性がないということでしょうか?」 山田はスクリーンの前まで戻ってきた。 | ||||||||||||
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「基本的なことをここに書きました。 ISO14001規格の意図は『遵法と汚染の予防』ですが、組織が規格を満たしていればそれを実現することを保証するものではない。またISO認証は『その組織が規格適合していることを対外的に表明すること』であり、審査はサンプリングで行うので100%を保証しないと明言されています。 細かくはみなさんが論理の連鎖を考えてもらうとして、結果としてISO認証と遵法と汚染の予防の実現はイコールではない。 すると『ISO14001認証の効果』はあるのでしょうか? でもその前に『ISO14001認証の効果』というものをどのような指標で評価するのかということを考えなければなりません。グリーン調達の条件であるなら認証することは立派な効果です。しかし認証することによって何を得たいのかをはっきりさせておかないと、効果があるかないかは議論できません」 山田はよく言われているような認証の効果を並べ立てるのではなく、いったい認証とは何か、その目的として何を目指しているのか、指標をどう考えるのか、社会の評価はどうなのかということを多面的に説明していく。 ●
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「山田部長、時間があれですから、学生からの質疑に入りたいのですがよろしいですか?」
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「ああ、すみません。もう時間なってしまいましたか。私の話はどこからどこまでということもありませんので、構いません。なんでも突っ込んでいただければうれしいですね」
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「ISO認証のためには、規格要求に対応して文書や記録を作ると聞きましたが、それは組織の立場、ここでは大学ですが、から見ると変に思います。そのあたりについての見解はいかがですか」
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「そうおっしゃるのは詳しく知っている方ですね。ISOの運営に関わっているのですか?」
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「そうです。大学院のISO14001の委員をしています」
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「その質問には適任者がいます。森本係長から話してもらいましょう」
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「ISO認証のアプローチは規格からと組織の実態からという二つがあると思います。規格にあるからというアプローチでは審査で問題なくいくとおもいますが、組織のためにはなりません。そうではなく組織がISO規格を満たしていることを説明するというのがあるべきアプローチと思います」 森本はホワイトボードにマーカーで書いた。 | ||||||||||||
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「ISOの規格解説本などをみると、規格に基づいて・・というのがほとんどですが」
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「おっしゃるとおりです。僕は別の大学の環境学部を出て10年間ISO事務局をしていました。そしてずっと規格から始まるという方式をしていました。しかしそのような仕組みがまっとうに動くはずがありません。実際の会社の環境管理の仕組みと乖離がおきて、よく言われるダブルスタンダードになります。規格からのアプローチではダブスタになるのは必然のように思えます。 もっともISOに取り掛かる前は、まったく環境管理の仕組みがなかった会社では、ISOの仕組みが唯一ですから機能する可能性もあります。 しかし環境負荷が大きな会社では、公害防止管理組織や省エネ組織を社内に構築することが法律で定めてありますから、ISO認証に取り掛かる以前から法で定める環境管理体制があります。だからISO規格からというアプローチは、そもそも間違えた方法なのです」 | ||||||||||||
「するとISO認証そのものが意味がない、いや必要性がないということになりますね?」
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「先ほど山田部長から説明がありましたが、ISO認証の目的が入札条件などビジネスの必要条件なら十分意味があります。そして会社を良くするためというなら意味がないということになるでしょう」
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「一般的にISO認証すると遵法が確実になり、省エネなどのパフォーマンスが良くなると言われていますよね? そういうことはないのですか?」
