ケーススタディ 環境投資

13.02.02
ISOケーススタディシリーズとは

2月初め、とある金曜日の昼過ぎ、山田は廣井から声をかけられた。
廣井
「ちょっと話をしたいんだが・・」
山田は立ち上がり廣井の後を追って打ち合わせコーナーに行く。
廣井
「突然だが不幸ができちゃってさ、おれ来週の月曜日休むわ」
山田
「ご親戚の方ですか?」
廣井
「親戚っちゃ親戚なんだけど、家内の姉の夫の兄にあたる人で、縁は遠いし、あまり付き合いはなかった。だがうちのオヤジの時に向こうは夫婦で来ているんで、葬儀には夫婦で行かないとまずいんだ。田舎ではそういうバランスというか兼ね合いがうるさいからね。
フフフ、近所の人が親戚が亡くなったとき仕事が忙しいと奥さんだけが葬儀に行ったんだ。それから何年もして、その近所の人が亡くなったとき、向こうの奥さんだけが葬儀に来たってのがあったなあ。なにしろ田舎は義理と人情で動いているからね
歳は67とか言ったなあ。まあご本人はとうに定年退職しているわけだし、子供たちも独立していて、経済的にも心理的にもそうダメージはないとは思う。もちろんご家族のご心労は大変だろうが」
山田
「仙台ですか?」
廣井
「俺は仙台だけど、ご本人は仙台じゃなくて山形だ。お葬式は日曜日だけど、その後にいろいろあってさ、月曜日も休むことにした」
山田
「それは大変ですね。なにか月曜日に予定がありましたか?」
廣井
「そうなんだよ。だから声をかけたんだが・・」
山田はいやな予感がした。
廣井
「今、来年度の起業投資の予算の時期だろう。国会と同じだ。
投資額1億未満の計画は事業部で決済するのだが、それ以上のものは社長室で審議・決裁することになっている。10億以上は社長直々だ。そして環境に関する投資計画については、環境保護部も審議に参加することになっている。それが毎週月曜日の午後にある。来週の投資伺いの審議は8件ある。8件とも環境がらみだ。ということで、悪いが俺の代わりに会議に出てくれ」

山田は起業投資の決裁がそういう仕組みであることや、廣井が毎年予算審議に参加していることは知っていた。しかし過去、山田が相談を受けたこともなく果たして、はたして代役が務まるのか心底不安になった。
山田
「環境保護部としての投資に対する方針といいますか、基本的考え方などはあるのでしょうか? それに則って私が発言すればよいような」
廣井
「ない、常識で考えてくれていい。投資効果が期待できないものとか単に見栄だけのようなものには環境保護部として拒否してほしい。公害防止施設の更新については、十分検討して意味のあることには、数字の投資効果よりも重大性・緊急性という観点で意見を述べてほしい。それと地球温暖化などの大義名分はどうでもよいが、省エネとか原発停止後のピーク対策などが優先だね。
おっと、どちらにしても我々に決定権はない。コメントを出すだけだ。
出席者は社長室と担当事業部の関係者だけで、普通は事業部長クラスは出てこない。部長クラスだな。
それと申請してくるのは社内の事業部と工場だけでなく、子会社はもちろんだが、当社の持ち株比率が一定以上、20%以上だったかな、そういうところは法的には子会社ではないが建前はどうあれ、当社に伺い出てくる」

山田は黙って聞いていた。
廣井
「今年申請してきた資料はここにある。8件あるはずだ。休み中に目を通しておいてくれ。おっと電車の中でなくすなよ」
山田はパラパラとめくった。工場から5件、子会社から3件だ。あちこちに廣井のコメントが付記してあったり、マーカーが引いてあったりする。
山田
「私が二日間この資料を見た程度でコメントして良いものでしょうか?」
廣井
「大丈夫、大丈夫。一目見りゃわかるんだから」
廣井は深刻になることはないのだろうか? 山田は苦笑いした。どうも自信がないが、これもしょうがない。

夕方、定時になって、山田は廣井にご旅行にはお気をつけてくださいと言い、投資計画の書類を持って帰った。環境保護部では上長より早く帰ろうと遅く出社しようと、気にされたり気にしたりするような雰囲気はない。フレックスでも定時でも、在社している間しっかり働けばそれで十分だ。



