「とりあえず4つのアプローチを試してみます。岐阜工場についてはご存じのようにこちらの想定ではなく向こうから話がありましたので、私のアプローチの一つに当てはめました」
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「なるほど、ともかく岐阜工場が最重要だから、こけないように重点的にしっかり支援してくれよ」
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「承知しました。 但し、私の意図は、みなさんに、それには塩川課長も含まれますが、どんな方法がいいのか、いや他の認証機関との比較を含めて知ってほしいというのが本来の目的です。単にナガスネ方式で認証するだけならこんな手間をかけません」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「わかった。 ところで、ちょっと聞いた話だが、NC電気がナガスネに審査を依頼しないで、JA共済じゃなかったJA認証にすべての事業所の認証を依頼するらしい」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「はあ? あそこも業界団体に加盟していますよね?」
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「そうなのだが・・・・うわさによると、NC電気は審査方法を検討した結果、ナガスネに依頼するのは不適切と判断したそうだ。まあ業界団体があって企業があるわけじゃない。企業があって業界団体があるんだ。それぞれの企業の判断に文句を言えないだろう。その代り、NC電気はナガスネに出向者を出すことはできないことになる」
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「ほう、それはそれで立派な決断ですね」
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「立派といえば立派だが、俺たちのレベルではそのような判断はできない。与えられた条件で最善を尽くすだけだ」
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「そうですね、でもいろいろなアプローチをして、多くの人にどれが良いかを見ていただくことはできるでしょう」
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「俺もさ、いろいろ考えているんだ。本当に事故防止や遵法に役立つもの役立つ審査でなければ、時間をかけて準備して大金を払って認証する意味がないよな」
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「ISO9001審査費用は、時間と共に低下してきています。ISO14001も同じ道をたどると思いますが、それでも現時点千人規模の工場ですと、初回審査が100数十万、次回以降が100万というところでしょう。つまり当社で年間4,000万、関連会社を含めればその倍ほど支払うわけです。毎年それだけ投資するとすれば相当なことができますね。それと出向者を出すことを天秤にかけて考えなければなりませんね」
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「なるほどそういう見方もあるか・・・真剣に考えないとな」
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月が開けて、佐々木と片岡の両氏が環境管理部に異動してきた。例のナガスネ認証機関に出向予定のメンバーである。塩川課長と佐田が対応する。
● ●
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「早速ですが、お二人ともISO審査員に出向予定ということで、当方がその教育訓練を承りました。教育はこちらの佐田が担当します。佐田がみなさんの教育全体のスケジュールなどと日常管理を担当します。実際の教育といいますか勉強は座学だけでなく、資格取得とか現地での見学会とか監査など多様なことをしてもらいます。お二人とも今までのご経験をお聞きしておりますので、それを踏まえて教育計画を立てております」
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「今後1年間の大まかな計画を説明します。まず審査員になるには環境関係の資格が必要ですから、最低これだけというものをあげましたので資格取得できるようにしてください。 まずISO14001審査員研修の受講と合格、そして合格通知が来たらすぐに審査員補登録をお願いします。研修はかなり混んでいますので、できるだけ早く受講申し込みをしておいてください。 公害防止管理者、これはたくさんの種類がありますが、その知識が他の資格受験に役立つこととか実際にこれから役に立つという観点から水質1種をはじめに受験してください。これは年に1回9月末しかありませんから必勝を期してください。 特別管理産業廃棄物管理責任者、これは1日講習会に参加すれば資格がとれます。 危険物取扱者乙4、まあ2週間頑張って勉強すればとれるでしょう。試験は毎月二三回あります。ダメで元々と気楽に受験してください。 以上、4件は最低限取得してください。もちろん通信教育でも独学でもよろしいです。わからないところがあれば私が教えます。 それから環境監査への参加、これは環境管理課のメンバーが行うとき見学あるいは監査員として参加してもらいます。 ISO14001認証準備の見学と指導。現在、当社の工場や関連会社においてISO14001認証目指して活動中です。そういった会社の認証指導は私が担当していますが、一緒に行っていただき指導や向こうがしていることの見学をしてもらいたいです。 ISO審査の見学、当社の工場や関連会社においても、今年の夏ころからISO14001審査を受けるところが出てきますから、そのとき審査を見学できる機会を作ります。 私の本業はISO認証の指導ですが、ぜひともそのお手伝いをしてもらいたいと思います。その経験はこれから審査員やコンサルをすることに直結すると思います。 とりあえずはそんなところです」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「つまり勉強するのが仕事ということか?」
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「確かに、公害防止管理者の試験勉強は本を読むとか過去問を解くこともあるでしょう。しかし認証の指導などは、準備している会社に行ってその状況を見学したり指導したりということが勉強かと思います」
