審査員物語5 鬼軍曹に会う

14.11.13
審査員物語とは

三木が六角氏に「ぜひ鬼軍曹に会いたいので紹介してほしい」とメールを送ったら、三日後に返事が来た。六角からの返信は、鬼軍曹に問い合わせたら「水曜日の午後一なら会社にいるからご訪問ください」と連絡があったという内容だった。三木は六角にお礼を返信した。
三木
私が三木である

ということで今、三木は素戔嗚すさのお電子の本社前に立っている。昼休み少し前に会社を出てきたが、二つの会社は歩いて数分の距離で、予想よりも早く着いて、午後のチャイムが鳴るのを待っているところだ。あの六角氏が鬼軍曹と呼ぶほどだからヒゲでも生やして頭は丸坊主にでもしているのだろうか? いや、そんなマンガ的なことはあるまい。
腕時計を見るとやっと1時を過ぎた。三木はビルに入り受付に歩み寄った。
受付が電話をすると、ロビーで待っていてほしいとのことで三木は4階のロビーに通された。入口近くに置かれている椅子に座って待つ。
いつの間にか中肉中背の男が脇に立っていて声を掛けられた。
佐田
「三木さんでいらっしゃいますか?」
三木
「ハイハイ、三木です」
三木は立ち上がる。
佐田
「佐田と申します。六角さんからご紹介いただきました」
三木
「いえいえ、ご紹介いただいたのはこちらです。こちらこそ六角さんにお願いしましてご迷惑をおかけします」
佐田
「まあ、向こうに座りましょう」
机 佐田は窓際のテーブルに案内する。
二人は名刺交換する。佐田の差し出した名刺には所属部門だけで肩書はなかった。
佐田
「ええと、ISO審査員になるためにどんな勉強をしたらよろしいかというご相談と聞いております」
三木
「お手数をおかけして申し訳ありません。私は今まで環境とかISO認証に無関係でして、またISOに詳しい者が身近におりません。今まで聞き歩いたことを基に勉強の計画を立ててみましたので、それについてコメントを頂ければ嬉しいのですが」
佐田
「そうですか、今までお仕事でISOに関わっていらっしゃらないとすると用語ひとつとってもなかなか理解できませんからね。ご心配なことでしょう」

三木は佐田に会っていささか驚いた。六角は鬼軍曹といっていたが、タカピーどころか物腰低く、またとにかく目立たない容貌である。でも鬼軍曹と言われるぐらいだから、実際の仕事になると厳しいのかもしれない。
三木は持参したクリアケースから数枚のコピーした用紙を取り出した。
三木
「ええと、これは私が弊社内を聞き歩いた情報を元に作った勉強計画書です。まず前提として今年10月にはナガスネ環境認証に出向したいと考えております。ナガスネの出向受け入れの条件は、審査員補に登録していることと、公害防止管理者水質1種と大気1種の資格を保有していることです。それでそれを満たすことを最低条件と考えました」
佐田は三木から渡された資料を両手で押し頂いてながめた。

