ケーススタディ 環境経営

12.08.04
ISOケーススタディシリーズとは
環境保護部のミーティングで廣井が今度異動してきた岡田マリ岡田 を紹介した。
一見してかなりハデハデである。近づくと免税店の香りがした。今年入社であるが、自己紹介によると修士でおんとし26歳だという。浪人か留年しているのだろう。横山が今年30だから年齢はあまり変わらない。見た目には横山の方が若く、いや子供っぽく見える。それは化粧の違いか・・
ついで廣井は、横山が正式に山田グループに異動になったこと、監査の事務局と関連会社の指導を行うことを告げた。また当分の間、横山が岡田の指導をすることも。

環境保護部のオールスターキャスト
廣井../space.gif藤本
廣井部長../space.gif藤本担当部長
中野
中野課長
山田
山田課長
岡田
岡田
五反田
五反田
横山
横山
山田は、横山と岡田がもめなければよいがと心の中で思った。横山も鼻っ柱は強いし、岡田もおとなしいようには見えない。

ちなみにどの会社でも環境とかCSRという部署は女性が多い。かのトヨタも環境部長か次長は女性だったはずだ。私の勤めていた会社も環境部門の半数は女性だった。もちろん全員総合職でバリバリだった。しかし言い換えると女性進出といえば聞こえはいいが、やはり現時点では女性進出の職務は限定されていると思う。例えば営業あるいは製造などのライン、スタッフ部門でも品質保証部門とか生産技術部門には女性は少ないし管理職はほとんどいない。そういった部門は現場での経験、それも手足を汚す泥臭い経験がないと務まらないからだろうか?

ミーティングの後、横山の机を移動して、元横山がいたところに岡田が座った。引越しといっても引き出しを交換するだけだからあっという間だ。
また引継ぎといっても横山がずっといるわけで、するほどのこともない。今日、岡田は中野から環境保護部のルールを勉強するよう言われて関係資料を読んでいるようだ。

どの職場でも仕事をする上ではルールがある。私の経験では、それは会社規則、そこまで重大でなければ部門の規則にしていた。だから1991年にISO9001なんてのに関わったとき、品質マニュアルを書くということは、それらの規則を引用することでしかなかった。ISO認証のために、規格で求めているから手順書を作らねばならないなんて話を聞くと、オイオイ、今まで何に基づいて仕事をしていたのかと不思議に思う。

山田は隣の五反田といよいよ始まる非製造会社の環境教育についての手順を打ち合わせていた。横山が異動してきたので、彼女にも入ってもらった方が良いのではないかと五反田はいう。
出向している身として五反田はプロパー社員にいろいろ気を使っているのだろう。山田は今まで関わってきた五反田と藤本に一貫して非製造会社の環境教育をしてもらった方がよいかなと考えていた時だ。突然、耳元で横山の大声がした。

横山
「山田さん、ちょっと聞いてください。環境経営ってなんですか?」
山田と五反田が驚いて顔を上げると、横山と岡田が血相を変えて立っている。
山田
「はい、なんでしょうか?」
横山
「岡田さんから当社の環境経営がなってないって言われたんです。そこで議論になったのですが、環境経営についての考えが全く違います。こんなに考えが違う人とは一緒に仕事できません」
山田は、岡田と横山はぶつかりそうだとは予想はしていたが、会って1時間で喧嘩になるとは想定外であった。
山田
「岡田さんの上長は中野さんだろう」

中野
山田が中野の顔をみると中野は涼しい顔をして
「山田君、私は経産省からの調査に回答しなくちゃならないので、二人の話を聞いてくれんか」
中野もだんだんと廣井に似てきた。歳を取ってずるくなったというべきだろうか?
山田
「わかりました。五反田さん、申し訳ないが続きはあとにしよう」