自宅で会社の仕事はしないのが山田の主義だが、今回はしょうがない。 ケーキ 土曜日と日曜日、リビングのソファに横になって書類をながめる。時々妻がコーヒーをいれようかとか、お菓子を食べないかと声をかけてくる。
いつも休日には、フィットネスクラブに行くとか夫婦で美術館めぐりとかしている。なにもせずにずっと家にいては太りそうだ。

環境に関する投資計画は大きく三種類に分けられる。環境施設、つまり排水処理装置などが古くなったものの更新計画や土壌汚染対策など法的にやらざるを得ないもの、省エネ投資や原発停止以降のピーク規制対応など必要に迫られてするもの、最後は太陽光パネル設置など投資効果よりみためのものだ。一番目のものは更新する必要性と見積が妥当かということが検討事項だ。二番目のものは必要性と他の方法に比べて優れているかどうかということ、三番目についてはどんなメリットがあるのかどうかが判断基準となるが、前二者と比較すれば非優先にすべきだと山田の価値観からは思える。



月曜日、あまり自信はないが書類は何度も目を通して内容はだいたい理解したつもりだ。
社長室主催の会議なんて山田のような地位の者はまず行くことはない。社長室長は専務だし、社長室にいる10名ほどのメンバーはみな事業所長の経験者だ。山田は末席に着いたが、居心地が悪かった。
ともかく会議が始まる。さっそく社長室長が発言する。
「本日の審議は8件、15時までには終わりたい。では始めてください」
社長室の担当者といっても元工場長だった方が口を開いた。
「一番目は機器事業部の岩手工場だったな。説明してください」
機器事業部の担当者が立ち上がった。後ろには岩手工場の部長と課長が詰めている。
「原発停止後、電力使用量規制が厳しくなりました。特に夏場のピーク規制が課題です。これはその対応として自家発電を設置して使用量の5%の発電設備を設置する計画です。これによりピークカットを図り、昨年は日中の使用電力を平準化するための緊急対策として早出と残業をしましたが、次年度はしないで済むようにするものです」

社長室のメンバーが手をあげて止めた。
「昨年同様に早出残業をすれば、この投資は不要なのかね?」
「そうです。しかし組合対策もありますし・・近隣への周知とご同意を得るなど・・」
「今年もピーク規制があるのだろうか?」
「定かではありませんが、そのような方向と聞いております」
「確実でないのでは困る。それによく見ると予算の中には自家発などピーク対策もあるが、生産ラインの改造などがいろいろ入っているが、これはなんだろう」

後ろに座っていた岩手工場の部長が立ち上がった。
「すみません、若干説明させていただきます。予算の中には自家発だけでなく、製造ラインの見直しなど効率化・省エネ化を図ることも盛り込んでおりまして、そういったことも合わせて・・」
「うん、それは読んだ。この計画では2憶5千万となっているが、その中には製造ラインの効率化投資の他にも、省エネとかピーク対策ともいえないような施策も混みされているようだ。もう少し計画を純化するように事業部内で検討していただきたい。環境保護部からなにかありますか?」

指名されては発言するしかない。
山田
「昨年、当社のピーク対策は工場単位ではなく、鷽八百グループの東日本所在の事業所全体として対応することを行政に申請しております。今年も規制があれば、同様な対策とする見込みです。
ですから裏返せば岩手工場に自家発を設置しても、グループ全体を考慮すると岩手工場で早出残業がなくなるとも言えません。個々の工場のピーク対策ではなく、全社でどうするか、どうなるかを考えないとなりません。本日の審議においても、他にも自家発設置やエネルギー使用状況の把握システムなどピーク対策の申請があります。当社としてどの工場に設置するのがコスト的に有利なのか、また将来的にどうあるべきかという観点で他と比較検討することがよろしいかと思います」
「なるほど、たしか他の案件でも似たようなものがあったね。どこに自家発を設置しても当社としては同じなら、当社グループ全体で適正配置を考えるということで、他の工場からの申請などをみて考えよう」
「じゃあ、それでいいかな?」
社長室長が終わりという雰囲気でそういった。
それは審議終了ということだった。機器事業部のメンバーは黙って着席した。
山田は思った。これは面白いと・・

