認証返上

13.03.11
たまたまユーコープがISO14001の認証を返上したということを聞いた。
毎年、相当数の認証返上があるのだろうから、今更流通業者が1社くらい認証返上したところで驚くことはない。しかし認証返上が加速しているなあという感じは否めない。というのはユーコープがISO14001認証して環境経営を推進していくなんていう広報をみたのが昨日のように思えるからだ。
といいつつ認証辞退の報告をみると、正確には昨日ではなく8年も経っていた。
といいつつ認証辞退
ユーコープは客観的な評価を担保するため、ISO14001外部認証を2007年に取得した。その後6年間の運用で、マネジメントシステムの運用は定着し、認証取得時の目的は達成したとして、認証有効期限2013年3月1日をもって、認証を返上した。今後は「ISO14001に適合したシステムの維持」に留まることなく、IMSがマネジメントとして、より有効に機能するように改善を進めていくことが重要と考えている。
(資料より)

2002 年3 月に発生した鶏肉偽装事件がきっかけとなり、品質管理強化を目的として2004 年、ISO9001 を認証取得した。ISO の活動は、その後、狭義の品質管理から業務標準化や継続的改善(PDCA)を進める日常のマネジメントの仕組みとして位置づけた。コープネットへの機能集中と統一運営を前進させていくうえでも、業務標準化や共通のルールづくりのツールとして生かされた。
2006 年には、効率的なマネジメントシステムの確立をめざし、すでに認証取得していたISO14001等を、ISO9001 に統合した総合マネジメント規程を制定し運用を開始した。その後、2010 年、マネジメントシステムは一定の水準に達したことからISO9001、14001 の認証を返上し、自主運営に切りかえた。
(ユーコープ第21回通常総会資料より)

どうも運用とかマネジメントシステムという言葉の意味を理解しているとは思えず、国語的には意味不明な文章ではある。とりあえずここではそれには論評しない。

ISO認証するということは、どんな組織でも当初は不完全なところを補完しようと頑張るだろうから、それ以前より管理水準が向上することは間違いないだろう。しかしレベルは永遠に向上するわけではなく、改善手法や改善ツールによる限界がある。
正確に言えば、有効なツールを正しく実行したときだけだが
ISO14001というツールを使えばISO規格の限界で飽和するわけで、その限界に達するのがまじめに活動すればせいぜい1年か2年でサチるだろうと思える。もちろんまじめにしなければ形骸化するだけだ。
環境側面を点数で評価するとか、有益な側面に頭を絞るようなことは、形骸化以前のお遊びだ。
だから認証してから長年延々と同じことを続けているのは無為というか無意味というべきか。ユーコープが8年で認証返上を判断したのはその期間が長いか短いかはともかく、英断であろうと私は考える。

ゼロシーリングという言葉がある。次年度予算が前例通りという意味だ。しかしそれはおかしいよね。行政の予算ならともかく、営利企業の活動であればそんな甘いことではなく、過去が適正かどうか謙虚に見直さねばならない。つまりゼロベースだ。「昨年こうでしたから今年も」ではなく、「昨年こうだったがそれは正しいか」という検証なくして事業の存続はない。
「ISO認証していますから特段問題なければ今年も」ではなく、常に「ISO認証しているがそれは妥当か継続すべきか」を考えるべきだ。
どの会社でもISO認証するとき、本当に正しいかどうかはともかくメリットとデメリットをリストアップして総合的に得失を考えて判断しているだろう。そういった判断に使用した記録を残して、担当者も経営者も免罪されたと考えていることは間違いない。

認証のメリット認証のデメリット

  • 取引上、有利になる
  • 国土交通省入札の際加算点が得られる。
  • 会社の手順を明確にできる
  • 会社の改革ができる

  • 認証の費用が掛かる
  • 文書・記録が増えて仕事が面倒になる
  • 改善ができるとは限らない

ネットで見つけた事例ですから、私がこのように考えているわけではありません。
なぜ自分の考えを書かないのかと言われると、面倒だからです キリッ

だけど、どんな判断でも間違いがあるかもしれないし、状況が変われば判断は変わる。変わらねばならない。それならば予算策定時には常に、過去が妥当かどうかを再検証するのは間違いではない。毎年、ISO認証の効果、費用を算出し、認証継続か返上を判断することは必要なことだ。
これは言いがかりではない。ISO規格を正しく運用しようとすると、PDCAのサイクルにおいて、必ず認証の効果のチェックとアクションをしなければならないことになる。