山田は立ち上がりパントリーに行ってコーヒーを注いだ。
横山と岡田もついてきて、そのまま山田を打ち合わせコーナーに引っ張っていった。
三人が座ると岡田が切り出した。
岡田
「この会社では環境経営を、どう考えているのですか?」
山田
「どう考えているって言われても・・・そもそも環境経営ってなんですか?」
岡田
「まあ、課長ともあろう方が環境経営もご存じない。環境経営とは、企業が持続可能であるために、社会や地球環境と調和した企業経営を行うということです。
今までは企業経営において経営から環境を見ていたのでしょうけど、これからは環境から経営を見ていかなくちゃだめなんです。そんなこと当たり前でしょう」
山田
「ああ、そうなんですか? 当たり前とは知りませんでした。そういう考えの人もいるということでしょうねえ。
環境経営って別に法律で定められた用語ではありません。大学の先生、政治家、評論家、雑誌記者その他が、思い思いに自分の考えを主張したいがために適当に使っているだけですよ。そもそも日本語に環境経営って言葉はない。私の知識では元々はEnvironmental Managementの訳だったはずなんだけど、20年前にはそれは環境管理って訳されていたんだよね。環境管理ってわかります? 企業において公害を出さないとか、事故を起こさないようにすることなんだけど」
岡田
「じゃあ、環境経営はいいとしてですね、当社が持続可能であるためにどのようにしているのですか」
山田
「岡田さん、『環境経営はいいとして』とはなんですか? 環境経営って何かとあなたが言い出したことですよ。自分に都合が悪くなると、もう話を変えるのですか。自分が問題提起したならば、それを集約するのはあなたの責任でしょう。それから、あなたは言葉を使うときはよく意味を考えて語るべきです。
こちらからお聞きしますが、持続可能性ってなんですか?」
岡田
「はぐらかさないでください。『将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たす』ことって国連のなんとか委員会で決めています」

山田
山田はもういい加減にしてくれよと思いつつ・・・
「それが定義なんですか? それが定義なら、非常にいい加減だと思います。漠然としているという意味ではありません。定義になっていないのです。将来の世代ってなんですか?」
岡田
「私たちの子孫ですよ、もちろん」
山田
「そうですか、それは子供の代、それとも孫の代ですか? 何代後の世代なのですか?」
岡田
「もちろん子供も孫も入りますが、もっとずっとだと思います。1000年後、1万年後もでしょうね」
山田
「人間の文明ってどれくらい続いてきたんでしょうねえ。キリストが生きたのが2000年前、ピラミッドが作られたのは4500年前、1万年前ってどんなだったのでしょうか? ナイアガラの滝ができたのが1万年前だそうです。そんな1万年前の人が今の時代を思いやって生きていたとは思えませんね」
岡田
「1万年の持続可能なんて無理だっていうんですか?」
山田
「持続可能が無理以前に、考えること自体が無理なんじゃないですか?
そもそも、普通持続可能って言われているのは、短期の持続可能、人によっては狭義の持続可能って言っている人もいます。たかだか100年とか200年の範囲なんです。
地球温暖化についてだってIPCCその他も100年先を論じているでしょう。数百年後の長期を考えれば地球が氷河期に入るのは確定的だし、そもそも化石燃料が尽きたらそれ以上温暖化するはずがありません」
岡田
「化石燃料がなくなっても温暖化するかもしれないでしょう」
山田
「うーん、地球温暖化って地球が温暖化することすべてを言うんじゃないんです。気候変動に関する国際連合枠組条約では『人間活動が大気中の温室効果ガスの濃度を著しく増加させてきていること、その増加が自然の温室効果を増大させていること並びにこのことが、地表及び地球の大気を全体として追加的に温暖化すること』とあるでしょう。あったまればなんでも温暖化というわけじゃないんです」
岡田
「そうなんですか、それは私の不勉強でした。でも持続可能性に期限があるはずがありません。期限がない持続可能性だって考えられるでしょう」
山田
「そういう持続可能性が存在するかどうか、先入観なしに考えてみてよ」
岡田
「大学の先生が持続可能性って永遠だっておっしゃてましたけど」
山田
「じゃあ、その先生は間違ってるんですよ。私もある講演会に行って、持続可能性は永遠だと語る大学の先生に、『持続可能性って何年を想定していますか?』と質問したことがあります。答えは『期限のない永遠』でした。でもね、地球の寿命はあと数億年でしょう。いくらなんでも人類がそれ以上生きながらえるとは思えません。持続可能性をもっと具体的に定義しないと話になりませんよね。私に言わせると期限のない持続可能性は宗教そのものでしょうね」
岡田
「じゃ、どうせ長続きしないのだから地球を汚染したり破壊してもよい、環境保護をしなくてよいというのですか?」
山田
「うーん、どうも岡田さんのお話は、支離滅裂というか無茶苦茶に聞こえますね。持続可能の期間を定めなければ、環境破壊をしてもよいというのは論理的にどうつながるのでしょうか?」
岡田
「山田さんの方がのらりくらりと論点をずらしているのではないですか。私は企業が持続可能であるべきビジョンを確立して、それを実現するのが環境経営だと思います」
山田
「なるほど、じゃあ岡田さんは、機械の部品などを製造販売している当社は、どうあれば持続可能になれるとお考えですか?」
岡田
「100%再生可能エネルギーの使用、ゼロエミッション、製品の完全リサイクルなどがあると思います」
ルーピー鳩山 山田は頭がくらくらしてきた。お花畑とはこんなのを言うんだろうか? いったいこんな女が、いや男でも同じだが、大学院まで出ているとは・・おっとその大学院の先生はみなこんな風な考えなのだろうか?
そして数代前の首相の顔を思い出した。 彼もドクターであり、助教授であった(今なら准教授)。彼こそはお花畑の住人に違いない。だって還暦になった今も、親から何億という子供手当をもらって生活しているのだから。
山田
「私は持続可能な企業、いや持続可能な国家というものも存在しないと考えています。あるとすれば持続可能な世界かもしれない。一企業だけが永続するなんてこと、ちょっと考えればありえないでしょう。たとえて言えば一つの生物の種は滅んでも、生態系あるいは生命が永続していくというイメージなのですが。もし社会全体が持続可能ならば、その中に存在する企業の内いくつかは持続可能かもしれない。半分憶測だけどね。
ところでそういう前提で考えると、日本のエネルギーを100%再生エネルギーにするとか、日本全国ゼロエミッションを達成することが実際に可能かどうか考えてごらん」
岡田
「風力エネルギーや太陽光で自給できると思いますけど」
山田
「再生可能エネルギーだけで日本の一次エネルギーすべてを賄えるかどうか私は議論できるほど知識はない。それに今後、技術が進むだろうし、人口も減るとか、条件がどんどん変わっていくだろう。しかし物事を単純化すれば、日本が外国からエネルギーを買えなくなれば、エネルギー自給率は100%になる。そのときの総エネルギーは現在の2%くらいになるのだろうけどね。食料自給率だって、今40%と言われているが、輸入できなくなればあっというまに100%になるのと同じことだ。そのとき飢餓状態になっているだろう。
ともかく、当社のみが再生可能エネルギーを使えば当社は持続可能になるわけではないということは理解できるかい?」
岡田
「エネルギーに関しては、再生可能エネルギーを100%にすることがなかなかむずかしいということはわかります。でもゼロエミッションは既にどの会社でも実現しているじゃないですか?」
山田はため息をついた。廣井もおかしな子を引き取ったものだ。おおかた開発本部で扱いに困り果て、本音を隠して他部門に押し付けたんだろう。廣井は知って受け取ったのか、知らなくて受け取ったのか・・
山田はハットした。横山も森本も廣井は他の部門でいらないとか手におえないという人を受け取って教育してきた。ひょっとして俺もそうだったのだろうか?
山田
「再生可能エネルギー100%が難しいことは間違いないが、それもちょっと難しいのではなく、とっても難しい、不可能に近いだろうね。
ところで、ゼロエミッションを実現した企業が存在しているとは初耳だね。岡田さん、ゼロエミを達成したといっている企業の定義を調べたことがありますか?」
岡田
「ゼロエミって廃棄物を出さないことでしょう」
山田
「横山さん、知ってるかい?」