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「受験勉強はわかったけど、会社で本を読んだり問題を解いているわけにもいかんだろう。どんどんやることを指示してほしいなあ」
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「みなさんはパソコン、特にエクセルはどのくらい使えますか?」
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「メールを書いたり読んだり、ワープロはなんとかという程度だが」
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「私はエクセルは得意だ。VBAも使える」
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「そうですか、じゃあお二人にしていただく仕事を考えておきます。それでは今日はとにかくナガスネのウェブサイトにアクセスしていただいて、ISO審査員研修会の受講申し込みをしてください。もしインターネットが苦手なら、電話した方が早いかもしれません。 それから危険物の試験と特管産廃の講習会の申し込みもしておいていただけると良いですね。 おっと、公害防止管理者の試験についてネットで調べておいてください」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「わかりました。なにかあったら佐田さんに伺いましょう」
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「佐々木さん、わしはパソコンが苦手だからぜひご指導を・・」
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今日、佐田は佐々木と一緒に岐阜工場に来ている。岐阜工場の進捗状況を見るためだ。岐阜工場ではISO14001プロジェクトというのを作って作業をしているが、メインは専任となっている川中課長と部下の伊勢本の二人である。今日は環境側面を決定する方法を議論していた。佐田と佐々木は最初黙って見学していたが、佐々木が口をはさんだことから4人でワイワイ議論が始まった。
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「とりあえずというかこの工場で使っている電力、水、原材料などと、廃棄物などの数値は集めたのだけど、それからが進まないんだ。まず点数を付けるわけですが、廃棄物とか電力とか塗料などたくさん採点しなければならないものがあるわけですよね。 だけどここでおかしなことなんだけど、最終的に著しいものにしたいものは決まっているわけだ。それで量はごまかすことはできないから、重みとか影響する期間とかの配点を調整して、結果としてこちらが期待しているものになるようにしなければならない。そこんとこのさじ加減が難しいんだ」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「川中さん、それは良く分ります。結局試行錯誤しかないですかねえ〜」
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「佐田さん、試行錯誤と言えばその通りなのですが、実際にしてみるとうまくいかないのです。ABCとみっつの環境側面があるとしますとね、AとBを調整してバランスが取れたかと思えば、BとCのバランスが崩れ、BとCのバランスをとるとAとBの関係がずれてしまうという、もう終わりのない試行錯誤なんですよ。まいっちゃうなあ」
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1997年当時、私は何社もこの作業をしたが、エクセルに関数を組み込んでセルの数値を変えると自動的に配点が変わり順位が入れ替わるようにしたシートを作って行った。それでも某認証機関を満足させるには半月以上の試行錯誤が必要で、結果として点数を関数とおりでなく数値をごまかしたり苦労したものだ。後でここに書いたようなシートを作れば時間短縮になったと思った。とはいえ、そのようなことは環境管理には無縁の無駄な行為であることは言うまでもない。単に某認証機関の審査員を満足させるためでしかない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「確かに手順は伊勢本のいう通りなんだ。ナガスネの講習では、電力とか水とかの項目が10個もないから、あっというまに調整できる。だけど現実は100個も150個もあるわけだよ。実際に作業をすると毎日々々賽の河原の石積みですよ、うーん」
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「あのう、私は今佐田さんの下で修行中でして、環境のこともISOも知らないのですが、今みなさんのしていることは要するにうまい配点をする数表を作ることですよね」
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「そうだけど・・」
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「私はエクセルが得意でしてね・・・いや情報システムをやってたもので、ともかくたくさんの要素があって、そのうち点数を大きくしたいものが決まっている。そして点数はみっつの条件の積であること、条件のひとつは既定であること、残りの二つの配点を調整してうまくするようにということですね」
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「うまい方法がありますか?」
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「一挙にというわけにはいきませんが、ちょっとパソコンを貸してください」
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佐々木は伊勢本と代わってパソコンの前に座る。
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「ああ、もう各項目は入力されているのですね。そして量も入力されていると・・・ これはVBAでなくて関数を入れておくだけでも簡単にできるでしょう」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「簡単にできるのですか!」