計画表

佐田
「状況は分りました。そうですねえ〜、確かに公害防止管理者については産環協の通信教育で勉強するというのは一番でしょうねえ。ただ向こうの要求とは言え同時にその2つを受験するのはかなり厳しいと思います。水質1種と騒音あるいは水質1種と振動なんて組み合わせならまだ軽いと思いますけど。まあ、それが条件というならやるしかないですね。
それと気になりますが、試験は9月末か10月初めですが、合格発表は12月だと思います。出向する条件として試験合格しているということなら12月下旬以降になりますね。そこんところはどうなんでしょう?」
当時は振動と騒音は別種目である。また科目合格という制度がなかったので、一つの種目を受けて一科目でも点数が足りないと翌年全科目を受けなければならないというルールであった。
三木
「おお、とすると今年中の出向はないということになるのか・・・・
教えていただいてありがとうございます。そこは先方と当りましょう」
佐田
「それから審査員補の登録には若干時間がかかりますから、なるべく早く研修を受講してCEARの登録申請をしておいた方がよろしいでしょう」
三木
「実を申しまして、まったくの素人ですから審査員研修コースを受講する前に相当勉強しなければならないと思うのです」
佐田
「なるほど。ISO審査の見学を後半に入れていますが、早い時期には審査はないのでしょうか?」
三木
「いや、ほぼ毎月1件から2件の審査があります。ただこれも何も知らないのに陪席しても勉強になるのかならないのか・・・ある程度分ってから見学した方が良いかなという気がしまして」
佐田
「なるほど・・・」
三木は佐田のリアクションを見て、この人は本当にISOを知っているのか、分っていないのか、それとも昼行燈ひるあんどんなのか見当がつかなかった。どちらにしても六角が言うような鬼軍曹には思えない。
佐田は三木の作った計画書を眺めたり天井を眺めたり数分黙っている。
三木がこの人に相談してもダメだな、引き上げようかと思い始めた頃、佐田は口を開いた。
佐田
「三木さん、正直申し上げますがこの計画を達成するのはかなり厳しいと思います。私も毎年数人当社からISO審査員に出向する方を教育しています。まったくの素人といっても人によって条件が違いますが、規格の教育、環境管理の教育、法規制の教育、監査のテクニックなどやらなくてはならないことは多々あります。まあご本人の経歴や相手の要求に応じて対応するわけですが、すべてを一定水準までもっていくのは難しいですね。
三木さんの場合、公害防止管理者、それも大物を二つ取得が必須となると、通信教育を受けるとしても三木さんの独習だけでわかるか合格するかとなるとどうですかねえ。
失礼ですがPHの計算なんてもう忘れているでしょう?」
三木
「PHの計算といいますと、アルカリと酸を混合したときいくらになるかってやつですか?」
pH9 + pH10pH19?pH9.5?pH9.3?pH9.7?
 ワカラン
ワカラン
正直言って、こんなものは仕事をしていれば直観でわかります。