横山
横山は突然話を振られたが、即座に答えた。
「ゼロエミッションの定義はいろいろですが、本当のゼロエミッションを実現した企業なんてありません。
ゼロエミを達成したと言っているものの定義は、国連大学が提唱した考えではなく、企業独自に決めているものもありますが、業界ごとに決めているのもあります。
まず、直接埋立処分ゼロというのがあります。最終埋立処分率何パーセントと、だいたい1%とか0.1%とかですが、適当に決めてそれ以下をゼロエミとしているもの、リサイクルするよりも埋立が環境負荷が少なければゼロエミとするという会社もあります。ゼロエミの会社がどんどん増えているのに、最終処分地が足りなくなるのも不思議ですね、岡田さん。
そもそもこのようないいかげんなゼロエミの使い方を招いたのは千葉商科大の三橋某という教授のおかしな提案が起原です。彼の提言で、本来のゼロエミがいいかげんなものになってしまったのです。もっともおかしな考えのゼロエミは日本国内だけでしょうけど」
山田
「岡田さん、横山さんが言ったとおりだ。日本に限らずゼロエミを実現した企業はないと思うよ」
岡田
「直接埋立ゼロというのはどういう意味ですか?」
山田
「勉強しなさいというのが教師としてのあるべき回答だろうね。でもそれも面倒だろうから、横山さん教えてやってくれ」
横山
「廃棄物は中間処理をいくつか経て、最終処分になります。最終処分とは法律で、埋立、海洋投棄、再生のみっつがあります。今現在、日本では海洋投棄は禁止されています。(東日本大震災のがれきは一部行われた)
企業が出した産業廃棄物が中間処理をしないで埋立すると体積も大きいし、有用なものも埋めてしまうことになるので、中間処理で破砕したり、金目のものを選別したりして残りを埋立するのです。多くの企業は中間処理をすれば埋立してもゼロエミと呼んでいます。更に中間処理せずに直接埋立をしていても、その量が廃棄物全体の1%以下あるいは0.1%以下ならゼロエミといっているところもあります」