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「手作業を少しするのは仕方がないですが、それも自動化するならプログラムを組めばよいけど、そんなことをするまでもないでしょう。どっちにしても1回限りですよね」 佐々木の考えは、各項目つまり電力とか水などの量の配点のスケールを調整することにより結果の順位が自動的に並び変わるようにしたのだ。量の配点だけでうまくいかなければ影響と期間のスケールを変える。もちろん手作業だから要素をひとつずつしか変えられず一挙に理想的なものになるわけではないが、ああだこうだと10分もいじっていると期待する結果にはなった。 佐々木が言うには、発想として初めに重要としたいものの点数が上位80%くらいになるように上端の数値を設定すると必然的に期待するものが上位になるので調整はいらないという。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「すごいですね、佐々木さん。これで環境側面はおしまいだ」
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「アハハハ、こんなもの簡単ですよ」
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そのとき大山部長が入ってきた。
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「おお、佐々木部長じゃありませんか! ご無沙汰しております」
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「部長は佐々木さんをご存知ですか?」
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「お前、この方をご存じないのか。情報システムの部長で昔々当社の情報システムを構築した方だぞ。
で、佐々木部長、どうしてここに?」
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「いや大山さん、今はもう部長は引退でね、ISO認証機関に出向するように言われて、今、佐田さんの下で修行中なんですよ」
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「佐々木さんは我々が半月も悩んでいた環境側面の点数を決める方法を、エクセルで作ってくれましたよ」
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「点数を決めるシートは作りましたが、この点数がいかなる意味があるのかは私はわかりません」
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「佐々木部長も佐田さんから聞いていると思いますが、ISO14001を認証するには環境側面を決めなければならない。ところが環境側面を決めるには、ナガスネ方式と呼ばれる方法でないと合格しない。ところがナガスネ方式で点数をうまく調整して期待する、つまり我々がこれは危険だとか管理しなくちゃならないと考えているものに一致させることは簡単に行かないのですよ。川中と伊勢本はもう1週間も悩んでいました。聞くと多くの会社ではこの段階で1か月くらいかかるようですよ」
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「ちょっと待ってください。初めから危険だとか管理しなくちゃならないと考えているものがあるのなら、計算などしないでこれが環境側面だと決めたらいいじゃないですか」
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「佐々木さん、それじゃ大山部長がおっしゃったように審査で合格しないのです」
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「わからないなあ〜、分りきったことをいろいろと数字をいじってそのような結果を出すなんて。時間の無駄でしかないでしょう。そりゃエクセルが得意とか不得手という以前ですわ」
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「ナガスネで認証するには仕方がないのですよ」
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「ナガスネって私が出向しろと言われているところですよね。そんな非科学的な方法を推奨しているのですか?」
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「推奨じゃありません、強制ですよ」
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「ともかくうまくいったなら良かったじゃないか」
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「大山部長、この方法を他の工場にも使ってよろしいですよね?」
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「佐々木部長が考案されたなら当然ですよ。バカバカしいカットアンドトライをしないですむことは大いに結構だ」
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それから岐阜工場で今までに困ったことなどの話になった。 文書や記録などはナガスネがいうとおりにすることは、特に問題はなかったらしい。 ただ目的目標になると、やはり従来のままではどうにもならなかったという。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「しかたがないので岐阜工場独自で毎年3年間の目標値を決めることにしました」
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「本社の立場でクレームを付けるわけではありませんが・・・次回の環境計画を本社が策定したとき、岐阜工場が独自に決めていた数値と大きく変わること、いや改善テーマそのものが変わることもあるでしょう。それはどういうふうに説明するのでしょうか?」
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「実を言ってそういう問題があるでしょうねえ〜、とにかく今年審査に合格してから考えるということしかありませんねえ」