次の案件は群馬県にある子会社の地下水汚染浄化である。2000年頃に有機塩素系溶剤の地下水汚染が発覚し、それ以降地下水をポンプでくみ上げて浄化を進めてきた。当初は環境基準の数百倍であったものが、現在10倍前後まで低下してきたものの、環境基準をクリアするには、このままだと今後20年以上かかる見通しである。
ところが2年前の東日本大震災で工場建屋が破損して、今まで建屋を補強して使用してきたが、その根本的な安全対策と生産性向上などを目的に解体新築することと、合わせて上物を撤去した時点で汚染土壌の掘削を行い一挙に汚染浄化をしてしまいたいという。
現行方法ではポンプでくみ上げると言っても、常時帯水層の地下水を汲みあげているわけではない。ポンプを動かすとすぐに溜まっている地下水を全量汲みあげてしまい、時間が経って地下水が溜まったらまた汲みあげて処理しているのが実態という。
考えとしてはおかしくないし、安全上現状のまま継続するわけにはいかないのも事実だ。
しかし、いろいろと検討すべき事項がある。
ひとつは現行方法で継続した場合の浄化見通しは本当に20年かかるのかどうか。
もうひとつは解体後に短期間に浄化することができるのかどうか?
浄化方法も掘削してしまうのが良いのかどうか、オープンな状態にすれば他にも方法は多々考えられる。
あるいは建屋の撤去と地下水汚染対策はするとしても、新規に建物を建てる場所をずらせば地下水汚染対策を急いで短期間にすることもない。ただ敷地の活用から現状のところに立て直したいという。
山田は実施の必要性をコメントすると同時に、もう少し敷地の活用や浄化方法を検討すべきだという発言をした。結果として、汚染浄化の方法を複数検討し比較して再度提出となった。

次は生産技術本部からの申請で、使用電力のピーク対策はグループで行うので、そのための情報収集システムとデータ処理から指示まで自動に行うシステムの構築である。昨年はNTT電話回線でデータを伝送していたのをIP電話にするとか、ソフト的には昨年は情報収集を自動化していたが、その評価や対応の指示は担当者がつきっきりで行っており無駄と指示遅れの問題があったのを改善するという。
社長室の方から、省エネ特にピーク時対策の重要性はわかるが、そのためのシステムとしては過大ではないか、今後もそのような規制が継続するのかという質問があった。

甲府工場からは工場の屋根に太陽光発電を設置したいという申請である。2,000kW規模のものをつけるという。社長室の方から投資効率はあるのかという質問に対して、環境配慮しているというメッセージが重要だという説明であった。
今はどこでも太陽光発電をしていますというのが環境配慮のイメージのようだが、形ばかりでもしょうがない。同じお金をかけるなら、もっと本質的な省エネ機器の導入や生産工程の見直しをすべきだと山田は発言した。

関連会社部が所管している子会社からの焼却炉撤去の申請がある。
投資額は1億よりはるかに少ないが、その会社では工事費用がでないので親会社に支援してほしいという。出席者から、おんぶに抱っこではしょうがないなんて声も聞こえた。それに単純に工事費用を当社が負担すれば利益供与になってしまう。
この代理店は1990年代前半に工場跡地の建屋や焼却炉と煙突ごと居抜きで購入したが、買収してからは焼却炉も煙突も使っていない。その後にダイオキシン特措法ができて撤去もできず、今まで10年もズルズルと来てしまった。東日本大震災では当社グループでも老朽建物がだいぶ損壊して、この会社でも今後の天災を考慮し速やかな撤去をしたい状況である。関連会社としては、解体跡地に事務所兼倉庫を建てて他の関連会社に賃貸する計画だという。
山田は数年前にその会社に監査に行っており、状況を知っていた。それで建物、煙突の劣化が進んでおり、地震対策として早急な措置が必要であるとコメントした。
山田の発言の効果かどうか、資金計画は別途検討することとして、その解体計画は了承された。関連会社のメンバーは頭を下げて着席。