この場合はゼロエミではない
排出者 ../2009/yamigi.gif 収集運搬業者 ../2009/yamigi.gif 最終処分業者

この場合はゼロエミになる
排出者 ../2009/yamigi.gif 収集運搬業者 ../2009/yamigi.gif 中間処理業者 ../2009/yamigi.gif 最終処分業者
廃棄物運搬車
岡田
「えー、じゃあ一工程を入れれば結果は同じ埋立でもゼロエミになるの」
横山
「そうですよ。だから数字をよくしたい企業は、必要がなくても破砕を行ったり、何も処理しないけど中間処理業者を通して埋立することによってゼロエミとしているのです」
岡田
「じゃあゼロエミとかいうのはうそなの?」
山田
「うそというのとは違うと思うよ。与えられた条件において最高の数値を出すという意味では真実だ。しかし本来の廃棄物を減らすという指標から見れば、意味のないことかもしれない。
だが、そもそもゼロエミッションという考えがあったのだけど、それを怪しげなものに使った某教授が問題だったとも言えるね。その具体例として岡田さんが誤って考えていたわけだ」
岡田
「私はゼロエミって、廃棄しないですべてリサイクルしていると思ってました」
山田
「それから岡田さんの言ったのは製品の完全リサイクルだったね。完全なリサイクルが環境に良いという理由も定かではない。あるべき姿はライフサイクルコスト、あるいはライフサイクルを通じた環境負荷と言っても良いけど、それをミニマムにする解を得るということだよね。
そのとき、ありふれた材料ならワンウェイ(使い捨て)のほうがよいだろうし、リサイクルするごとに用途を変えるカスケードリサイクルが良いならそうすべきだ。全く同じループに戻すことが最善とは限らない。
家電メーカーでプラスティック完全リサイクルなんていっているところがあるけど、エネルギーも含めてどうなのかを公表したメーカーはないようだね」
岡田
「そうすると持続可能性って現実社会からは遠いんですか?」
山田
「その前に、そもそも持続可能性ってのを、しっかりと定義しなければ議論にならないことは先ほども言った。
ところで岡田さん、日本の環境問題っていったいなんだと思いますか?」

岡田
岡田は目を輝かしてとうとうとしゃべりだした。
「まず、ダイオキシンでしょう、環境ホルモンでしょう、水俣問題、福島原発の放射能、光化学スモッグ、トリハロメタン、もう一杯あります」
山田
「そうなんですか、じゃあ、そう言った問題を解決することが環境経営と言ってもよいのでしょうか?」
岡田
「そう考えています。
ダイオキシン問題解決のために当社は何をしていますか?」
山田
「何もしていません」
岡田
「まあ、ひどい。当社はどうしてなにもしないのですか?」
山田
「まずダイオキシン特措法は集団ヒステリーであったと思います。今では、ダイオキシンの危険性というものがいかほどか疑問を呈されています。
それはともあれ、我々は何ができますか? 当社には焼却炉は1炉もありません。非意図的生成の可能性も当社の設備ではないでしょうね。さて、岡田さん、なにをしたらよろしいですか?」
岡田
「そうなんですか? じゃ他の問題はどうなんですか?」
山田
「ええと、環境ホルモンでしたか。SPEED'98ってご存知ですか? 知らない、そうですか。環境ホルモン戦略計画っていうんですが、それを読んでほしいな。議論をするのはそれからだね
次は水俣か・・まあ、勉強してほしいね。君は今日から環境保護部員なのだから。
原発の放射能は当社としてどうしたらよいのかわからない。
光化学スモッグはいまだに解決されていない。しかしその原因物質は工場からの有機溶剤でもないだろうし、車の排気ガスが主原因でもないだろうね。中国から流れてきている工場排ガスであるのはほぼ間違いない。さて、当社は何をするべきだろうか? 中国大使館に抗議デモをしたらいいのかい?
岡田さんの思っている環境経営は当社には向かないようだね」
横山
「脇から口を挟んで恐縮ですが、日本の最大の環境問題は廃棄物です。
東日本大震災の廃棄物もそれに上積みされました。どこでもがれき処理を受け入れたくないようですね」
岡田
「へえ、そうなんですか?」
山田
「つまり当社の目の前の環境経営とは、自社の環境影響をよく把握して、法違反を起こさず、事故を起こさず、近隣住民や社会とコミュニケーションをとっていくことといえる。岡田さんは当社の環境コミュニケーション担当をしていくのだから、何が重要で、それをしっかりしていくためにはどんな情報発信、情報受信をしていくか、そしてそのためには社内に、いやグループ企業にどのような情報発信と情報収集を行うべきか、更にはこの企業グループをどういう方向に導いていくのかを考えてほしい。
ものすごくやりがいがあると思うよ」
岡田は神妙に聞いていた。