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「私はISO認証によって、パフォーマンスが良くなった事例を知りません。そういう論文なりをお読みになったときは、その出典を確認されたらどうでしょうか? ISO認証とは外部の人による規格適合確認ですから、パフォーマンス向上効果があるはずがない。ISO規格に適合した仕組みの上で改善活動を行い、それによってパフォーマンスが向上しているのです。それはISOでなくても、従来の小集団とか方針管理などによって達成されているものであって、ISO規格とは関係ないでしょう。 ましてISO認証によって改善が進むということは論理的にありえない。仮に関連があるとすれば、審査で恥をかきたくないから否が応でも改善をするということくらいでしょうか?」 | ||||||||||||
「僕は大学の環境管理責任者を務めているのだが、ISO認証することで遵法が向上したと認識している」
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「その向上具合はなんらかの指標、必ずしも定量化しなくても良いのですが、そういうもので表すことができますか?」
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「いや、そう言われれば主観的なものしかない。しかしISO認証の過程で、それ以前の届出漏れや規制値を遵守していない事例などを発見して対策したことはある」
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「うーん、どうでしょうかねえ、それは以前の環境管理に問題があったという事であって、ISO規格に合わせたことによる効果であるかもしれませんが、認証の効果とはいえないでしょう? それをISO認証の効果というのは筋違いのように思います」
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「その不具合がISO認証しなければ発見されなかったなら、ISO認証の効果と言っても良いかもしれないが」 山田は武田の旗色が悪いので、差し障りない救いの手を差し伸べた。 | ||||||||||||
「その辺は定義の問題ですね。ISO14001というものは環境管理のツールの一つであるでしょうけど、ISO認証がツールといえるのかどうかは疑問です。単に認証した前後を比較して、その差をISO認証の効果というのは正しくないのではないでしょうか」
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「ちょっと待ってくれ、ISO14001を環境管理のツールと言っては矮小化しているのではないか? 私はISO14001を経営のツールだと考えているのだが」
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「経営のツールとおっしゃるのも定義が必要ですね。通常経営という言葉の意味が多様です。社長をはじめとするいわゆる経営層が経営戦略策定や決定に使うツールなのか、経営層が組織を動かすツールとして役に立つものなのか、あるいは経営という意味を企業の事業全体ととらえて担当者レベルの業務改善のツールなのかを明確にしなければ議論になりません」
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「いや、森本係長、論理が厳しいなあ、タジタジだよ」
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「私の経験から、ISO14001が有効なのは経営層においてではないでしょうね」
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「でも認証機関の多くは、経営に役立つ審査をすると宣伝していますね?」
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「おっしゃる通りです。しかしどのような観点の経営に役に立つのかを明示してはいないようです。会社に入った新入社員でも、いやお掃除のおばさんでも会社に貢献していると思います。それを経営に寄与するというでしょうか? ISOの貢献とはそうではなくて真に経営戦略などに役に立っているでしょうか? 私は懐疑的ですね」
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「森本さんのお話を聞くと、ISOは企業にとって価値のないものと思えますね」
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「誤解してほしくないのですが、ISO14001規格というのは素晴らしいものだと思います。しかし会社の環境管理の仕組みをISO規格を満たすように再構築する方法だけが、遵法と汚染の予防につながるわけではありません。従来からの公害防止組織の継続的改善によってだって同等あるいはそれ以上の効果を出せると思います。 またISO規格を満たしたEMSであっても、認証を受けないという発想もあります。遵法と汚染の予防はISO規格の意図であって、認証が必要ではないからです。 そして遵法と汚染の予防のためには、ISO規格もISO認証も必要条件でもなく十分条件でもないと言えるでしょう」 | ||||||||||||
「じゃあ、遵法と汚染の予防を実現するための、必要十分条件はなんですか?」
