マネジメントシステム物語61 関連会社部ヒアリング

14.06.19
マネジメントシステム物語とは
今回は、佐田と佐々木は関連会社部に行って、関連会社の環境管理とそれに対して環境管理部が行っていることについての意見を聞く予定だ。関連会社部の曽根原さんという人にアポイントをとっている。関連会社部も監査部と同様に、部長級やそれ以上の職階経験者ばかりだ。曽根原さんもどこかの工場で副工場長をしていたと聞く。

関連会社部に入って、入り口の人に曽根原さんの席を聞くと、その人は立ち上がってオフィス内を見渡してみたものの見当たらないようだ。行先表示板を見て、ちょっと待ってと言って立ち上がり、そばの会議室のドアを叩く。ドアが開き中から一人の年配者が顔を出した。一言二言話すとその年配者が佐田のところに歩いてきた。
曽根原
「佐田さんですか、曽根原です。申し訳ないが、ちょっとお客さんが来てしまって・・・そうだ、一緒に話を聞いてもらえば好都合だな。すみませんが顔を出してくれませんか」
佐田と佐々木は状況が分らないものの、曽根原について会議室に入った。中にはがっしりした体型の人大越がいた。
曽根原
「大越さん、こちらは環境管理部の佐々木さんと佐田さんです。こちらは素戔嗚すさのお東関東販売の大越さんです。ちょっと大越さんからISO認証の相談がありまして、私がお話を聞いてから環境管理部に相談に行こうかと思っていましたが、ちょうど良かった。一緒に話を聞いてください」
佐田も佐々木も急ぐ旅でもないし、今日は一般論を聞こうと思っていたところなので関連会社の相談事を聞くのもためになるかと思い何も言わずに名刺交換をする。大越氏の肩書は総務課長とある。
曽根原さんは会議室から顔を出して外に向かってコーヒーを4つ頼むと声をかけた。いまどきどの職場でも客に出すコーヒーなんて自分が給茶機から持ってくるものだが、大越さんが社外のお客さんなので頼んだのだろう。あるいは曽根原さんはそんな立場なのだろうか?
その間に佐田、佐々木、大越は椅子に座りなおした。
曽根原さんが部屋の中に戻って椅子に座り話を始めた。
曽根原
「大越さんの会社は、千葉、茨木、それに栃木の一部を商圏にしている販売会社です。最近お客様からISO14001認証してほしいと言われたので認証を検討中ですが、社長が絶対に認証費用を回収しろと言っているということです。ところが大越さんが近隣の同業者やISOの専門のコンサルタントに問い合わせたりしたそうですが、ISO認証の費用を回収するなんて無理だと言われたそうです。それで私のところに相談に来られたわけです」
大越
「弊社の従業員は130名くらい、事業拠点としては本社と支社がみっつあります。聞くところによりますと、そのくらいの規模ですと毎年40万とか50万ほど認証の費用がかかるそうです。企業においては税金でもなければ、支出に見合った売り上げ増加など投資対効果がなければなりません。ところが他社の話を聞くとISO認証はどうも費用を回収できないようです。どうすれば良いのかそのあたりをご相談したかったのですが」
佐田にとっては簡単な質問だった。すぐに口を開く。
佐田
「ISO認証する目的は大きく分けてふたつあります。
ひとつはお客様とか親会社から認証してほしいと要請された場合です。官公庁が入札条件にした場合もこれに該当します。もうひとつはISO認証によって会社の改善になるだろうと期待した場合です。
前者であればビジネスの必要条件ですから、投資対効果を考える意味はありません。言い換えると投資対効果は無限大のわけです。
投資対効果を考えるのは後者の場合だけです。そして後者の場合は、投資対効果がなければISO認証をしないという結論になるのは当然でしょう。
私から見れば悩む余地はまったくありません」
大越
