審査員物語4 挨拶回り

14.11.10
審査員物語とは

本社に来て三日目だ。もうそろそろ本社の知り合いに挨拶しておかないと、後々マズイなと思う。まだ自分の行く末がはっきりしていない今、その話をするのが嫌だ。だがこれも渡世の義理と自分を説得した。
三木
私が三木である
三木の知り合いのほとんどは所属していた事業本部の者だが、その他にも今までいくつかの支社で働いていた時知り合った他の事業本部の営業マンもいる。イントラネットで各部門の所在を調べて事務所を出た。
元上司、同僚、知り合いといった面々に、異動したことや今の状況を説明して、また情報収集をする。
本音は、どこか良い出向先はありませんかと聞きたいところだが、認証機関への出向予定として営業本部に来たばかりだから露骨には言えない。人事異動の掲示には営業本部としか書いてないから、三木がISO審査員になる予定だと聞いてみな怪訝な顔をする。まさか三木を能なしとは思っていないだろうが、内心何を考えているのだろう。三木の話を聞いて、自分もそんなことになるのかもしれないと不安になったのだろうか。
午前中、社内各所を歩いて関係者への挨拶を終えて昼前に自席に戻る。机の上にメモがある。
注:
2002年頃は社内の電話はまだ有線の固定電話だった。ビル内専用のPHSになったのは2004年頃だろうか。

三木部長様
環境管理部の氷川様からお電話がありました
電話を頂きたいとのこと
電話番号 XXXXXX
10時半 美奈子受け


氷川という名前を見て三木はピンときた。15年ほど前、三木が工場の営業部門にいたとき製造管理部門にいた同期の奴に違いない。入社した時は面識がなかったが、工場で知り合い同期ということが分かった。
氷川
私が氷川です
どうせ二度と登場し
ないんだろうなあ
お互いまだ若さもあり経験も積んできてバリバリ仕事をしていた時期で、酒を飲んではいろいろ語り合ったものだ。
あいつは本社に異動していたのか?
イントラネットで環境管理部の組織を調べる。環境管理部には、課が三つある。広報担当、工場管理担当そして製品担当となっている。氷川という名前を探すと、工場管理課のところに載っているが役職は書いてない。オイオイ50過ぎの今まで平だったのかと三木はいささか驚いた。
電話をする。すぐに相手が出た。
三木
「営業本部の三木と申します。氷川さんをお願いしたいのですが」
氷川
「おれだよ、三木君。本社に来たってね。それで君といろいろと話をしたいなって思ってね。忙しくないなら遊びに来なよ」
三木
「おお、ぜひともご教示をいただきたいと思っていることがあるんだ」
氷川
「うーん、今すぐはあれだから、いや別に忙しいわけじゃない。まもなくお昼だろう。話が弾むだろうから昼飯を食ってから会おう。ええっと、ロビーを知ってるね。あそこで1時に」
三木
「了解、会うのを楽しみにしているよ」