翌日、岡田が山田に話しかけてきた。
岡田
「山田さん、ご存知ですか。あるISO-TC委員が、環境マネジメントとは法違反を起こさない、事故を起こさないといった昔からの環境管理とは次元が違うんだと語ってましたよ。それをどうお考えですか?」
山田
「もしそうだとすると、きっとそのISO-TC委員はバカなんだろうね」
岡田は目を見開いて黙っていた。
そのとき廣井が声をかけてきた。
廣井
「山田君、ちょっと来いや」
山田
「はい、なんでしょうか?」
廣井
「おれは今まで廃棄物業者で他部門の廃棄物を再生していたんだ。わかるか?」
山田
「つまり私のことですか?」
廣井
「そうは言わないけど。本日以降、廃棄物業者の社長を山田君に譲るからしっかり頼むわ」
廣井はそう言ってウインクした。

うそ800 本日のネタバラシ
だいぶ前、某大学に講演会を聞きに行った。講師が持続可能性について熱く語る。黙っていることのできない私は早速質問した。「持続可能性とは何年間くらいを想定しているのですか?」
するとその先生、私を睨みつけて「持続可能性とは永遠です」
巨人の長嶋かよ・・・私はあきれて声も出なかった。

うそ800 本日予想する疑問
いまどき、こんなアホのような考えの26歳がいるかという疑問を持たれるかもしれない。
社会人の26歳にはいないだろう。しかし環境の学部や大学院には珍しくない。そして教える先生方もそういう発想の方がいるのだ。
そんな発想では、環境問題は解決しそうにない。いや、ますます混沌と・・・


名古屋鶏様からお便りを頂きました(2012/8/4)
マザーテレサの有名な言葉に
「愛はまず手近なところから始まります」とか「みんなが玄関の前を掃除すれば世界はキレイになる」というのがあります。環境問題は北極のシロクマより近隣住民へ配慮することの方が最優先だということでしょうか。
この地球は黙っててもあと1億年後には地上に生物の住める環境はなくなるという説があります。石油がいくら残ってても人間が先に死に絶えていたんじゃぁねぇ・・・

鶏さん
周りの遅い私は、鶏さんの意図がつかめない
もちっと平易に説明してください
失礼をしました。
何、「大言壮語する人は足元が見えてない」と言いたいだけです。


マサ(柾)様からお便りを頂きました(2012/8/4)
岡田のセリフの数々に大爆笑させていただきました。
大学の先生も「『企業が持続可能』とあるのですから、次の収支決算後も会社が存続できる状況です。
将来の世代というのは、『次年度の新入社員』で、ニーズは『雇用』の事です。」
くらいぶっちゃけた回答を聞きたいですねw

マサ(柾)様 ありがとうございます
持続可能性という言葉は魔力を持っている呪文のようで、それを聞いた瞬間に普通の判断力を失ってしまうのでしょうか?
ただ将来の世代が次年度の新入社員では2年後に倒産しても持続可能性で・・いや数学的帰納法ではやはり永遠しかないのかな 笑


名古屋鶏様からお便りを頂きました(2012/8/5)
ひとつ思い出しました。
昔、日本の企業の平均寿命は40年と言われてました。しかし、今は時代の変遷が激しく、30年→15年→10年と「持続性」は激減しているとか。アメリカなんか5年とか3年なんてウワサもありますし。
10年1日でメシが食えるのはお役所か先生くらいのモノなのかも知れませんね。

鶏様 おっしゃる意味よくわかります。
その意味で私は一企業の持続可能性というものはありえないと書いたつもりです。アメリカの大手企業はどんどんと世代交代します。昔パンナムなんて会社がありました。GMだって落日ですし、ウェスティングハウスは東芝の子会社、他方マイクロソフト、google、その他の大企業がどんどん出現している。
ここではダイナミックな社会が持続可能性なのだと思うのです。
10年一日で過ごせる役所やガッコの先生が持続可能では絶対にないのです。とカッカすることもないか。


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