「うーん、そう言われれば確かにそうなのですが・・・・お客様からの要望といっても必須なのか、あったほうが良いのか、認証したら認証していない他社に差別化できるのか、その辺があいまいですよね。
となればお客様の要望には応えなくてはならないが、無駄金を使うわけにはいかないので、やるからには元を取れというのも当然でしょうし・・」
佐々木
「現時点、私はISO認証したことによって、売り上げ増加なりコスト低減につながったという事例を知りませんね」
大越
「しかしですね、よくウェブサイトや雑誌に『利益に繋げるISO』なんて書いている人がいます。あれって利益を出しているから書いているのでしょう?」
佐々木
「確かにそういう宣伝は多いですね。でもそういう事例を見ると条件設定がおかしいというか、言っていることが変だと思うことが多いですね。例えばISO認証して省エネができたとか、法規制に気がついたなんてことを堂々と書いています。恥ずかしくないのかと思いませんか 笑
だって省エネってのは、ISOと無関係に会社の本来業務として推進するでしょう。無駄を省くのは当たり前ですから。そして法規制を知ること守ることは義務です。
そんなISO以前のことを書いているということは、実はISO認証による効果といえるものはないということなのかと逆に勘ぐってしまいますね」

大越はそうは言われてもどうするのかという顔をしている。
佐々木
「とにかく認証のメリットを金額換算するのがむずかしい。もし認証しないと事業が継続できないならメリットは無限大でしょうし、失注する場合があるならその確率をかけて金額で表すことができるでしょう。でも多くの場合はそのへんは分らないですね」
大越
「おっしゃることは分りますが、それじゃあ私としては一体どうするのかと悩んでしまいますね」
佐田
「失礼な言い方かもしれませんが、そのまんま社長さんに報告すべきではないのでしょうか。費用対効果がはっきりしなくてもビジネス上のことを考えて、認証するかしないかを判断するのは大越さんの責任ではなく社長さんの決断でしょう。なんでしたら本社の環境管理部がそう回答したとおっしゃってもかまいません」
大越
「ええと、ちょっと待ってください。環境管理部さんは、関連会社に対してISO14001を認証するように指示していたと思います。ですからつまり関連会社はISO認証しなければならないということでしょう」
佐田
「通知は出していますが、内容はちょっとというか全然違います。正確には、当社グループの企業はISO14001認証するか、同等の環境管理体制を構築するようにという内容です」
大越
「同等って言われても・・・・結局、ISO認証しかないわけでしょう」
佐田
「いやそうではありません。最近は簡易EMSといって自治体などが簡単なルールで認証を出す制度もあります。外部の人に頼ることなく、御社が自分たちはISO14001を超えたぞと自己宣言をするということもできます。あるいは自分たちがISOとか簡易EMSと無関係に、独自に環境管理の仕組みをしっかりしていることを確認することもあるでしょう」
大越
「とはいえ、それを外部の人が認めるかどうかということですね?」
佐田
「さっきの話に戻りますが、外部から例えばお客さんからISO14001認証しろと要求された場合は、そういったことで認めてくれるかどうかということが問題です。
しかし自分たちが会社を良くしようとする場合なら、ISO認証せずに自分たちが工夫して改善を進めておかしくありません。その方が地に足がついたことができるのではないでしょうか」
大越
「うーん、となるとやはりなぜ認証するのかという根本が大事ですね」
佐田
「そりゃそうですよ。だってすべては目的があって始まるわけです。目的が明確であればその目的をいかに効率的に実現するかを考えなくちゃならないでしょう。