聞くところによるとユーコープの認証費用は年1000万だったとのこと。ユーコープの組合員は神奈川、静岡、山梨の三県合計で180万人という、ものすごい人数だ。認証費用が1000万としても一人当たり5円にしかつかない。だけど一人当たり5円ならいいというわけではない。その1000万円を食の安全や品質管理に使ってもらうことを組合員は望むのではないだろうか。おなじ 1000万でも使い方によって組合員に貢献することもあるだろうし、ムダ金に終わることもある。ぜひともその1000万を生かして使ってほしい。

しかしユーコープは認証を返上したものの、以降も従来認証を受けていた認証機関に二者監査を依頼すると広報にある。二者監査と認証の違いは、審査登録書がいらないから認定機関に払う費用が安くなるということなのか、あるいはIAF基準による審査工数をかけずに簡易に行うことによる費用削減をメリットと考えているのだろうか?
どうもそこへんがよくわからない。
どうせなら認証機関に二者監査など頼まずに、自信を持ってサヨウナラするべきではないのだろうか?
ネバゼレス、毎年認証の見直しをしない組織がごまんとあるのだから、ユーコープの英断を称えたい。

ところで私は千葉に住んでおり、我が家はユーコープではなく、ちばコープの組合員なのだが、こちらはISO14001を認証していないようだ。しかしISO認証などしていなくても、少なくても私はなにも困らない。食の安全に不安を感じていないし、環境配慮が足りないなんて思ってもみない。
ということは元々ISO14001認証なんて意味がないのではないか?
ユーコープだって、認証しなくても良かっただろう。ということはユーコープを英断と称えることはなく、今まで認証していたことを無駄だというべきかもしれない。
認証費用が年1000万として8年で8000万、これだけあれば倉庫の省エネ、配送車両の低公害化、情報システムの見直しなどそうとうなことができただろう。ISO認証は壮大な無駄というべきかもしれない。
まあ、無駄であっても腐れ縁を切れない企業がたくさんあるのだから、やはりユーコープの認証返上を決断と称える価値はあるだろう。

うそ800 本日の願い
どなたかISO認証返上した企業の、認証前、認証中、返上後のコンプライアンスとパフォーマンスの推移を調査研究してほしい。ドクターは無理だろうが、マスターは十分だ。

ところでその調査結果であるが、どうなるのだろう?
組み合わせと調査結果を予想してみた。
 ○:コンプライアンスとパフォーマンス良好
 ×:コンプライアンスとパフォーマンス不良
ケ−ス認証前認証中返上後予想
割合
コメント
60%現実にはこのケースが一番多いのではないだろうか
もちろん○でなくて△程度かもしれないが、認証の効果がまったくないという可能性は高い
×0%ありえないだろう
もしこうなることを予想した人がいれば現実を知らないのだ
×3%よほどひどい認証機関でないとこうはなるまい
いや審査員の質が悪いとこうなる可能性はある
××7%ひどい認証機関にかき回されると後遺症が残りこうなることが考えられる
ケース3より発生する可能性は高い
×7%これが理想だろうが、理想は存在しないことになっている
だけどこれを主張する人は多いだろう
××0%ありえない!
認証機関はそれほど力量はない
××3%まあ、ないとは思うけど、悪い認証機関を止めて、真に有効なEMSになればこうなることもありえる
×××20%オママゴトISOだとこういう事態は現実にある
規格にオウム返しの場合などが考えられる