九州工場からは排水処理施設が設置後20数年経過しており、老朽化が激しく、パッチを充てるような修理ではなく新規に更新したいという申請である。メッキや塗装の今後の見込みなどについて説明があり社長室は了承した。
会議の初めに社長室長が言ったように15時前には終了した。山田はオブザーバーであまり深刻ではなかったが、起業計画申請部門は予算が通ればハッピー、通らないで自部門に戻れば針のむしろだろう。
山田が環境保護部に戻ると、岩手工場の部長が山田を追いかけるようにやって来た。
「山田課長、今日は参りましたよ。岩手工場はこのところ投資がされてなくて、今回は自家発などピーク対策という錦の御旗で、今まで金をかけていないところをいろいろと改善を図ろうとしたんですがね。山田課長のご発言でたいぶダメージを受けてしまいました」

山田
苦笑いしているところをみると、そんなに恨みはないようだ。
「だって私が発言しなくても、ちょっと考えれば誰だってわかりますよ。私が発言しないと私の立場も悪くなってしまいます。
私も過去に真意を隠して予算申請をしたことは多々ありますが、嘘をつくならうまい嘘をつかないといけません。おたくの説明の二つ後に、生産技術本部から全社のエネルギー使用状況を把握する仕組みの構築提案がありましたが、それを聞けば岩手工場に自家発がなければならないということがおかしいと思うでしょう」
「そりゃそうですがね、私どもは自分たちが申請した案件しか知らないわけで・・
あれは、ちょっとまずかったですねえ・・・アハハハハ」

この部長もそんな悪い人ではないようだ。
そのとき関連会社部の担当者がやってきた。担当者といっても工場で部長をしていた人だ。
「今回の関連会社の煙突撤去は、山田さんの援護でなんとか予算が付きそうです。ありがとうございます」
山田
「何をおっしゃいますか、私は東日本大震災が起きる前に、あの会社を環境監査で訪問したことがありますが、何とかしなければならないと感じていました。監査報告書にもその旨記載していたはずですが」
「いやあの会議では発言する人などまずいません。社長室がかなりの方向を決めて臨んできますので、変に発言して恨まれるのが嫌でしょう」
山田はそういう会議とは知らなかった。今日は廣井の代理で出ただけで、そんな事前情報はなかった。
「いやそうなんですよね。昨年も私は計画の説明に参加しましたが、説明者と社長室の方以外発言する人なんてまずなかったように記憶しています」
山田
「いやあ、これはまずかったなあ。今日はうちの廣井部長に不幸があってお休みなんですよ。それで私が代理に出たんですが、後が怖いですねえ」

山田は笑いながら言う。とはいえ山田は上昇志向はないから気は楽だ。
「今日はオブザーバーとして関係する環境、生産技術、財務などが出席していましたが、発言したのは山田さんだけでしたね。みなさん触らぬ神にたたりなしですから」
「それはともかく、甲府工場から太陽光パネル設置の申請がありましたが、太陽光発電はどう評価するべきなんでしょうか?」
「子会社でも太陽光発電をぜひつけたいというところは多いですね」
山田
「どういう理由で設置したいのでしょうか?」
「やはりブランドと言っては大げさかもしれませんが、周りに当社は環境配慮していると大声で言えるということがあるでしょうね」
山田
「環境配慮というなら、電気についてでも太陽光以外にグリーン電力の購入もあるでしょうし・・」
「ダメダメ、グリーン電力証書なんて知っている人いませんよ。そんなもの額に飾っておくよりも、ビルの壁面に太陽光パネルがついているとアッピールできますからね」
山田
「そうそう、屋根に付けた方が角度からいって効率が良いのに、壁面に付けている会社が多いですね」
「そうですよ、屋根に付けても道路を歩く人には見えません。壁にあれば周りから良く見えます」
「しかし壁に付けても太陽光線はあまりあたりませんよね?
「直射日光でなければねえ、発電する電気は屋根と壁では一桁どころか二桁違うかもしれませんね」
「そうしますと太陽光パネルは飾りですか?」
「そういうことでしょうねえ。まして東側の壁なんかでしたら朝日をあびたときだけしか発電しないでしょう。まあ日中発電量がゼロということはないでしょうけど、微々たるものでしょうね」
山田
「私は総武線で通勤しているのですが、南側の窓からながめていると太陽光パネルを北側の壁に付けている会社があります。ありゃ総武線の乗客に見せるために取り付けているのでしょうか?」