午後一に、三木は一昨日、美奈子と一緒にコーヒーを飲んだロビーにやって来た。
たくさんあるテーブルのあちこちに人が座っているロビーを見渡すと、窓際に座っている男が片手をあげた。多少歳はいっているが氷川に間違いない。
三木は氷川の向かい側に座る。
三木
「いやあ、久しぶりだねえ〜」
氷川
「お互いに歳をとったなあ〜」
ウェーターがやって来たので、氷川はコーヒーを二つ頼んだ。
三木
「おいおい、こちらにきたとき、ロビーで飲み物を頼むのは外来者と一緒のときだけって教えられたぞ」
氷川
「アハハハハ、つまりそれはルールを守らない人が多いってことだろう。
それにさ、自前で飲む分には構わないんだぜ。おっと俺は部門に付けておくけど」
三木
「早速だけど、俺の話を聞いてくれるか?」
氷川
「いいとも、実は俺もいろいろと話があるんだ」
三木
「まず俺の話を聞いてほしい」
三木は本社に異動してきたものの、ISO審査員になる教育計画がなにもなく、途方に暮れていること、氷川が環境部門にいるなら環境管理部に教育を依頼できないかなどということをしばし話した。
氷川
「実はさ、俺が話そうとしていたのも、そのことなんだよ。まあ、一般論として聞いてほしいんだが、世の中、論理で動いているわけじゃない。感情とか面子とか行きがかりってことの方が多いってことはわかるよな、お互いに子供じゃないんだから」
三木はうなずいた。
氷川
「今までISO14001の審査員に誰を出向させるかは環境管理部が決めていた。別にそういうことについてルールがあるわけじゃなくて、これまたなりゆきで過去数年そうだった。そして人選していたのは部長とか課長でなく、工場管理課の一担当者だったわけだ。言っとくけど俺じゃないよ、アハハハハ
本社といってもいろいろあるから一概には言えないけど、環境管理部というのは一人一人が一国一城の主でさ、与えられた仕事を全権でやっている。工場管理課には数人いるけど、公害担当つまり俺だ、その他に廃棄物担当、省エネ担当などに分かれていて、それぞれ自分の仕事に関してすべてを取り仕切っている。
ええと他の部門を例にとると、営業部長は何をどれくらい売ると決めて指示したり、受注可否の伺いがあれば決裁するだろう。ウチはそういう管理ではなく、部長はみんなしっかりやってくれというだけだな。仕事が細分化され専門化されているから、細かいことは担当している者以外は分らない。もちろん各担当が悪いことをするわけではない。成果をだすためには相当な裁量を与えられているわけだ。そして担当者が工場を動かすためには、ムチも必要だし飴も持たなくてはならない。
三木君は今までISO審査員なんて聞いたこともなかっただろう。だけど工場にいるとISO9001とかISO14001はすごく身近なもので、毎年審査に来る審査員を見ていると、工場の担当者や環境課長は、いつかは審査員になりたいなんて思うものさ。
だいたいストーリーが見えてきただろう。要するにその担当者、奴はISO14001担当なんだがね、そいつがある工場の環境課長に今年ISO審査員に出向させてやるって話をしていたわけだ。ところが三木がよ、出向するという話になってその話はポシャって担当者の面目丸つぶれ。更に今年以降、出向者の決定権を人事に持って行かれちまったわけだ。ご本人としては面白くないし、またこれから飴が使えなくなっちまったわけだ。
そんなときに人事の担当者が三木の教育をしてほしいと、ウチのその担当者に話を持ってきたのだから、できませんと応えたってわけだ。人事や営業本部の方はそれを聞いて、ヒェーって驚いたかもしれないが、ウチの部長はまったく問題と思っていない。いやそれどころかそんないきさつに気がついてさえいないよ」
三木
「なるほど、」
氷川
「部長や課長になれば、自分のことだけでなく会社全体のことを考えるのは当然で、営業から出向者を出すならそれに協力するのは当たり前だと考える。とはいえ今時点、部長は人事部や営業本部から協力を要請されたと認識してないということだな」
三木
「すると改めて営業本部なり人事部から研修の依頼をすれば、いいということだろうか?」
氷川
「うーん、ちょっとその辺はなんとも」
三木
「なにか難しいことでもあるのかい?」
氷川
「今まで工場の環境課長を10人以上ISO14001の審査員に出向させてきた。そのとき出向する前にウチでひと月かふた月研修をしたんだ。教育をしたのは例の担当者だった。
でもって、出向した人たちがどうだったかというと、ほとんど全員が力不足で使えないと認証機関からイヤミを言われたよ。まあその後認証機関で研修を受けてなんとか審査員になったわけだが、勤まらなくて辞めたり出向から戻ってきた人も何人もいる。元々の人のレベルもあるのだろうが・・
つまりなんだな、三木君がウチの研修を受けることができたとしても、あまりためにならないんじゃないかって思う。おっと、断っておくがおれはそういった仕事とは関係ないんだ」
三木
「なるほど必要な教育訓練は簡単ではないということか。それと氷川君の話から推察するに、審査員になるには適性というものが必要なようだね。
ところで認証機関はたくさんあると聞いたけど・・」
氷川
「うん、50社くらいあるらしいね。だがウチから出向した人のほんとんどは、ナガスネってところだ。知ってるだろうけど。
一人二人ツクヨミという認証機関にも出向している。ただこちらはご本人が向うと話をつけて来て、会社が出向扱いしただけだな」
三木
「話は変わるけど、氷川君は課長とか部長にならなかったの?」
氷川
「うーん、俺はあまりそういうことに欲はないなあ。先ほども言ったけど、本社の担当者というものは紙に書かれた権限はないけど、実質的に工場や関連会社を動かすことができる。俺は公害防止担当なんだが、事故が起きたりすると現地で対応を指揮したり、その後の再発防止策を立案してグループ企業に徹底したりする。すごくやりがいを感じるよ。ハンコ押しになるよりも、日々そういう事件に携わっているのが面白いと思っている。
おっと、課長になれなかった負け惜しみじゃないよ。課長にならないかって話は何度かあったが、断ってきた。だって考えてみろ、本社の管理部門の課長はラインの部長と同じ。もし俺が課長になっていたら今年は三木と同じくどっかに飛ばされてオシマイだよ。アハハハハ
担当者なら60歳までこの仕事を続けられる。定年になっても3・4年は嘱託で同じ仕事ができる。役職手当なんてどうでもいい。仕事の面白さ、やりがいには替えられないよ。少し偉くなって関連会社の役員になっても62・3までだろう。この仕事の方が面白いじゃないか」
三木
「氷川君はISO審査員になりたいとは考えたことはないのかい?」
氷川はびっくりしたように三木を見た。
氷川
「お前なあ〜、環境管理部で審査員になりたいって思っているのはいないぞ。何度も言うけど、本社にいると工場やグループ企業を動かしているって実感できるんだ。新しい法規制に対応するために何か手を打たなければならないとしよう。自分が企画してもちろん上長の決裁は受けるが、そのプランに何億も投資したり、何十人の人が動いていくという、このなんというかな、拡張自我みたいな感じでさ、もちろん私利私欲じゃないよ、この大きな仕事ができるって職務を手放す気はないね。
工場で部長の仕事をしているよりも、ここで担当者として仕事をしている方がはるかに大きなことができる。そしてここでも課長になっちまうと、とたんにハンコ押しに堕ちてしまうんだよな。
課長や部長を軍隊になぞらえると、小隊長ってことはないだろうけど中隊長か大隊長というところだろう。それに対して我々本社の管理部門は、司令部の参謀だよ。自分が作戦を企画して実行を命令するんだ。それで全軍が動く。単なる作業者にすぎないISO審査員になろうなんて思ってもみないよ」
氷川の言葉は私の本音である。
企業の本社にいて、コーポレートの環境活動を担当していると、ものすごい大きなことができる。グループ企業の場合は直接ではないが関連会社まで影響を与えることができる。だからそういう仕事をしている者は、引退したら審査員になろうかと思うことはあっても、現職を捨ててISO審査員になりたいとはまず考えない。もちろん、本社にいた人が工場とか他部門に異動を内示されると、それよりもと審査員になることは多い。
他方、工場の環境担当者あるいは環境課長クラスで、ISO審査で審査員に痛めつけられている人であれば「審査員になりたい!」と考える人もいるだろう。実際私も田舎の工場にいたときはそうだった。まあ人生いろいろである。
三木は氷川の話を聞いてなるほどと思う。そしてISO審査員はあまり高度な仕事ではないように感じた。
三木
「いろいろお話を聞かせてくれてありがとう。ええと、俺がこれから勉強する計画を立てたら、それについて氷川君からアドバイスがもらえるかな」
氷川
「いいとも。三木君も半年や一年ここにいるのだろう。机上の勉強だけでなく、工場のISO審査や当社の環境監査の見学もしなくちゃならないと思う。そういうことは便宜を図るよ」
三木
「ありがとう。計画を立てたらメールで送る。アドバイスをしてほしい」