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「うわあーー、それは難しい質問だなあ 僕自身、その回答を見つけていません。しかし会社でも大学でも、何かを、製品でも売り上げでも研究でも同じですが、物事を成し遂げるには才能や能力だけではできません。仕事や研究する手段や手法を知っていることが必要です。更に粘り強い努力、問題が起きてもへこたれない精神が必要です。ISO規格は14001だけでなく9001も新しい50001も管理手法というか仕組みだけです。それだけでは十分条件でないことは明白です。 回答になりませんが、遵法と汚染の予防を実現するには、まず人物金などのリソースが必要です。そしてそのリソースを有効に活用するには、技術、管理、精神力が必要なのです。ISO規格が提供するのは管理手法だけです。そして認証とはなにも提供せず、方法論が確立しているかを点検し結果を報告するだけです」 | ||||||||||||
「森本さん、その言葉に感激しました。 いずれにしても認証の効果というのは、論理的に期待できないということでしょうか?」 | ||||||||||||
「とすると認証している企業において法違反や環境事故が多い少ないといってもあまり意味がないように思えます。 ともかく因果関係を証明できないと認証の価値を立証できませんね」 | ||||||||||||
「そうすると認証の価値は企業ではなく、認証機関が立証する責任があることになる」
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「そりゃ当然です。企業は認証を受けるのであって、認証するわけではありません。認証の質は認証する認証機関の責任です」
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「うーん、僕も教えを乞う立場からの質問ですが、例えばこの大学がISO14001認証しているわけですが、認証の意味がないということになるのですかね?」
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「それは教授が認証に何を期待するかでしょう。大学の募集のパンフレットにISO登録書の写真を載せることによって受験者を増やす、いやそこまでいかなくても他大学に比べて見劣りしないというメッセージを発信することを期待するならそれは十分報われています。もちろん投資対効果ですから、大学の審査費用ってどのくらいですかね? 300万くらいはかかりますか、受験料が35,000円として受験者が数百人増えれば元が取れるでしょう。 でも『この大学はISO14001を満たしているので自己宣言しました』といっても同じ効果が得られるかもしれません。要するに認証が必要条件ではありません。 あるいは遵法を確実にしようというなら、専門のコンサルを依頼して点検してもらうとかのほうが一日二日審査に来る審査員よりははるかに頼りになるでしょう。省エネ推進とかになれば、省エネセンターや都の指導を依頼した方が、効果は間違いなくありますし、費用は実費程度で低廉です」 | ||||||||||||
「山田部長、遵法でもパフォーマンスでも認証よりも結果を出せる良い方法があり、そのほうが安いとなれば認証の効果はますます期待できないということになりますが、そう理解して良いのですか?」
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「うーん、何度も言いますが、ISO14001の認証することとISO14001規格に適合した仕組みを作ることは同義ではありません。ですからISO14001規格に適合した仕組みを作る必要がないということではありません。 もうひとつ、大事なことがあります。ISO14001の序文をお読みになっていると思いますが『レビュー及び監査だけでは、組織のパフォーマンスが法律上及び方針上の要求事項を満たし、かつ、将来も満たし続けることに十分でもないかもしれない。これを効果的にするためには組織に組み込まれて体系化されたマネジメントシステムが必要』だと書いてあります。要するに職人の技とその伝承で間に合っているならシステムはいらないのです。規模が大きく、複雑になったときシステムが必要なのです。 そして森本が申しましたように、マネジメントシステムは管理技術ですから、必要条件でもなければ十分条件でもありません」 | ||||||||||||
「ISO認証が企業においてあまりプライオリティが高くないことがわかりました。企業の環境管理において重要なものってどのような順序になるのですか?」
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「はっきり言って法規制を守ることと、事故を起こさないことです。パフォーマンス向上は二の次三の次でしょうね。その意味でISO14001が定めていることはそのまま重要なことなのです。 法規制といっても時と共に最優先課題は変わります。2000年代前半は国内的にはPCBや土壌汚染対策で、海外向けとしてはRoHSでした。2000年代半ば以降はCO2削減やREACHでした。2011年の東日本大震災とその後の電力不足で省エネ、ピークカットは最優先になりました。他方、地球温暖化と対策としてのCO2削減は、流行が過ぎたようで今は誰も語りません」 ●
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「あっという間に3時間過ぎてしまいました。本日は本音のお話をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。本日の講師の山田部長と森本係長にお礼の拍手をしましょう。 拍手・・ 山田部長今日はお疲れ様でした。講義の内容もユニークでしたが、会社の宣伝をしない講師は山田部長が初めてですよ」 | ||||||||||||
「ええ!、会社の宣伝やリクルートしても良かったのですか。そりゃしまった」 山田は笑った。 |