もう通勤しなくなって8か月も過ぎたのでどこだか細かいことは忘れてしまったが、錦糸町よりも千葉より、平井か亀戸のあたりで総武線の南側に見えた。その会社の人は私を恨んではいけない。

「アハハハハ、それを見た人はどう思うのだろうか? 環境配慮している会社と思うよりも、単に見栄をはっていると思うのか、太陽光発電の知識もないと思うのか」
山田
「パネルを取り付けるのは業者ですから知識がないということはないでしょうね」
「ところで太陽光パネルを付けると、どれくらい発電するのですか?
オフィスなら使用電力の半分以上はまかなえるのでしょうか?」
山田
「それは太陽光パネルの大きさ次第ですが。通常太陽のエネルギーは1メートル四方で1000Wと言われます。もちろんそれは太陽光のエネルギーです。発電効率が20%程度というところでしょう。
オフィスの消費電力は一人一日1.65kWhというデータを見たことがありますが・・・」
「1メートル四方で200Wですか。
オフィスの一人当たり電力が1600割る8時間とすると200Wですから、ちょうど一人分になるということでしょうか?」
「いや、そうは簡単ではありません。まず角度が関係します。太陽に垂直にパネルがあれば200Wでしょうけど、普通パネルは固定されていますので、一日のうち垂直になるのは短時間でしょう。それ以外の時間は200Wにコサインをかけた数値、せいぜいが半分以下でしょう。
更に晴天ばかりとは限りません。雲があればさがるし、雨が降ればもう期待できないですね」
山田
「オフィスであってもお昼前後だけ使用電力の一部を補える程度でしょうねえ。朝夕は微々たるもの、夕方以降はゼロ。
ところで、岩手工場では太陽光発電を導入する考えはないのですか?」
「山田さん、冗談を言わないでくださいよ。本社に申請して仮に予算がおりたとしても、その投資した分を回収しなければならないのは私たちですよ。普通、ものにもよりますが3年とか5年で回収しなければなりませんが・・太陽光パネルの場合は考えるまでありませんね」
「でも世の中には太陽光発電という事業もあるでしょう」
「あれは買い上げてもらうという前提ですよね。太陽光も風力もですが、普通の電気よりも高く買ってもらえるからなんとかなっているわけで。それは日本だけでなくドイツでもデンマークでも同じですよ。我々は工場ですから売るほど発電できるわけでなく、自家消費だけですから、真水で回収できるかどうかということになります」
「家庭の太陽光発電の電気を売るというのもその類ですか?」
山田
「そうです。高く買ってもらえるということは税金を投入しているわけで、全家庭が太陽光発電をしたらどうなるかは、考えるまでもありません。ご存じのように以前、太陽光パネル設置に補助金を出していたのが終わった途端に家庭用パネルの売れ行きが止まりました。そしてまた補助金再開したら設置する家が出てきたということは、真に太陽光発電がペイするということではなく、あからさまに言えば補助金狙いです。」
「まあ、太陽光発電なんて夢物語はともかくとして、我々は作戦を建て直しだ。生産ラインの改善は別として、自家発は入れた方が良いのかどうか・・」
山田
「安倍首相が原発ゼロを見直すと発言していましたね」
「原発をなくせというのは簡単というか楽だけど、その時どういう国家を作るかというプランまでいかなくてもビジョンを示さないと詐欺師でしかないね」
「原発ゼロとは正義に見えるけど、実際は自分さえよければという発想ですよね。坂本龍一なんてその最たるものですよ」
山田
「いい子ぶるのは簡単ですが、大人がいい子ぶってもしょうがありませんね」
「まったくだ。悪人になっても恨まれても正しいことを語らねば」
山田
「じゃあ今日、私は悪人になってよかったということですか?」
「社長室から睨まれるかもしれませんよ」
山田
「私は部長になることもないでしょうから気にしませんよ」


