マネジメントシステム物語58 文書管理ヒアリング

14.06.08
マネジメントシステム物語とは
佐々木と佐田は総務部の文書課に来ていた。文書課とは付き合いはないが、だいぶ前のこと本社総務で保管していた古いPCB機器の届が漏れていることが発覚して大騒ぎになった。そのとき佐田が手続きや行政対応をした。佐田にとっては大したことではないが、結果として総務部に貸しができたことになる。もちろん仕事は貸し借りなど関係ないのはもちろんだが、貸しがあれば頼みやすく、借りがあれば断りにくい。総務部長に当社の文書管理やシステムについて相談したいというと文書課に話しておくと返事が来た。
文書課長文書課長 が対応してくれた。
佐田
「お付き合いいただきありがとうございます。私どもでは当社グループの環境管理体制を見直そうといろいろ調べているのですが、分らないことが多いのです。本日は会社の規則について教えていただきたいのです」
文書課長
「何でも聞いてください。担当していることなら即答できますし、分らなくてもどの部門が担当しているかは教えられると思います」
佐田
「ありがとうございます。まずお聞きしたのは文書体系についてです。当社の会社規則は4ケタの番号がつけられています。最初の数字は業務のくくりで、ええと1は総務でしたね、2が人事、3が経理、4が・・」
文書課長
「4が営業、5が資材、6が設計、7が製造、8が支援業務、9と0は空き番ですね」
番 号大区分中区分小区分
1000番台総務  
2000番台人事  
3000番台経理  
4000番台営業  
5000番台資材  
6000番台設計  
7000番台製造  
8000番台支援業務環境管理
計測器管理
・・・
 
9000番台空き番
0000番台空き番  

佐田
「そういった区分はだいぶ古くなったように思うのです。現在は業務の境がなくなったものもあり、また情報システムや我々環境のような新しい仕事も現れていますし・・・」
文書課長
「まあお気持ちはわかります。でもね、会社のシステムとは何かと言えば、会社規則集だとも言えます」
佐々木
「ほう、会社規則集は会社のシステムなのですか!?」
文書課長
「佐々木部長さん、大げさな言い方だと笑ったでしょう。そんなことありませんよ。
システムって情報システムなんて言い方が今ではメジャーかもしれませんが、語義的には体制とか制度のことです。会社規則はまさに会社の組織体制を決め、組織各部門の役割を決め、仕事の手順を決めているわけですから、システムそのものです」
佐々木
「会社規則集がシステムそのものとおっしゃいましたが、どうなんですかねえ〜、そういうことを決めるのは役員会なりでしょうし、会社規則集はそれを書き止めただけでしょう」
文書課長
「形式的と思うかもしれませんが、現実の世界では紙に書かれたものがすべてなのです。神が本当は何を語ったか分りませんが、後世の人々が神の言葉として書きしるした聖書が信仰の根源です」
佐々木
「課長さん、わかりました、わかりました。
会社規則集は当社のシステムそのものだとしてですね、それがどうつながるのですか?」
文書課長
「システムというのは簡単に変わらない、変えられないものなのです。社会制度はめったに変わらないことによって信頼を受け、社会制度たりえます。法律がしょっちゅう変わったら守る人がいません。それから変更はとてつもない労力を必要とします。
また先ほど佐田さんがおっしゃったものは、まことの業務の区分なのでしょうか? 例えば情報システムは総務、人事、設計と並ぶのではなく、それらの仕事をするための支援業務というかインフラと思えますね」
佐田
「確かにそう言われるとそのようにも思えます。でも現状の文書体系には情報システムというカテゴリーはなく、それらに関する規則は・・どこでしたっけ?」
文書課長
「総務の文書管理のカテゴリーにあります」
佐田
「情報システムは総務部のお仕事ではなく、文書管理でもないように思えますが・・」
文書課長