佐田
「そうです。まあそれだけなら二晩もあれば高校時代の化学を思い出すかもしれませんが、MLSSとかエンタルピとか拡散とか、私も忘れちゃいましたね。ともかく今まで仕事で関わって来ていないので、学ばなければならないことのすそ野が広いんですよ」
佐田はしばし言葉を切った。
佐田
「三木さんのそばに分らないときに質問できる人がいないと大変だろうと思います。私でも誰でも三木さんのそばにいて指導したりフォローしたりしなければ、独学でこの計画表通り進めることは難しいと思います。もちろん私は三木さんの能力とか忍耐力を知っているわけではないので、勘違いかもしれません。
ああ、言い換えればこの計画書通りに進めることができれば問題ないと思います。
しかしナガスネの受け入れ条件だけを満たすというならそれでもよいでしょうが、審査員補に登録と大気1種、水質1種あれば審査員が勤まるわけではありません。環境管理とか審査の周辺について知らなければその後が大変でしょうねえ〜」
三木
「佐田さんの考える理想はどのようなものなんでしょう?」
佐田
「三木さんのお話をお聞きしまして、思うところはいろいろあるのですが・・・・私は部外者なので発言に責任を負うわけにはいきません、それを理解して聞いてくださいね。
確かに水質や大気の勉強をすると資格につながるだけでなく、その過程で得る知識は審査に役立つと思います。しかしそれだけでなく社内のマネジメントシステム、特に現実の運用とISO審査で見せている仕組みの乖離とか、業務監査とISOの内部監査の関係、環境だけでない全体的な文書体系などを知っておかないと、自分がよそ様を訪問したとき審査ができないじゃないかと思います。もちろんそんなことを気にしない審査員も多いですがね。形だけ見るのは簡単で、それでも審査員は勤まりますからね。
なんというのかなあ〜、ナガスネの受け入れ条件を満たすべきか、実際に審査員をしていくための教育を想定してその基本部分を教えるべきか、そんなところが引っかかりますね」
三木
「佐田さんがおっしゃるのは、ナガスネの要求していることだけ満たしても審査員としての力量につながらないというわけですか」
佐田
「まあ、そこんところはなんとも・・・おっと、三木さん、審査員研修機関としてグローランプ社を予定しているようですが、審査員研修はナガスネの研修を受けないとだめですよ」
三木
「はあ、審査員研修コースはどこを受けても同じと聞きました。グローランプ社の方が研修の開催回数が多くて、都合がいいのです」
佐田
「ううん、認証機関によって規格の解釈が違いましてね、ナガスネに出向するならナガスネの審査員研修を受けないとなりません。ここはナガスネの講習会を受講してください」
三木
「するとISO規格解説の本も、ナガスネの講師が書いた本でないとだめということですか?」
佐田
「もちろんです。ナガスネでは規格解説から環境側面評価など一連の本を出しています。ナガスネ発行の本を一式買い求めることが必要です」
三木
「私も認証機関によって規格解釈が違うという話を聞きました。しかしいろいろな解釈を知ることも重要かと思いますが」
佐田
「うーん、ナガスネで働くと決まっているなら、余計なことを考えずにナガスネ方式、人によってはナガスネ流と呼んでいますが、その流派だけ学べばよいかと思います」
三木
「六角さんのお話では、六角さんはナガスネ流に納得できず、ツクヨミに出向されたとおっしゃっていましたが」
佐田
「そこまでいくとかなり突っ込んだ話になりますね。三木さんのお勤めの会社でツクヨミ出向させることができるのならそれもありでしょうけど、それができないならナガスネの考えを体得するしかありません。ナガスネに出向してナガスネ流に染まらないのではやっていけないでしょう」
三木
「なるほど・・・実際問題としてナガスネ流というのはどうなのでしょうか?」
佐田
「日本でISO14001審査が始まった頃、ナガスネはISO14001の審査件数のほとんどを占めていました。でうからナガスネ流以外はダメだったといっても間違いではないでしょう。おかしな考えでもそれがメジャーでしたから誰も異議を唱えなかったのです。
しかし時が経つとだんだんと企業の担当者も勉強するようになり、また実際の運用を重ねるにつれてナガスネ流が現実離れしていること、作業が無駄なこと、現実に役に立たないなどから、多くの人が疑義を唱えるようになりました。もちろんナガスネのISO14001認証に占める割合が減ってきたということが大きいです。そして現在ではほとんどの認証機関はナガスネ流でなくても良いと考えています。しかし今でもナガスネに依頼している企業はナガスネ流をひたすら守っています。審査でイチャモンがつくのが怖いからですね。
三木さんもこれから御社のISO審査を立ち会う予定になっていますね。そのときナガスネだけでなく他の認証機関の審査をご覧になるとその違いが良く分ります。
といってすぐに否定するのですが、ナガスネに出向されるというなら、他の認証機関の審査を一切見学しないほうが良いでしょうねえ〜」
三木
「佐田さんにお会いすればなにか手がかりがつかめるかと思ったのですが、どうも良い案はないということでしょうか?」
佐田
「そりゃ無理を言わないでください。あっというまにすばらしいアイデアが浮かぶなんてこの世の中にありませんよ。今は、三木さんのお話を伺って、条件を整理しようとしているところです」