二人が去った後、山田はコピー室に依頼していたものを引き取りに行った。いまどき自分でコピーを取らないような管理職はいないだろう。いや取締役クラスにもいないと思う。それに環境保護部には庶務担当はいないし、部長であろうと課長であろうとなんでもしなければならない。
厚さ20センチほどの印刷物を持っての帰り道、エレベーターで先ほどの社長室の方と一緒になった。
「君は山田君というのか?」
山田
「ハイ、今日は廣井部長が休みをいただきましたので私が代理で出席しました」
「会議には関係者が出るが、発言する人はめったにない。いつもは廣井君が発言してくれるのだが、今日はいないようなので誰もしゃべらないのかと思っていたよ。君が結構発言して活性化して良かったと専務がおっしゃっていた。また顔を出してくれたまえ」
山田
「余計な口出しをしたかと思いました」
「社内の会議なんだから気を使うことはないよ」
山田は睨まれてはいないようだと少し安心した。

うそ800 本日の思い出
会社で予算を取るということはけっこう骨だ。20万程度でも必要な理由を書かねばならない。ところがこの申請も会社によって相当違うらしい。100万1センチなんて言って、100万円の機械を買うには申請書類を1センチもそろえなければならない会社もあるし、1ページで済む会社もある。
20年も前のことだが、当時の同僚が50万くらいの測定器を買うのにえらく苦労して、結局は予算がもらえて買ったものの、その後、「あれだけ苦労するなら買わないで苦労した方が楽だ」と語っていた。


名古屋鶏様からお便りを頂きました(2013/2/2)
予算を通すのはホントに大変なものです。特に会議形式になるとケチをつけることで存在意義を出そうとする輩が・・・
ピークカット対策の自家発は鶏も感心しませんね。アレは電力の系統連系の問題もあって電力事業者がいい顔をしませんし、所詮は機械ですからトラブルとの戦いもあります。エンジンはメンテが大変ですからねぇ。
そ〜言えば、常用発電機と非常用発電機の区別もつかない何処ぞのアホが「埋蔵電力」などという戯言にダマされて騒いでましたっけ。

鶏様 毎度!
何しろ国会でも会社でも予算がすべて
 お足がなければ歩けません
昨年は自家発が大流行しました、今年はどうなるのでしょうか?
といってもあっしにはモウカンケーネエ
 埋蔵電力よりも埋蔵金がほしい


ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(2013/2/3)
太陽電池パネル風ボードを制作・販売したら、けっこう売れると思うんですが。
あるいは壊れた太陽電池パネルを修理しないでそのまま「故障品」として再販するとか。

おおたいがぁ様
それってまさしくISO認証すれば良いという発想ですね
スバラシイ
まあ、形だけなら動くパネルを買うよりは安く、配線する手間もないので非常にコストパフォーマンスが良いでしょう 笑

柏原様からお便りを頂きました(2013.02.04)
ISO形骸化予防支援システム
ISO形骸化に関する問題化で悩んでいます。
特に事業所が分散している場合です。
そこで、業務ソフトウェアとしてISO形骸化予防支援システムの事を考え始めています。そのようなことを考えたことがありますか?

柏原様 お便りありがとうございます。
なんと申しましょうか、ISO形骸化ということも、その予防システムということも、私の理解を越えます。
と申しますのは、ISOのために何かをするという発想が浮かんできません。
例えば、目的目標(QMSなら目標)というものがISOのために存在するとは思えません。そういったものは会社の年度計画とか起業計画にあるわけで、その実施状況や進捗フォローは業務本来で行われるはずで、形骸化する以前に、実施しなかったり達成しなかったりすれば、それは職制を通じて大きな問題となるはずです。
あるいは監査でも監査部との関連もあるでしょうし、その報告は経営層にいきますから、実施されていないとか内容が不備であるなどであれば即重大問題になると思います。
というわけで、私の発想では形骸化する暇がありません。
またエネルギー管理とか廃棄物のマニフェスト管理というものはISOとは無縁で、遵法上必須条件ですから、これもまた形骸化したら即問題化すると思います。
よってISOのためにソフトなり管理方法を考えるという発想が浮かびません。
もちろん廃棄物の管理、エネルギー管理の精度向上のために電子化とかソフトを導入することは改善でありますが、ISOとは無関係でしょう。もちろん形骸化とも関係がありません。
そういうことで回答になりましたでしょうか?



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