「確かに組織は技術管理部門に所属していますし、文書管理と言えないかもしれません。しかし情報システムとは情報の伝達、保存というプロセスでしょうし、コンピューターが現れる前はそれらはすべて文書というか書き物であったわけです。口頭の指示命令が会社とか組織であるわけがありません。ということですから情報システムが文書管理に入るのはおかしくありません。あるいは文書管理というのを時代に合わせて情報管理とか情報システムと名称を変えた方が良いのかもしれません」
佐田
「確かにそう言われると情報システムが文書管理の範疇であることに納得します。でも、総務部門のお仕事ではないでしょう。現実に総務ではなく技術管理の中にあるわけですし・・」
文書課長
「コンピューターを最初に使ったのは技術部門で用途は技術計算でした。しかし情報処理装置としては経理業務が最初です。ですから当社では昔は情報システム部門は経理にありました。自分が使う機器や文書をメンテするのは自分がするという発想はおかしくありません。
しかし会社全般にわたる情報システムとして、あるいはメールやイントラネットも使われるようになると経理部門にあるのはおかしいですよね。ですから管理部門である技術管理部門が所管するようになりました」
佐田
「でも総務部とは違いますね」
文書課長
「総務のお仕事ってなんだかご存じでしょうか?」
佐田
「私たちが住んでいるビル管理とか、規則などの文書管理、株主対策、勤怠・・いやこれは人事かな、そういったことでしょうか?」
文書課長
「結果的にはそうでしょうけど、総務のお仕事というのは『他部門がしないこと』なのです」
佐々木佐田「はあ?」
文書課長
「総務部の職掌は他部門がしないことすべてなのです。そしてその仕事は常に変わります。というのは仕事は時代とともに変わります。消えていく仕事もありますし、どんどん大きくなって新しい部門ができていくこともあります。
また規模が小さな組織では、多くの業務を総務部門が抱えることになります。小さな工場では人事も経理も、場合によっては資材も環境管理も総務部にあることは珍しくありません。
青写真 図面管理なんて今ではどこの工場でも技術部の技術管理部門、まあ課レベルでしょうけどそういったところがしています。しかし昔々は総務の文書管理部門が担当していた時代もあります。私はまだ入社していませんが、昭和30年代は乾式コピーどころかジアゾコピーもなく、青写真てご存知ですか? トレーシングペーパーにすみ入れしたものを感光紙の上に置いて日光に当てて焼いた時代もあったのです。そういうことをしていた人が私の先輩にいました。そのときは総務が図面を焼いていたのです。
情報システム部門は本来総務部にあるべきなのだけど、組織がある程度大きくなって分家したと思うか、技術内容からして技術管理部門が管理した方が良いと判断したと考えればおかしくありません。
ということで文書の分類番号が総務の区分である1が付くのは当たり前なのです」

佐田と佐々木はあっけにとられて聞いていた。

文書課長
「1970年代初めに公害防止関連ができました。ご存じかしれませんが昔々廃棄物管理も総務がしていたのです。ですから当初公害防止というのは総務が担当すると考えられたそうです。1975年頃に作業環境測定の法律ができましたが、それは安全衛生に関することだから当然総務のお仕事でした。しかしそういった仕事は現場との関係が強く現場と連携しないと公害防止も廃棄物削減もそして作業環境も改善できないことがわかりました。それでそういう業務の管理は製造部門に移りました。
しかし1990年代に環境規制がいわゆる公害防止だけでなく省エネや省資源そして製品の環境性能までを含むようになると製造部門では手に負えません。当社も皆さんが所属する環境管理部門を新設してそれを所管させることになりました。しかし私の見るところまだまだ環境全般を指導統制しているとは思えません」
佐田
「と、おっしゃると?」
文書課長