ISO認証は目的じゃなくて手段です。真の目的を実現する最善策はISO認証でないかもしれません」
大越
「環境管理部はどんな方法でも良いのですか?」
佐田
「ご心配なく。環境管理部に対してなら、当社は大丈夫ですとさえ言えればいい。そしてそれが本当かどうかは2年ごとに行われる環境監査で我々が見るわけです。
おっとISO14001認証していても、環境管理に問題があればダメなわけですよ。そういう関連会社は多いのですけどね、困ったことです」
大越
「ということはお客様の要求が正確にはどうなのかですね?」
佐々木
「ISO認証しろとお客さんが要求した場合は、認証するしかない。そのときは認証することが目的になります。仕様だからこちらに選択の余地はありません」
大越
「なるほど・・・」
大越はノートに何か書き込む。
佐田
「決めつけては悪いですが、大越さんのご相談への回答はそれしかありません。メリット、デメリットそれには金額も入りますが、そういうものをマトリックスにまとめて社長ご決断!といくしかないでしょう。認証することによって儲けを出せと言われてそれが簡単に実現できるなら、日本の景気はバブル崩壊を脱しているはずですよ。
そういう情報でしたら今オフハンドでは言えませんが、私どもに来ていただければいくらでも資料はあります。これから私どもの事務所にいらっしゃいますか、それとも後で資料を送りましょうか」

 認証したとき認証しないとき
メリット外部に認証したという宣伝効果がある
入札などで優先される可能性
会社のルールを明文化できる
(元からあれば改善にならない)
審査費用が掛からない
特段文書を作成しなくて良い
無駄をしなくて済む
デメリット毎年審査費用が掛かる
文書を作成しなければならない
必要でないこともしなければならない
(無駄が発生する)
外部に認証したと言えない
入札などで劣後になる恐れ

大越
「今日は別件で御社を訪問しまして、ついでといっては何ですが曽根原さまのところに寄ったところでして・・・もう一度考えてから環境管理部さんを訪問するかどうかご連絡いたします」
曽根原
「まあ現実には、社長は決断することではなく、部下が持ってきた案を承認するだけだからなあ〜、
大越さんの気持ちはわかりますよ。大越さんはどちらかに決めてくれというふうにはいかないだろう。二案ありますがこちらを推薦しますという提案しかできないよね。
ともかく大越さんこの件に関してはそういうことでよろしいでしょうか?」
大越
「わかりました。うまい方法はないと・・・
ところでISO認証するとした場合、環境管理部さんは指導してくれるのでしょうか?」
佐田
「もちろんです。最近は新たに認証しようという会社は少ないですから、こまめにお宅に指導に行けるでしょう」
大越
「最近は少ないって? もうほとんどの関連会社は認証してしまったということですか?」
佐田
「ほとんどの関連会社というよりも、認証が必要な関連会社は認証してしまったということですね」
大越
「おっと、大事なことを聞くのを忘れていました。私どものような販売会社はISO認証しているところが多いのでしょうか?」
佐田
「販売会社といっても、純粋に卸売や小売だけの会社では認証しているところは多くはありません。しかし官公庁の工事をしている会社は、入札時に優遇されるとかの理由でISO認証しているところが多いですね」
佐々木
「建設業の許可を受けているところはほとんど認証したんじゃないかな。つまり小規模な工事しかしていないところ以外という意味ですが」
大越
「なるほど、そういう観点では認証しているとメリットはあるわけか」
大越はノートにメモを取っている。
佐田
「ところで曽根原さん、私の話を始めてよろしいですか。今まで大越さんのお話を私たちが聞かせていただきましたが、これからは逆に私たちの話を大越さんにも聞いていただき、ご意見を頂けたらうれしいですね」