三木は自席に戻った。氷川の話を思い出し、いろいろ考える。
環境管理部といっても教育の専門家じゃないから、ISO審査員になるための研修をする部門としては不適当なのかもしれない。教師には知識も必要だが、教師としての能力も重要だ。
とりあえずISO審査員以外になるという逃げは考えないとしてだ、ISO審査員になるための要件を決め、それを習得するための計画を立てなければならない。そしてその計画の中で必要なら外部機関の受講をしたり、あるいは自宅で資格の受験勉強をするなど展開しなければならない。
ただ今日の話から推察すると、氷川もISOについては詳しくもないようだ。となるとISO審査員になるための相談をするには不適かもしれない。
ふと三木の頭に六角が言った鬼軍曹のことが浮かんだ。鬼軍曹に相談するのが手っ取り早いだろうという気がする。しかし素戔嗚電子となるとウチとビジネスでは競合関係にある。赤の他人である三木のために相談に乗ってくれるだろうか?
そんなことを考えると頭の中が堂々巡りになって悶悶とする。三木は少し気分転換をしようと思った。
ノートを広げる。パラパラとめくって要調査項目とか疑問点などを斜め読みしていく。やはり基本的なことを理解していないことが問題だ。鬼軍曹に会うにしても話ができる程度の知識がなければどうしようもないと思う。
ISO審査員研修をしている機関では、初心者のためのISOの講習もいろいろと開催している。ひとつそんなものを受講してみようと三木は考えた。