「現在の職務分掌の切り分けが不適切なのか、あるいは環境管理部と工場やその他の部門とのコミュニケーションが不十分のように思えます。それは個人や部門レベルの問題ではなく、システム的な問題のような気がします」
この女、オバサンの姿をしているけど恐ろしく観察しているものだと佐田は思った。
佐田
「あの、個々の質問というよりも、雑談的にいろいろとお話をお聞かせしていただいた方が良さそうですね、今環境管理部は、当社の環境管理を改善していこうと考えているわけです。その一検討課題として環境管理の文書体系とか会社規則の構成などを見直したら管理レベルが上がるのではないかと考えています。それで文書管理の専門家にお聞きしようとしたのがことの始まりです」
文書課長
「文書体系からいきましょうか。先ほど言いましたように、当社の文書体系はおおもとになる業務区分ごとに番号が振られていきます。それは単に見た目で区別しやすいというだけでなく、決裁者がそれによって決まっているのです」
佐々木
「決裁者が決まっているとは?」
文書課長
「会社規則の決裁者は取締役です。取締役の決裁は形式的と言えば形式ですが、実質はその担当部署が内容をチェックしています。例えば情報システムに関する会社規則は1000番台ですから総務部長が内容をチェックして総務担当取締役が決裁します。総務部長はその改定内容や改定の意図をみて適正かどうかを審査するわけです」
佐々木
「ええと、私ども環境管理部の作る規則は頭が・・」
文書課長
「環境管理の会社規則の頭は8ですね、支援業務というとおかしいですがインフラ的要素だからです」
佐々木
「そうしますとその決裁者は?」
文書課長
「総務は他部門がしない仕事をするわけですから、当然8000番台は総務部長が審査、総務担当役員が決裁となります」
佐田
「環境担当役員というものが決まっていますから、環境担当役員ではないのですか?」
文書課長
「文書管理上の決裁者は総務担当役員です。お宅が環境管理の会社規則を作ったり改定するときは、担当者、課長、部長の次に環境担当役員が検認をして、総務部に送り、総務担当役員が最終決裁になるわけです。形だけと言えば形かもしれませんが、業務の位置づけを考えるとそれはおかしくないでしょう」
佐田
「なるほど。ええとそういう現実を踏まえて考えると、逆に環境管理を文書体系上独立させたら環境管理の筋が通るようになるようにも思えますね」
文書課長
「それはどうでしょうか? 番号体系を変えて何が変わりますか?」
佐田
「先ほど文書課長は『1990年代に環境規制がいわゆる公害防止だけでなく省エネや省資源そして製品の環境性能までを含むようになると製造部門では手に負えなくなって環境管理部を作った』とおっしゃった。環境管理部が設計に対して環境配慮設計をするように指示するにしても、現行の会社規則では設計区分の、ええと・・」
文書課長
「設計の会社規則は6000番台です」
佐田
「そうそう、6000番台を制定することができません。つまり環境として独立した番号体系を持ては、全部門に対してこれを適用するぞと言えることになります」
文書課長
「会社規則は番号に関わらず、全社員はすべての会社規則を遵守しなければなりませんよ、それこそ就業規則に決めてあります。遵守しない者は懲戒処分となります。
環境の決まりが8000番台で6000番台には環境のきまりがないから、設計者が環境についての会社のルールを守らなくても良いということはありません」
佐田
「そうではありましょうが、例えば設計にはデザインレビューの規則があります。その会社規則の中に環境性能とかを盛込めばより一層業務における環境対応が進むと思いますけど」
文書課長
「佐田さん、おっしゃることはわかるような気がしますけどね、ちょっと違うようにも思います。
例えば環境という仕事があるのかと考えてみてください。そういうものが存在すると思いますか?」
佐々木
「現実に環境管理部は存在していて我々はまっとうな仕事をしているよね。環境管理部の仕事がバーチャルということはない」
文書課長
「お宅のお仕事にはどんなものがありますか?」