三木は赤面した。会ったばかりの赤の他人に正解を出せというのは失礼な話だし、会って20分や30分で回答が出るはずがない。そもそも質問すれば答えが出てくる自動販売機のように考えた自分がおかしい。
三木
「いや失礼しました。私もいささか精神状態が不安定で、申し訳ありません」
佐田
「問題を整理すると、三木さんは多々選択の余地がありそうですが、あまり複雑にしないで、とにかくナガスネの要求を満たすことを必要条件とする。そしてナガスネで審査員になったときに役立つ審査テクニックと御社の実態を勉強していくということになるのでしょうか?」
三木
「不安といいますか六角さんのお話にあったことですが、ナガスネ流に納得できなかったときはどうなりますかね?」
佐田
「それは難しいですね。六角さんの場合は当社からツクヨミに出向していた人の紹介などで出向できました。御社とツクヨミのつながりがなくても三木さんがツクヨミに行きたいというなら、三木さんが直接ツクヨミに話をするという方法もあります。なにせツクヨミはここから歩いて数分のところですし」
三木は腕組みしてしまった。数日前まで三木が考えもしなかった状況になっている。
三木
「もし私がナガスネに出向して向こうの考えについていけないとなるとどうなりますか?」
佐田
「一般的に認証機関の解釈というか考えというものはそこのボス的審査員の考えです。普通の会社だって力のある人に逆らうことはできないでしょう。
その上、最初は審査員になるため、そして次は主任審査員になるために、審査リーダーのいう通りにしていないと推薦を書いてもらえませんから、審査員の資格に昇格できません。
審査員というのは主任審査員にならないと一人前じゃないんです。もし三木さんが他の認証機関に転職しようとしても、主任審査員の資格がないと採用してくれるところはないでしょうね。まあ、最低でも審査員になってなければダメです」
三木
「なるほど、ということはナガスネに出向するならナガスネ流に帰依しないとならない。それが嫌なら初めから他の認証機関を目指すということですか」
佐田
「残念ながら、そういうことです」
三木
「そしてナガスネ出向のためにはこの計画書で良いだろうが、その達成はかなり難しいということですね」
佐田
「うーん、縦軸の項目はよろしいかと思いますが、横軸、つまりイベントの時間的なことは見直した方が良いと思うところがいくつかあります。それと先ほど申し上げた審査員研修コースはナガスネしか選択肢はありません」
三木は計画書に書き込んだ。
三木
「その他にアドバイスとしては・・・」
佐田
「工場の審査立会をなるべく早くからするようにして、回数も多い方がいいですね」
三木
「予算もあるのですよ。あまり出張をする余裕がありません」
佐田
「御社は大会社ですから、東京都内でもいくつもの関連会社や下請けがあるでしょう。そういったところの審査に陪席するのに旅費はかからないでしょう」
三木
「ナガスネの審査だけ見学した方が良いとのことでしたね」
佐田
「御社も業界が業界ですから、御社も関連会社も多くはナガスネのはずですよ。環境部門に頼めばアレンジしてくれるでしょう」
三木
「実を言いまして・・・弊社の環境管理部の協力が得られない状況なのです。営業部門から出向者を出すことで、環境管理部がへそを曲げたらしくて・・・私が佐田さんを訪ねてきたのもそんな事情がありまして」
佐田
「なるほど、いろいろ事情があるのですね。ただそういったこと、つまり審査の見学を何度もしておかないと三木さんのように今までISOに無縁だった方は審査というものを理解できないでしょう」
三木
「どうしたらいいですかね」
佐田
「御社の部門間ではギクシャクしていても、担当者同士でなんとか話をつけて陪席できるようにしてもらうことです。普通はどの会社でも本社の環境部門が、工場や関連会社のISO認証状況を把握していますし、審査日程も見ていますので、
それから審査に陪席するときは、本社の者がISO審査が適正に行われているかを監視に来たと立場を表明した方がよろしいでしょう。審査を見学させてほしいとか、まして認証機関に出向するので勉強のためになんて審査員に言ってはいけませんね。単に足元を見られるだけでなく、陪席を拒否される恐れもあります」
三木はメモをする。
三木
「なるほど、そのようにいたします」
佐田
「取得を予定している資格は公害防止管理者だけになっていますが、特管産廃とか危険物も取っておきたいですね」
三木
「先ほどは公害防止管理者二つでも大変だろうとおっしゃいましたが・・・」
佐田
「特管産廃は一日講習を受ければ資格がとれますし、危険物の方は試験は受けなければなりませんが講習は一日です。それくらいはむしろ息抜きにちょうどよいでしょう。資格が余分にあっても困ることはありません。それになによりも審査員になってから役に立ちます」
三木はまたメモをする。
佐田
「この計画書を頂いてよろしいですか。数日拝見してコメントを書いてお送りします。
とりあえずの三木さんへのアドバイスですが、ナガスネしかないのか、他の認証機関もあるのかを確認して決定しておくことですね。それがはっきりしたら覚悟を決めてやるしかありません」
三木
「わかりました。よろしくお願いします」