名古屋鶏様からお便りを頂きました(2013/3/11)
昔、親が勤めていた会社がQCを「発展的解消」したという話を聞いたことがあります。つまり「戦略的撤退」の大本営発表です。
ユーコープの「一定水準に達した」というのも、それと似た匂いを感じます。ぶっちゃけ、改善のネタに行き詰まったんでしょうね。ホンネのところは。何しろアイソスに特集記事が出ていた時点で中身はアレでしたし。「ああ、行き詰まってるなぁ」と。それで御守りが出来なくなったんじゃないでしょうか。
今の生協はあまりに会員が増えすぎて品物を揃えるのが大変と聞きます。認証なんてまったく求めてませんから、どうぞいい農家や漁協の開拓に力を注いで欲しいものだと、いち生協ユーザーとして切に願います。

鶏様 毎度ありがとうございます
アイソスの特集記事ってのを読みませんでした(忘れたの鴨)
たしかにお守りするだけでも大金がかかりますからね、今のご時世には合わないでしょうねえ(遠い目)

名古屋鶏様からお便りを頂きました(2013/3/11)
鶏もウロ覚えですが、確か改善のネタを出すときに自分たちの見解だけで決めてたような記事でした。生協の顧客は決してサイレントではなく割りとサイレンなマジョリティですから、クレームや要望が山のように集まっているハズなのに、何故それをベースにしないのか?と不思議に思った記憶があります。
もっとも、鶏のところの生協も「顧客の声(要望)」に「んな事を言われても出来ねぇことは出来ねぇんだ!」と「公式に文書で」回答する中々とアレな根性の持ち主ですけどねw

生協も今は競争が激しくて大変なようですね
私のところには「コープ〇〇」ってのが2社、ほかにも類似の会社があり、マンションには毎日保冷トラックが3台入ってます
それにしては顧客満足が・・・おや殺し屋が来たようだww


initial A様からお便りを頂きました(2013.03.13)
認証返上について
こんにちわ、事務局3ヶ月目の者です。
事務局の仕事についてまだ日が浅いですが、存在意義についてすでに疑問が大きくなってきています。認証返上について、真剣に考えています。いや、その前に認証機関を替えてみて、違いを比べてみたいとも思っています。
どのトピックスだったか忘れましたが、維持審査を年2回受けているところは稀だろうとお書きになっておられましたが、その稀な状態に私のところは該当します。
なぜ?と聞いてみたところ、審査工数が2日間連続よりも1日を2回に分けた方が現場の負担が少ないから、、、とのこと。また、2回審査があったほうが現場の雰囲気が締まる、、、とか、すでに目的と手段が食い違っているような感じです。 とりあえず与えられた仕事を現在はするのみですが、近い将来、大きく変えてみたいと思っています。
審査が年2回って、それほど稀なのでしょうか?(確かに他ではあまり聞かないですけど)
よろしければ、世間一般の状況を教えていただければ幸いです。

initial A様 毎度ありがとうございます。
まずISO事務局というものは不要と思います。しかし、ISO事務局といっても、ISO対応だけでなく環境全般とか品質全般を管理している会社もありますから、名称にこだわらずその実務が必然性があるかどうか確認が必要です。
実をいいまして私も数年間ISO推進グループという部署・・・といっても私一人でしたが・・・に所属していました。特段ISOの仕事はしていませんでしたが、名称をそうしないと部署を一つ作れない、つまり課長を一人置けないという条件から名前と内容は異なっていました。まあいろいろありますから名前にはこだわらないでください。
次に、認証が必要かどうかは経営判断です。良くある話ですが、審査員に出向させるためにISO認証するというのもありますし、それを不純などと言ってはいけません。世の中はそういうものです。だから真に認証が必要なのかどうかは担当者が判断することではなく経営者が決めることです。しかしもちろん費用や内部の負担、メリット、デメリットを正しく分りやすく経営者に示すことは担当者のお仕事です。
第三に、私の知るかぎり年に2回の審査を受けているところはありません。私は10くらいの認証機関、100くらいの事業所について見聞きしていますが、年2回を選択しているところは寡聞にして知りません。
もちろんISO9001は4万、ISO14001は2万くらいありますから全体的にどうかはわかりません。非常にまれだとは思います。



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