佐々木
「環境パフォーマンス向上の指導や統制がある。つまり省エネとか廃棄物削減とか、水を減らすとか・・」
文書課長
「それは工場管理部門とか総務部門の本来業務ではありませんか?」
佐々木
「そう言われるとそうかもしれない。また環境監査というのもしているよ」
文書課長
「ご存じのようにそれは監査部の下請け業務でしょう」
佐々木
「まあ、そうだね。広報もしている。毎年環境報告書を作り、ウェブサイトも作っている。環境活動についてトピックスがあれば広報もしている」
文書課長
「それって広報部のお仕事です。実際に環境管理部単独でしてはいないでしょう。お宅は資料などの準備だけで広報を取り仕切るのは広報部です。広報部のお手伝いではないのですか?」
佐々木
「まあそうだね」
文書課長
「設計部門なら顧客あるいは営業から出された仕様を満たすものを作るという仕事は、まさに己のお仕事です。アウトソースしようとも設計という仕事はなくなりません。資材なら物を買うという仕事もなくなりません。
環境のお仕事というのは実は独立した仕事ではないのではないですか?」
佐田
「いやはや、ちょっと聞きづてならないと思いますが、良く考えてみると確かに私たちの仕事は独立したものではなく、元々担当すべき部門で内部化されれば、私たちの仕事も部署もなくすべきかもしれませんね」
文書課長
「最近CSRなんて言葉が流行っています。ええとコーポレートソーシャルレスポンシビリティでしたっけ。企業の社会的責任なんて訳されていますね。昔は会社というのは法を守っていれば良いと思われていました。それが現代ではそれだけじゃ足りない」

文書課長が最後まで言う前に、佐々木が後をついだ。
佐々木
「確か、組織活動が社会へ与える影響が大きくなってきたから、多様なステークホルダー、具体的には消費者、投資家等、近隣住民そして社会全体への配慮と説明責任があるというような意味でしたね」
文書課長
「そうです。ではCSR部門というのを作るべきでしょうか?」
佐々木
「うーん、CSRというのはお仕事ではなく思想、考え方だろうから、そういう考えを社員が持てば済むことではないのだろうか?」
文書課長
「私もそう思います。CSRというのはここ数年言われるようになりましたが、日本では何百年も前からそういう発想はありました。『三方よし』なんてのもありましたね。あれってそのままCSRですよ」
佐田
「すると環境管理というものも各業務において環境に関する意識が浸透すればそれをとりまとめる部門はいらないということですか?」
文書課長
「そう思います。もちろん廃棄物処理の仕事はなくなりませんよ。でも廃棄物処理なら総務課とか工場管理部門がすればいいことでしょう。毎年お宅では様々な行政報告などをしているでしょうけど、行政報告は環境ばかりではありません。他の部門だってあるのです。環境のお仕事と思っているPRTR報告は製造部門とか総務がしてもおかしくない。エネルギーの報告もありましたね。あれも環境部門がしていますが、元々は生産技術部門がしていました。
公害防止統括者とか公害防止管理者というのをご存知ですよね?」
佐々木
「そういったことは我々の専門ですよ」
文書課長
「あらごめんなさい。ああいった法で定める資格者や責任者をおく仕事というのは環境ばかりじゃありません。法律の数だけあります。安全管理者、衛生管理者、作業環境測定士、そういった方で定められた責任者とか有資格者も工場や会社で取扱いのレベル合わせが必要でしょう。現在はその種類によっていろいろというかバラバラですから」
佐々木
「なるほど、環境だけ考えても視野が狭いですね。会社の仕事全体を見て考えないといけませんね」
文書課長
「先ほども申しましたが、1990年代初めに環境管理部を作ったとき、各部門がしていた仕事で環境に関わるようなものをかき集めたといういきさつもあるのです。本当にこれは環境部門がしなければならないという仕事はそんなにないのではないでしょうか? まったくないのかもしれません。