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「ナガスネの解釈は独特なのですね」
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「それをいうならISO規格でなく、ナガスネ規格で審査されるということでしょう。いったい誰がナガスネで認証しろなんて言い出したんだ」
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「大山部長、それを言われると困りますよ。私が出向できるのは、みなさんがナガスネで認証を受けてくれるからです(笑)」
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●
片岡と佐々木が、ナガスネ認証の審査員研修に出かけた。● ● 申し込みのタイミングが良かったのか、すぐに受講することができ、しかも二人同時に研修を受けることになった。 佐田はその間にISO14001認証準備をしている4事業所を一回りしてきた。どこも順調に作業をしている。 佐田が一回りしたのと同時に、二人が研修を終えて戻ってきた。打ち合わせしようと佐田は言い、三人は打ち合わせ場にコーヒーを持って集まった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「どうでしたか、研修のご感想は?」
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「うーん、ISO規格は何度も読んでいきました。日本語でも英語でも。どうも研修で教えているのは、ISO規格ではなく、規格を好き勝手にかじったもののようですね。他の方々がまじめに聴講しているのを見て不思議に思いましたよ」
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「私もだ、私は他の受講者にも聞いてみた。あの講師の話は規格に書いてあることとは違うのではないかって」
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「ほう、片岡さん、その結果は?」
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「みんなはそんなこと分りきっていて、今更疑問に思わないということだ」
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「ええ!」
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「話を聞くと、受講者が20名いたが、その内3名はナガスネに出向予定だと言っていた。我々と同じだ。そして間違っていようとおかしかろうと、ナガスネの見解を知らないと仕事ができないという切羽詰まった状況で講師の話を吸収しようとしていたようだ」
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「うわー、私はのどかに聞いていました。私が無為に過ごしていた時にそんなヒアリングをしていたなんて、片岡さんには頭が下がります」
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「いやいや、私も出向するならば他の参加者と同じように、ナガスネの解釈がそのようなものであると理解しないでいたのを恥じていますよ」
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「うーん、実を言いましてみなさんが参加する前に、そのことをお話しようかと思いました。でもしませんでした。みなさんは出向するまでまだ時間がありますから、それまでにナガスネの解釈に染まらずに、いろいろな認証機関の見解を知ったり、当社の環境管理の現状を見てほしいと思ったからです」
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「なるほど、佐田さんは若いけどいろいろと考えているのだね。そうか、今からナガスネの解釈が唯一無二で正統なものだと思い込んでしまったら危ないなあ」
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「ともかくあの研修ではISO規格の正しい理解は無理でしたね。でもナガスネの解釈を理解するなら最適でした」
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「みなさんはナガスネに出向するのがほぼ決まりですからあまり言いたくありませんが、今私が取り組んでいるのは、ナガスネで認証をしてかつ当社の環境管理を悪くしないためにはどうすべきかということなのです。みなさんにも、私と一緒にいくつかの会社の認証指導に行っていただいています。そのとき指導する際の注意点ですが、ナガスネの見解が正しいというスタンスで指導されると困ります。といって規格の正しい理解を基に指導されても困るのです」
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「はあ! それでは一体どうすればいいのですかな?」
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「今私が言った通りですよ。つまり指導する会社の環境管理を悪くせず、しかも余分なことをさせないで、ナガスネの審査員に不適合を出されずに認証を受けるということです」
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「うーん、それは難しい課題だな」
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「先日、佐田さんと岐阜工場に行ったよね。あのとき当社グループの環境計画は3年スパンでナガスネの解釈では不適合になってしまうので、当社グループの計画ではなく、独自に3年の計画を立てて審査の時に見せると言っていた」
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「そうでしたね」
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「あれは厳密に言えば内部統制違反だ。ISO審査のためとはいえ、そのような行為を許すべきじゃないのではないかね?」