曽根原
「大越さん、よろしいですか?」
大越
「あ、どうぞ、どうぞ」
大越は手のひらを差し出した。
佐田
「今環境管理部では仕事の仕組みとか実施事項を見直そうといろいろ検討しております。曽根原さんから関連会社に対することについてご意見をお聞かせ願いたいと伺いました。
私たち、環境管理部の仕事というのは統制と支援だと思っています。統制という言葉をきくと上から目線とか専制と思われるかもしれませんが、そうじゃなくて管理よりは緩やかな指導とかとりまとめというニュアンスと考えてください。例えば当社グループの環境計画を皆さんのご意見を聞いて取りまとめそのご協力をお願いするとか、定期的に環境監査をしておりますし、少し前には青森岩手の不法投棄問題が起きた時は遵法点検をしました。
支援というのはもちろんいろいろな援助で、例えば今のお話にあったようなISO認証の指導とか、環境法規制改定の情報提供などをしているつもりです。
今考えているのは、その統制と支援という役割を果たすために、その方法や具体的手順などをどんどん改善していきたいと思っています。私どもが楽になるという意味ではなく、関連会社さんが希望するようなもっと役立つ方向にしたいということです」
大越
「それだけ伺っただけでいろいろと思い浮かぶことがあります。発言してよろしいですか」
三人はうなずいた。
大越
「環境監査からいきますと、点検してもらうのは大変ありがたいし、問題が見つかれば是正しなくちゃならないのはわかります。しかし2年ごとに監査に来られて、これが悪いぞと言われるのはちょっとつらいですね」
曽根原
「どうしてほしいということでしょう?」
大越
「まず定期的というかこまめな指導をしていて、そしてそれを守っているかを確認するために監査するという流れにしてほしいですね。先ほど佐々木さんでしたっけ、法律を守るのは義務だとおっしゃった。確かに法律は守らなくちゃならないわけですが、我々商売をしている者にとって環境法規制を調べるのは本業じゃないですよ。
だから法改正があったとき環境管理部さんが説明会を開く程度ではしょうがないですから、定期的まあ年1回とか法規制説明会を開いてお宅の場合はこれが該当するからこうしなさいと、こと細かく教えてほしいですね。レベルが低いと言われるかもしれませんが、低いという前提で対応してくれないと困ります」
曽根原
「私もここに来て長くないのですが、現在は監査以外に説明会とかしていないのでしょうか?」
佐田
「確かにおっしゃる通りですね。法律の改正などの情報は定期的に発信しておりますが、まあそこにはどの会社はなにをするのかまでは具体的じゃないですからね」
大越
「具体例まで記載した分りやすいテキスト、それを使った説明会、個々の会社で何をしなければならないかまでブレークダウンした説明、そんなことをしてほしいですね」
佐々木
「大越さんのご希望はその他には?」
大越
「私は総務課長です。私がビルの廃棄物、工事の廃棄物処理、ビルの省エネ、そして社有車の運行まで見ているわけですが、とにかくどうしたらいいか途方に暮れることが多いです。
行政がいろいろなパンフレットを作って配っていますが、それをそのまま社内のルールにもできない。行政も縦割りどころか規制ごとに担当もパンフレットも違います。フロン規制といっても大型エアコンの扱いについてのフロン回収規制法のパンフレットはあり、家庭用エアコンについては家電リサイクルのパンフレットがあります。しかし私のような単なるエアコンのユーザーにしてみれば、こういうエアコンの場合はこうなります、この場合はこうなりますというパンフレットがほしいですね。わがままを言わせてもらえれば、器具備品を廃棄するとき、種類ごとにたどっていけるようなもの、ダイレクトリーのようなイメージってわかりますかね?