先ほど佐田さんが言っていた設計のデザインレビューの規則に環境に関することを盛込むことは必要なことでしょう。でもそれは環境部門がしなくても、設計部門の人たちに対する環境性能の要求が高まれば否が応でもすることになります」
佐々木
「なるほど、そう考えると私たちの仕事というのは無用なものだったのか?」
文書課長
「無用ではありません。必要ですし重要なお仕事です。でも独立したカテゴリーではないだろうということです。
話が出たついでですからCSRについて言えば、今大手企業ではCSR部門を作るのが大はやりです。ところがCSR先進企業と言われるところではCSR部門がないそうです。CSRが浸透した会社ではそんな部門いらないということは、浸透させるために時限立法で担当部署を作るという発想もあるでしょう。
環境管理部門は現在のように京都議定書対応とかリサイクル規制その他の大変動時期だからこそ部門として必要であり、将来的に国家的にも企業においてもすることが決まり運用が固定化すれば部門としては不要になるのかもしれません。まあ半分想像ですけどね」
佐田
「課長さん、もう十分いろいろとお聞きしました。あまり満腹ですと咀嚼できませんから今日はこれくらいにさせてください。
あっと、つまらないことをお聞きしますが、会社規則ではどうして第二項に②(まるに)と書いて、第一項には①(まるいち)と書かないのですか?」
文書課長
「当社の会社規則は法律の書き方に則っているのですよ。
法律で条、項、号と階層化され、項については第一項の表記をしないのでそれに倣っているのです」
佐田
「我々素人には①があったほうが分りやすいですね」
文書課長
「慣れると同じですよ」
文書課長は取りつく島もない。


文書課を出ると佐々木は環境管理部に帰ろうと歩き出したが、気が付くと佐田が反対方向に歩いて行く。佐々木は佐田を追いかける。
佐々木
「おーい、佐田さん、どこに行くの?」
佐田
「技術管理部ですよ」
佐々木
「技術管理部! それまたどうして?」
佐田
「当社で文書管理と言えば、会社規則は総務部ですが、それ以外の図面や設計基準などの元締めは技術管理部ですからね」
佐々木
「でもそれらをひっくるめて文書管理の元締めは総務なんだろう?」
佐田
「総務部はそう自認していますが、現実問題として大量の文書を扱っているのは技術管理部です。会社規則よりも図面の方が多いのは明らかでしょう」
佐々木
「監査と同じく裏を取るという奴か」
佐田はニコニコしている。
技術管理部に入ると、佐田は迷う気配もなく年配の人小山内さんのところに歩いて行く。
その人は佐田の姿を見ると立ち上がり、あっちに行こうという身振りをする。佐田と佐々木はその後について打ち合わせ場に座る。
佐田
小山内おさないさんお忙しいところすみませんねえ〜」
小山内と呼ばれた男はニコニコして
小山内さん
「忙しいなんてことはないよ。俺は退職まで半年を切ったよ。仕事は引き継いだし毎日がヒマでたまらんわ」
佐々木
「初めまして、佐々木と申します。佐田さんはこちらの方と古い付き合いなのですか?」
佐田
「小山内さんは文書管理の権威として、全社にそのお名前が響き渡っています。私が本社に来てISO9001の認証指導をしたとき、いろいろとご指導いただきました。あれから、ええと8年くらいになりますかね」
小山内さん
「時が経つのは早いものだ。もう俺の頭には文書管理なんてないぞ。俺はさ、引退したら房総にマンションを買って毎日ブラブラするつもりなんだ。そんなことばかり考えているよ」
佐田
「まあまあ、そんなことをおっしゃらずに」
小山内さん
「どんなお話かな?」
佐田
「環境管理体制を見直し、つまり改革していこうと考えているのです。その中に環境関連の文書、会社規則とか環境業務従事者のテキストのあるべき姿とか考えているのです」
小山内さん
「なるほど、それで俺になにか意見がないかというわけだ」
佐田