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「まあ実際の投資計画とか改善計画の策定の際は、事業部や本社の認許が必要で、ISO審査のための名目上の3年計画はそのとき当然見直しされるでしょうから、実害はないでしょう。それに言いにくいことですが、ナガスネで認証しろというのは本社が指示しているので、本社が指示している計画と異なるうその計画を見せるのはやむを得ないところでもあります」
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「こんなことを言ってはなんだが、ナガスネで審査を受けるのは止めるべきじゃないかね」
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「そのお気持ちはよくわかります。しかし我々は企業人ですから、上位方針を達成するために行動しなければなりません。ですから私は先ほど言いましたように、会社の環境管理を悪くせず、しかも余分なことをしないで、ナガスネの審査員に不適合を出されずに認証を受けることを目指しているのです」
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「片岡さん、ナガスネを止めるということは、我々が行くところがないということで、まあこれも渡世の義理というものでしょう」
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「とはいえ研修会でNC電気のことを聞いたよ。あそこはナガスネからJAに鞍替えしたってね」
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「その代わりナガスネへの出向はなしになったそうですよ」
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「なるほど、そういうことになるわけか」
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「うーん、そうもいかないのか」
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「あのうですね、そういった話ではなく、研修を受けてこれからの指導に役立つことはなかったのですか?」
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「やはり佐田さんのいう、被害を最小にして認証を受けるにはどうするかということだね。そのためには岐阜工場で私が即興で作った環境側面評価のエクセルのワークシートのようなものを作って工場や関連会社に提供するとか、ここにいる間に我々にできることはたくさんあるように思ったよ」
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「わしはエクセルが苦手だが、3年目標とか通勤の側面が必須とか、ナガスネで認証する際の必須要件をまとめてその対応方法などをまとめるとかしよう」
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「ぜひともお願いします。それはみなさんが出向して審査員になったとき非常に役に立つと思いますよ」
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「とはいえ、それが遵法向上とか事故防止には役に立たないようだ」
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三人は力なく笑った。
●
佐田は片岡を伴って● ● | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「武田君、進捗はどう?」
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「環境側面は佐田さんに聞いた事故のリスクと法規制の該非、そして社長方針に関わることというチェックリストで決めました。あの方法は簡単ですよ、30分もかかりません。それに理屈が納得できました」
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武田は表を見せた。
環境側面一覧表
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「おお、いいじゃないか」
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「でもね、この近くでもISO14001認証に向けて活動している会社はいくつもあります。そういったところでは、量と危険性とかに点数を付けて、その掛け算とか足し算をして一定点以上になったものを著しいとしています。こんな簡単な方法で大丈夫でしょうか?」
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「いや私も脇で見てそう思いました。岐阜工場でしたか、エクセルで簡単に作成する方法を佐々木さんが考えたと言いましたよね。あれを使えば別に手間もかからずにナガスネともめる心配もないのではないでしょうか」
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「長いものには巻かれろということもあるでしょうけど、ここではISO規格を素直に読んだ方法で審査を受けてもらいたいというのが私の狙いです。ここの社長にもそれはご理解いただいています」
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「それから目的目標の考えがナガスネとは違いますね。ナガスネでは著しい環境側面から目的にするかどうか○×をつけていましたが・・」
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「著しい環境側面から環境目的を選ぶとは思えませんが・・・・そもそも環境側面と目的は次元が異なるんじゃないでしょうか」
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「そうそう目的の考えがナガスネとは違いますね。ナガスネでは3年間の目標を『環境目的』、1年間の目標を『環境目標』と呼んでいますが・・」
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「ナガスネはISO規格を読んでいるのでしょうかねえ? あんな規格の理解で審査をしていれば苦情の山だと思いますけど」