コーヒー 三木は会社に戻って自席でコーヒーを飲む。
ものごとは簡単にはいかないなと思う。佐田に会えば一刀両断で解決策が見えて、すばらしいアイデアが頂けるかと思っていたがそんな甘い話はなかった。
それにと三木は思いかえす。六角は鬼軍曹と言ってだいぶ持ち上げていたけれど、あの男は大したことはないようだ・・

三木がコーヒーを飲んでいると岸本がやって来た。
美奈子
「三木部長、外出されていましたね」
三木
「美奈ちゃんは千里眼だからなあ〜、隠し事ができないね
どこに行って誰と会ったかも知っているんだろう」
美奈子
「素戔嗚電子にお邪魔していたのでしょう」
三木
「商売敵に行ってはいけなかったかい?」
美奈子
「まさか、親の仇じゃあるまいし、商売に関わらないところでは、お互いに相談したり協力したりというのは普通のことですよ」
三木
「そうなんだ。実を言って素戔嗚電子にISOに関してとても詳しい人がいると聞いていたのでお会いしてきた」
美奈子
「そうでしたか。で、ためになりましたか?」
三木
「うーん、大いに期待して行ったのだけど、会ってみたら昼行燈ひるあんどんかなって気がしたよ。昼行燈って知ってるよね」
美奈子
「知ってますよ〜」
三木
「私が質問してもすぐに返事が来なかったし、その返事も自信あるように思えないんだ」
美奈子
「そうですか、ちなみにその方のお名前をお聞きしてよろしいですか?」
三木は佐田からもらった名刺を岸本に差し出した。
岸本はしげしげと眺めている。
三木
「その人をご存じかな?」
美奈子
「面識はありません。だけどお名前は存じています」
三木
「ほう!有名な人かい?」
美奈子
「2年ほど前のこと、この佐田さんが北海道の廃棄物業者が悪さしているのに気づき、素戔嗚電子の北海道支社にその業者から切り替えるよう指示したのですが、 ゴミ収集車 そのときウチの北海道支社もその業者に委託していることを知り、ウチにも対策するように言ってきたのです。
それからだいぶ経って3月ほど前に警察がウチの北海道支社に調査に来ましたが、既に切り替えていてことなきを得ました。その業者を使っていた会社は後で処理費用など大金を払ったと報道されていました。そのあと営業本部で話題になりました」
三木
「ほう!有能なのかどうかはともかくとして、どうしてよその会社にまで知らせてくれたのだろう?」
美奈子
「まったくの善意なのか、貸しを作ろうとしたのかそこはわかりません。
もちろんその程度の借りではビジネスで妥協することもないでしょう。でも地域の活動では協力しているところもありますから、そういったところでお返ししたかもしれませんね」
三木
「じゃあともかく昼行燈ではないということか」
美奈子
「そのとき支社の人が佐田さんのことをすごい人だと言ってました。
あの想像ですが、佐田さんは三木部長の問題の解決策が分っていても、それを三木部長に示すべきかどうか迷ったのではないでしょうか」
三木は佐田の態度を思い返して、そんな深い考えをしていたのかと考えたが分らなかった。



夕方となった。今日はいろいろあって疲れたなと三木は感じた。
電話が鳴った。
三木
「はい三木です」
氷川
「おお、俺だよ。ちょっと話があって、いやいい話だと思う」
環境管理部の同期の氷川からだった。
三木
「なんだろう?」
氷川
「あのさ、ナガスネに出向している宮下さんという人が明日会社に来るんだ。出向者が定期的に打ち合わせに来るって知っているだろう。お前はいろいろと聞きたいことがあると思ってさ、会って話を聞いたらどうかなって思ったのよ」
三木
「おお、それはぜひとも」
氷川
「そいじゃ、そのように話してみるわ。たぶん明日午後一に来てこちらの打ち合わせに2・3時間かかると思う。3時くらいから予定しておいてくれないか」
三木
「分った。ありがとう」
三木は今晩、宮下氏に質問することをまとめておこうと思った。

うそ800 本日の逡巡
私は出向予定者の教育をしたことはありますが、反面出向を予定していて放って置かれた人をみたことはありません。ですから何も知らない出向予定者がまったく何も指導を受けないとき、どんな行動をするのか見当もつきません。
そんなわけで三木がどんなことを考え行動するのかは全くの想像です。

うそ800 本日の特別出演
前作の佐田氏に登場してもらいました。
次は前々作の山田太郎さんの登場でしょうか?


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