ウェブサイトをみるとISO14001のカテゴリーでも、内部監査員養成、入門コース、環境管理責任者コース、環境関連法規制セミナー、環境側面評価コース、マネジメントシステム構築、内部監査演習などいろいろある。三木は各コースの解説を読んでまずは入門コースというものを受講しようと思った。入門コースは、朝から夕方までの1日で次のようなことを教えるらしい。
  • ISOとは何か
  • 環境マネジメントシステムとは何か
  • EMS導入の必要性
  • ISO14001規格解説
  • 理解度確認クイズ
修了証を出すと書いてあるが、その修了証にいかほどの価値があるのか三木には分らなかった。
受講するにはお金がかかる。津川課長はすべて美奈ちゃんに相談しろということだった。三木は岸本の席に行って声をかけた。
三木
「岸本さん、ちょっと相談があるのですが」
美奈子
「ハイ、なんでしょう?」
三木
「私はISOにはまったく初心者なもので、とりあえず外部の初歩の講習を受けようと思います。それで費用の処理などを教えてほしいのですが」
美奈子
「ハイ、分りました。ええとちょっと話をするお時間ありますか?」
三木
「ああ、もちろんです」
美奈子
「そいじゃあちらの打ち合わせ場でお話した方がよろしいと思います」
コーヒー 三木はなんだか岸本がおおごとに受け取ったのではないかと思った。三木は単に講習会の費用の支払い方法を聞きたかっただけなのだが。
二人は打ち合わせ場に座る。岸本は途中、給茶機でコーヒーを注いでいく。三木もそれに倣う。本社の人はなにかあるとコーヒーを飲む習慣があるようだ。ビル内は完全禁煙なのでその代償なのだろうか。
美奈子
「まず予算のお話をします。三木部長さんの年間予算は80万円です。正直言いまして今年末までなのか、今年度一杯なのかわかりませんけど。私なりに計画を立ててみたのですが・・・(といいつつ岸本はA4の紙一枚を三木に渡し自分も同じものを見た)
三木部長はこれからISO審査員研修というものを受けないとなりません。研修機関によって若干お値段が違いますが30万を少し超えるのが相場です。それを修了すると審査員登録機関というところに登録申請をしなければなりません。これにも数万円かかるようです。
それから工場をいくつか訪ねて環境管理とか内部監査などを実習することが必要になるでしょう。その旅費や宿泊費の合計で1回5万として4回行くとすると20万になります。工場や支社のISO審査の見学もしなければならないでしょうから、3回として15万は見なければならないでしょう。
また国家試験も受けると思いますが、参考書や通信教育の費用は個人負担としても、受験費用は会社持ちにするしかないと思います。1種目で6千円くらいでしょう。その他JIS規格票などは会社で購入するしかないでしょう。ええと、ここまでで70万くらいになると思います。
それでですね、今申し上げたほかの講習会の受講などは10万しか予算がありません」
三木はいささか驚いた。予算が少ないということではなく、岸本がそれほど三木の研修について考えていたということにだ。
三木
「岸本さん、その〜私が受講しなければならないこととか、工場の見学とかどのようにしてお考えになったのでしょうか?」
美奈子
「まず経理に行って、過去に環境管理部でISO審査員に出向予定者に教育した時の費用実績を入手しました。それから環境管理部の庶務担当に研修の実施内容を確認しました。
ただ従来は工場の環境課長経験者ばかりでしたので、みなさん公害防止管理者の資格をひとつくらい保有していましたし、ISOの初心者コースレベルは工場で受講してたようです。
三木部長の場合はまったくの初歩からですので、ISO審査員になるにはどんな要件が必要なのかネットや本で調べまして、公害防止管理者の受験費用と、その前段階の研修受講の費用と、過去の実績を加えて80万を予算申請しました。そんなわけで、あまりいろいろ受講されると予算オーバーします」
三木は恐れ入った。三木が考えるようなことはこの女性が既に予測して予算まで確保していたわけだ。
三木
「分りました。すると初心者コースを受講するのは無駄かもしれないということかな?」
美奈子
「はっきり言いまして、そこんところは私はわかりません。ISOの研修機関はたくさんありますし、内容もお値段も違います。三木さんの意欲をそぐようなことを言うのは大変申し訳ないですが、試行錯誤とかとりあえず受講するというのではなく、全体的な計画を策定してそれを詳しい方にレビューしてもらった方が良いのではないでしょうか」
三木
「なるほど、おっしゃることはよく分りました。で、詳しい方というのをご推薦願えませんかね」
美奈子
「今日環境管理部の氷川さんとロビーでお話されていたのはそれじゃないのですか?」
三木
「いやはや、岸本さんは千里眼だね」
美奈子
「そんなことないですよ。私がロビーを通ったときお二人がお話されてましたから」
三木
「そうでしたか。私は岸本さんに気がつかなかった。君から見て氷川君は詳しいと言えるのかい?」
美奈子
「どうでしょうかねえ、あの方が公害防止担当というのは存じてますが、ISO認証については指導も審査を受けたこともないはずです」
三木
「へえ、岸本さんは何でも知っているんだ」
美奈子
「そんなこと庶務担当なら誰でも知ってますよ」
三木
「岸本さんの言外の意味は、氷川はあまりあてにならないということだ。
うーん、そいじゃとりあえず美奈ちゃんとしてのアドバイスをもらえないかな?」
美奈子
「初心者コースというのがどんなものかわかりませんが、一日コースというとボリューム的に大したことはありませんよね。私たちがどんな講習を受けるにしても、1日では大したことは習えないでしょう。
まずはどういう方法で
勉強するか、その計画
を考えてみてください