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「武田君、世の中は無理が通ると道理引っ込むようで、ナガスネ方式は他の認証機関やISOコンサルにも広まっているようです。ああいった方法は理屈とは関係なく説得力があるようです。特に環境側面を点数で決めるのはデファクトスタンダードになりつつある。 もっともNC電気のように、猫を負うより皿を引いた会社もあるけど」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「はあ? 皿を引いたとは?」
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「NC電気は、ナガスネの審査に呆れて、別の認証機関にしたそうだよ」
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「しかしそのためNC電気からはナガスネに出向することができなくなったという。そこんところはどうなのだろうか?」
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「私も良く知りませんが、結局業界団体の付き合いではなく、真に環境管理を良くすることを選んだのではないでしょうかね。 仮に出向者を20名出すとして、部長クラスだから年収1000万としてその半分を出向先が補てんするとすれば、20名で人件副費を別として、1億の費用削減になる。 他方、会社のISO審査を別の認証機関にすることによって1億以上の価値があると判断したということでしょうか。あるいはナガスネで審査を受けると1億以上の無駄とか手間がかかると読んだのかもしれません」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「NC電気がどれほどの規模か分りませんが、ナガスネ方式はそれくらいてまひまがかかるのでしょうか?」
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「私も良くは知らないけど、仮に30事業所あるとして、一事業所300万ということは他の認証機関に比べて少なくても半人分余計な手間がかかるということだ。ナガスネ方式を思うと、それは十分ありえるというか、それ以上の無駄手間がかかると思われる」
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「なるほどなあ〜、ゆくゆくナガスネに出向する身とすれば、あまり耳にしたくない話ではある」
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「片岡さんには申し訳ないが、我々にとってナガスネの規格解釈は難関というか障害物です。もちろんどんな仕事にも障害があるわけで、それをクリアするのが仕事ですが」
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「環境管理部に来て塩川課長を始めいろいろな人の話を聞くと、出向先の評判が悪くて嫌気がさすよ」
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「正直同情しますね。いくら片岡さんが頑張っても、向こうのトップを変えることも、会社としての考えを改めることもできないでしょうからね」
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片岡は無念そうにうなずいた。
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「もちろんみなさんも悩みはあるでしょうけど、私も佐田さんに乗せられてナガスネで審査を受けるのを後悔してますよ。BB社なら今頃安心していられたのにと思います」
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そういう武田は言葉ほど佐田を恨んでいないようで笑っていた。
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今日、佐田は片岡と共に横山のウケイ産業に来ている。● ● 相手はウケイの黒田部長 と、佐藤課長である。
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「佐田さん待ってたよ、もう仕事は終わってしまってさ、これから何をするのかと途方に暮れていた」
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「そういうのは途方暮れるとは言いませんよ。順調すぎるというんです」
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「いやはや、佐田さんの指導が良くてさ、もうISO対応はバッチリですよ。今までにしてなかったものとしては環境側面と環境監査くらいかな。監査は今年から品質と環境を合わせて行うことにしたし、教育もマネジメントレビューも合わせて行うことにした。その結果、新たな仕事がない」
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「脇から口を挟んで恐縮ですが、お宅では環境側面をどのようにして決めたのですか?」
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「佐田さんの指導で、該非判定だけです。法規制に関わるもの、事故やトラブルが起きる恐れのあるもの、そして費用的に大きなもの、まあそのいずれかに該当するものは著しい環境側面というわけです」
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「審査で問題になる恐れはありませんか?」
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「はあ? 規格通りと思いますので問題になると思う理由がありません」
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「片岡さん、その心配はまったくありません。規格を読めば著しい環境側面とはその程度のものなのです。そして実はウケイさんが審査を受けるBB認証機関ではお墨付きの方法なのです」
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「そうしますと著しい環境側面の決定というのはそんな方法で良いのですか!」
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「片岡さんは審査員研修で著しい環境側面とはどんなものかと習ったのですか?」