「その通りです。大きなところとして現在環境関連の会社規則の番号もなく、決裁者も総務担当取締役ということになっています。単純に考えて環境だけの文書体系があってしかるべきで、決裁者も環境担当役員にするべきかなと思うのですが」
小山内さん
「あるべき姿を考えることはいいことだけど、往々にして自分たちの仕事の拡大を目指したり、権益と結びつきやすいな」
佐田
「権益とは大げさですね」
小山内さん
「そうでもない。かって情報システムをどちらが担当するかと、総務と技術管理で綱引きがあった。今情報システム関係では、子会社を作ったり下請を使ったり拡大するばかりだ。ということは出向先の確保もあるし、予算金額を考えると、誰でも自分のものにしたいと考えるだろう」
佐々木
「なるほど、でも結局技術管理になったわけですね」
小山内さん
「まあ、現実の業務を見れば技術的なものがなければ管理できないから、妥当なところだろうね。
ところで君たちがいる環境管理部というところは現時点出向先もなく、部長になっても定年になれば他の事業所のお情けで受け入れてもらうとか、すっぱりと辞めるかしかない。天下り先の確保をしたいという気持ちはわかるけどね」
佐田
「うーん、そこまで勘ぐられると困ってしまいますね。そんな意図は全然ありませんよ」
小山内さん
「佐田君の言葉を信じよう。ところで文書体系を変えると環境管理が良くなると思われることがあるのかい?」
佐田
「まず今はその他一同というところに環境管理の規則がありますから、それを一つの体系となれば、具体的には規則の番号として1000番台を得られれば見た目も違うでしょう」
小山内さん
「環境が中区分から大区分になれば管理が良くなるとか、環境が尊敬されるとでも思っているのか?」
佐田
「正直言って環境業務というものが、今以上に社内で認知されたいとは思っていますよ」
小山内さん
「規則体系が変わっただけで認知されると思うか?」
佐田
「環境の規則がどこにあるのか探すのが大変な今よりは知られると思いますが」
小山内さん
「環境に限らず自分がしている仕事が、周りから重要な仕事だと思われたいというのは誰もが同じだと思う。しかし別に会社規則の区分とか位置づけってのは関係ないだろう。営業なら売上、設計なら売れる製品を作る、環境なら費用削減とか事故違反がありませんといった方が直接的だし会社に貢献すると思うがね。
それにさ、どう考えても営業とか設計と同列に環境が一家を成すとは思えないねえ〜」
佐々木
「確かに営業というお仕事、設計というお仕事と比較すれば、環境が同格とは思えませんね」
小山内さん
「重要性が同格なんてものじゃないよ。当社の仕事というのは定款にも書いてある通り、電気製品を作って売ることなんだ。環境というのはそれを行うための支援業務というか付帯しているに過ぎない。
ともかく環境管理レベル向上と文書管理、特に会社規則の位置づけなんて無関係だと俺は思うよ」
佐田は苦笑いして立ち上がった。
佐々木は立ち去る前に佐田が総務の文書課長にした質問と同じことを聞いた。
佐々木
「つまらないことをお聞きしますが、会社規則ではどうして第二項に②(まるに)と書いて、第一項には①(まるいち)と書かないのですか?」
小山内さん
「まあ端的に言えば総務の意地ってところかなあ。俺も含めてだけど各部門から分りにくいから第1項から①を付けようという声は以前から上がっている。だけど総務は法律の書き方に準拠すると言って直さない。彼らは世の中の契約書だってそうだというけど、そんなつまらんことにこだわらずに改善すべきだと俺は思う。技術文書の書き方とか様式についてはJIS規格もあるし、論文の書き方も項番のとり方も定型化しているだろう。当社の会社規則の項番のとり方なんて、今風じゃないよ。昔からの伝統にこだわらずに一般的な現代人に通じるものにしてほしいよね。まあ、おれはもう関係ないけど」
佐々木は小山内の言葉にうなずいた。

うそ800 本日の・・・
本日は思いつかなかった



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