美奈子
どうでしょう、まだこちらに来て三日目ですから、あわてずにじっくり考えたらどうでしょう。
それにお金をかけなくても情報収集ができるのではないでしょうか。例えばインターネットにはISO規格解説をアップしている個人のサイトなんて山ほどあります。そういうものを二つ三つプリントアウトして読むのもあるでしょう。
あるいはISO規格をワープロ起こしするのも勉強になると思います。私も数多くの会社規則を知らないと仕事になりませんが、会社規則のパイプファイルを読んでも頭に入りません。自分で規則全文をワープロすると覚えますよ。そして必要な部分だけ自分用にマニュアルを作ると一層役に立ちます。
ISO規格も同じでしょう。何度読んでも分らないことがあれば、そこを詳しい人、例えば環境管理部の担当者に聞いても、まさか教えてくれないということもないでしょう。またどの工場にもISO担当者がいるわけですから、そういった人にメールで問い合わせたらいかがでしょうか。いま思いついたのですが、全工場のISO担当者のリストを調べて、全員に同じ質問をしたら、みなさんの理解度テストになるでしょう。とすると誰が頼りになるかもわかるでしょう」
三木
「なるほど、岸本さん、よく分った。まだまだ私の考えが足りなかったようだ。ご意見に従い、もう少し考えます」
美奈子
「お願いします」
自席に戻って、三木は腕を首の後ろで組んで天井を見上げた。
対訳本 まず岸本の話を聞いて、自分の考えが至らなかったと思う。それについては反省した。
既にISO対訳本は買ってあるので、それを自分でワープロしようと思う。文字数は大したことがないから1日あれば入力できるだろう。それをプリントして常に携帯して読むことにしよう。いずれにしても審査員なら全文を暗記しておかなければならないだろう。まずはそれをしよう。今からだってできることだ。
それとISO規格についてのウェブサイトを探して、プリントアウトしてよく読んでみよう。一つだけでなく、複数、少なくても5・6人の解釈を読んでおきたい。今日これからだって、一つや二つのウェブサイトをプリントアウトするくらいの時間はあるだろう。それをとじて通勤で読むことにしよう。
それと、一度鬼軍曹に会ってみようと決めた。六角からもらった名刺のアドレスにメールを書いた。鬼軍曹に紹介していただけるとありがたいと