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「いろいろなことを言ってましたが、つまるところ何なのでしょうかねえ。そういえば環境側面とはなにかという解説を聞いた記憶がありません。 そうだそうだ、確か須々木という講師は、環境目的は環境側面から選ぶって言ってましたね」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「ちょっと待ってください。環境目的って改善テーマですよね。環境側面は改善テーマとは違うでしょう。環境側面は問題が起きないように管理しなければならないことのはずですよね」
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「うーん、そう言われると確かに。環境側面は環境に影響する要素で、環境目的は環境方針から導き出されるとあったなあ。待てよ、須々木講師は環境目的を決めるとき、環境方針から導き出さすとは言わなかった。須々木講師の話では環境方針はどこにもつながらなかった。あれもおかしな話だ」
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須々木講師が教えた流れ
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「規格を素直に読めば、方針が初めにあって環境目的が導き出されるんじゃないですかね」
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規格に書いてある流れ
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「なるほど、とするとどう考えても須々木講師の話はおかしいなあ」
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「ともかくウチはそんな難しいことは考えなしでやってます。目的だって毎年親会社から | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「え、環境目的を素戔嗚グループの環境計画そのまま当てはめているのですか?」
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「そうですが、何か変ですか?」
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「だって、論理的におかしくないですかね? 環境目的とはその会社の側面に応じて決まるわけですよね?」
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「定義から環境目的は環境方針から導き出されるとありますよね、そして方針はその組織が属する広い企業体の方針の枠内で、上位の承認を得て定めることが望ましい(ISO14001:1996A3.1)とありますから、佐藤課長のおっしゃることは論理的にはそのものズバリです。というか素戔嗚グループの環境計画というのはISO規格の流れを先取りしたものであると思えませんか?」
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「うーん、そう言われると素戔嗚電子が工場や関連会社のパフォーマンスを集計し、社会の要求や法規制の動向を踏まえて方針と目標を定めて環境計画を作り、それに基づいてグループ企業が活動するように指示するということは規格の構成そのもののようですな。 いや、そうすると環境目的が3年という件ですが、当社グループの環境計画が規格を満たしていないということになるのか? だとすると、個々の事業所がその対策をするのではなく、環境計画を見直して3年を確保できるようにしなければならないことになる」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「片岡さん、それはおかしくありませんか。そもそも企業は事業推進のためにいろいろな計画を立て投資をし、開発をして製品やサービスを社会に提供していきます。そのとき立案する計画が長い短いと外部から言われる筋合いはありません。そんなこと企業が決めることであって、場合によっては短期間かもしれないし、場合によっては長期にわたることもあるでしょう。3年という根拠がありません。 変なたとえですが、法改正があってそれに対応するための目的を決めたとするでしょう。でもそれは法施行までに対応しなければならないわけで、1年以内に完結しなければならないかもしれない。そのとき3年という縛りはどんな意味がありますか? それにISO規格をどう読んでも3年という文言はありません」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「なるほど、そしたらどうすればいいのだろう?」
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「当社では、そんな難しいことは考えません。審査の際に素戔嗚グループの環境計画を見せて、適合判定をしてもらうというだけのことです」
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「だが、3年スパンの計画がないと不適合だという認証機関があるのだから・・」
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「まあ、それはそういう認証機関で審査を受ける会社が考えれば良いことで。我々はBB社で審査を受けるので、そのような問題は起きませんから」
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「これもナガスネ特有の問題なのか・・・・」
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「ところで、環境マニュアルはいつ提出するのでしょう?」
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「先々週、内部監査をしまして、そのとき是正処置の記録がマニュアルドラフトにある書面だけでなく、会議の議事録なども含まれるということが分りましたので、その改定などをしまして、もう提出できる状況になりました」
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「審査は再来月でしたね?」
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「ええ、再来月審査ですって!」