外資社員様からお便りを頂きました(2014.11.12)
おばQさま
マネジメント物語が終わり寂しく思っておりましたが、すぐに審査員物語が始まり楽しく読んでおります。
これも企業内部の生々しい描写が印象的です。
いつも本旨と違う感想で恐縮ですが、部門の中を一番判ってる庶務さんの存在は、私も体験しました。
その部門を客観的に見ていて批判も賛美もせず、社内規程や見えざるルールに周知して、実際に組織を回している存在でした。
それでいて、職位も給与も、それほど高くありません。
一方で、管理職は、あちこちの部門を体験する事もあり、その組織を通り過ぎてゆきます。
こういう二重構造は、日本の企業に特徴的な存在ですね。
私が配属された時に、この庶務さんをみて非常にショックを受けました。
それは、組織の実務を本当に動かしている人と、管理職が別である点でした。
加えて、従軍経験者の体験と、ほぼ相似な状況:下士官が部隊内を実質的に切り回している事に驚いたのですね。
新人である自分の無能さと、有能な庶務さんを比較すると、なぜこの人を会社が有効活用しないのかも、不思議でした。
こういう二重の管理体制は、日本企業が終身雇用を行っていた時の特徴でもあり、非正規雇用が拡大するにつれ、こうした組織を切り回す庶務さんのような存在も消えてゆくのかもしれませんし、形は変えながら、残るのでしょうか?
いづれ、こうした組織に固定した実務者と、転々と部門を変える管理職、そして最後は子会社等へ出向するという会社の中の状況を活写されている事を、改めて楽しみにしております。
今後とも、楽しみにしております。
外資社員

外資社員様 まいどありがとうございます。
確かに言われてみると、名目上の地位が高い人はお神輿に担がれているだけで、実際の決定権はないに等しいですね。
でも、ちょっと待ってください!
日本では大昔からそんな形態だったような気がします。
天皇が実際の権力を持っていたのは神武、綏靖あたりだけで、歴史時代になると実権は蘇我、藤原、平家が握っていました。
源頼朝が鎌倉幕府を開くと、あっという間に実権は北条氏に取られてしまいました。
足利のときも征夷大将軍とは名誉職のようで・・・
徳川時代になっても同じく、あげくに旗本や御家人は株が売買されるようなありさまで・・・
ということは、部長、課長といっても単なる職場のシンボルで、実権は派遣社員とか古手のアルバイトが握っていてもおかしくなく
ということは日本ではマネージャーが説明責任を果たさず、結果責任を負わずというのも当然なのかもしれません。
いやいや、このウェブサイトはそんなことを真面目に考えるところではなく、いかに三木部長がとまどいミスをするかをながめるところです。そういった期待をお願いします。

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