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「そうです。ひょっとすると当社が素戔嗚グループでトップですか? 岐阜工場よりも早いでしょう」
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佐藤課長は自慢げに言う。
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「余計なことを考えず、規格だけを素直に読めば、会社の従来からの仕組みそのままで審査を受けられるということです。ナガスネでない認証機関の審査ですから、ぜひ見学に来ましょう」
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佐々木と佐田は静岡素戔嗚に来た。環境側面の決定は佐々木の作成したエクセルシートであっというまだった。とはいえ元々自分たちが重要だと考えている項目を著しい環境側面にするだけであって、意味のない仕事ではある。パソコンを動かした電気と時間とプリントアウトしたPPC用紙はまったくの無駄だ。ISO認証とは環境に悪いことをすることか
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「環境側面に通勤を含めましたか?」
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「入れ込みましたが、管理も影響も与えられないとして除外しました」
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「いいんじゃないですか。一応考慮したという証拠があれば」
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「でもさ、通勤を含まないといけないなんてどこに書いてあるのでしょうかね?」
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「オウム真理教事件のとき、オウムの考えはオウムに聞かなくちゃわからないなんてセリフを語った人がいましたが、ナガスネの考えはナガスネに聞かなくちゃわかりませんよ」
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オウムのサリンテロは1995年、1997年当時はまだ記憶に新しいというか、逃亡犯の指名手配やその報道など、まだオウム事件冷めやらぬ時期であった。
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「案外、ナガスネに聞いたらナガスネも分らないかもしれませんね」
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「もっともですね、次に環境方針は3年というのは大丈夫ですね?」
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「素戔嗚グループの環境計画とは無関係に適当に作りましたわ。どうせ審査のときありゃいいのでしょうから」
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「それでけっこうです。プログラムは目的のプログラムと目標のプログラムを作りましたよね?」
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「ナガスネ流だからしかたなしに作りました。でもさ、目的を目標に展開しているわけだから、目標のプログラムを作るはずだよね。目的のプログラムを作るって考えが理解できないな。だいたい論理的に矛盾だよね、ナガスネどんな考えをしているものかアハハハハ」
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「ナガスネ流、ナガスネ流」
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「ナガスネ大明神ですな。いや泣く子とナガスネには勝てないっていうことでしょうか」
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「ナガスネの人たちってISO規格を読んでいるのですかね。まあ、彼らの言うことを何でも聞いてご意向に沿うようにするのが私の仕事なんですけどね」
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「しかし結果として、ここと岐阜工場のアプローチとここのアプローチはほとんど同じになってしまったようですね」
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「確かに、まあそれも試行錯誤の結果、収斂してきたと考えれば、試行して良かったということでしょう」
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「マネジメントシステム物語37 ISO14001指導 その2」について おばQ様 いつも更新を楽しみにお待ちしております。 この間、 『間違いがありましたら、ご指導のほどよろしくお願いします。』 とのことでしたので、間違いというか気になったポイントをご連絡します。 マネジメントシステム物語37「ISO14001指導その2」にて、佐田さんが佐々木さんと片岡さんに対して資格取得を促しておりますが、甲種危険物の資格は受験資格があったかと思います。 事業の内容、お二人の経歴からも化学を専攻していた又は化学の学科を卒業していた又は乙の資格を取得し2年以上の実務をこなしていたという経歴は想定できないのではないのでしょうか? https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/qualified01.html 確かに平成17年ぐらいの時に、国家試験を不正受験という問題が発覚するまでは、企業ではあたりまえのようにこのような不正受験が行われていたのかもしれませんが・・・ |
レイシオ様 毎度ありがとうございます。 おばQの不覚であります。ご指摘いただきまして、甲種を乙4に修正しました。 言い訳ですが私も同僚も不正受験などには関わりありません。私も周りの人も、我が家の豚児でさえ、甲種を持っているので誰でも持っているのが当たり前のような気がしてしまっただけです。 ちなみに息子は、高校のとき乙4を取って、大学時代アルバイトしたのを経験として甲種取ったようです。 |