それに新しい法規制がどんどんできてくるので、そういったことを社内のルールにどう展開するべきか、環境管理部さんが具体的な社内規則のひな型などを作って配布してほしいですね。
ずうずうしいかもしれませんが、我々パワーのない会社の担当者としてはそういったことをお願いしたいです」

忘れてしまったのでフロン回収破壊法がいつ施行されたのか調べた。「この物語当時はまだ制定されてなかったぞ」などとお叱りが来ては大変だ。

曽根原
「なるほど、」
曽根原は立ち上がってホワイトボードに先ほどの監査だけでなく指導をすること、説明会の実施、テキストの配布などと共に規則のひな型と書き加える。
大越
「それと環境監査というのはグループ企業全社にしていると思いますが、その結果のフィードバック、また社内外の事故や違反の情報提供もお願いしたいですね」
佐田
「環境監査の結果問題が見つかったり事故が起きたりしたときは、都度関連会社さんにメールなどで通知しています。また全体的な問題は毎年まとめてパンフレット形式で配布していますが、ご覧になっていませんか?」
大越
「記憶にないなあ〜」
曽根原
「情報がどこかで途絶えているのかな。あまり偉い人宛に発信しても実務者まで届かないとか・・」
大越
「それと環境関係の法律とか届出とか分らないことは常にあります。行政に問合せするのも敷居が高いし、誰に相談したらいいのか分らないのです。そんなとき何でも相談できるような窓口がほしいですね」
佐田
「今だって私どもに電話していただければよろしいかと思いますが・・」
大越
「だって環境管理部の電話番号が書いてあるだけでしょう、誰が出るのかもわかりませんし、ちょっと恐れ多くて電話しにくいですわ。せめて『ご相談窓口』と書いてあるだけでも安心して電話できますが・・」
曽根原はホワイトボードにそれを書き加えた。
大越
「人材育成も問題なんです。私も元々は営業担当でしたが、40過ぎてから総務に回されまして、初めは何もわかりません。日々仕事をしていてカットアンドトライで、いや失敗して覚えているようなありさまです。後輩を育成するにしても私自身体系だった勉強をしていないから教えるにも躊躇してしまうし、
本社の方で例えば年に一回くらい非製造業の環境担当者教育を募集して、3日とか1週間の集合教育をするなんてことはできませんかね」
曽根原
「社外でそういった教育をしているところはないのかね?」
佐田
「廃棄物コンサルタントなんて自称しているところが廃棄物管理について教育しているとか、審査員研修機関で環境法規制教育をしているところは見かけますが、非製造業の環境管理について体系的に教えているコースなどは見かけたことがありません」
曽根原
「製造業の場合はあるのですか?」
佐田
「特段、製造業の環境担当者教育と銘打ったものも見かけませんが、確か産環協では工場の環境担当者の初歩を教えていた気がします。
もっとも製造業の場合は業務上必要だからそもそも担当者を置いているから技能の伝承は日常行われているでしょうし、焼却炉、排水処理とか排ガス処理などのメーカーはユーザー教育をしていますからね」
大越
「正直言ってこんな悩みごとを話したのは初めてですよ。小さな非製造業の会社ですから、まわりに専門家もおらず相談することもできないし、トラブルでもないと行政に行くこともありません。先日環境管理部さんから青森岩手の不法投棄に絡んで契約書とかマニフェストの点検をしましたね。そのとき点検に来た人にいろいろと教えてもらいましたが、契約書に何を書かなくてはならないかなんて初めて知りました。
大げさなことではなく環境管理の専門家と雑談するような場を設定してもらっただけでも役に立つと思います。
先ほども言いましたが、2年に一度環境監査に来るだけでは日頃悩んでいることがあっても相談する雰囲気ではありませんし・・」

大越が帰ってから、曽根原、佐々木、佐田の三人は会議室に残っていろいろと話をした。
佐田
「大越さんの話を聞くと、彼が期待していることの半分は、我々は従来からしているように思えますね」
曽根原
「彼のところまでその情報が届いていないのか、あるいは日常業務に追われて親会社からの通知なんてしっかり見ていないのか」
佐々木
「マイクロソフトがオフィスソフトの改良をしようとして、ユーザーが欲しい機能をアンケートしたそうだ。そしたらユーザーが希望する新機能は実は元々から具備していたものばかりだったそうだ。つまりユーザーがそんな使い方があるとは知らなかったというわけだ。
我々も一生懸命指導と統制や指導をしようとしていたわけだが、その意図も情報もしっかりと届いていなかったということが問題のようだね」
佐田
「じゃあ、どのように改善をしたらよいのでしょうか?」
曽根原
「まずもっとコミュニケーションをとることが必要だろう。環境管理部はこんなことをしていますよ、何かあったらご相談くださいという2点だけでも大声で言うことが必要だろう。
それと重要な情報や通知はメールとか冊子で送りつけるだけでなく、本社などにリアルで集めて説明会をしたり実際に届書を書かせたりすることなどしてみたらどうだろう」
佐田
「しかし曽根原さん、当社の工場、支社だけでも40や50拠点になるでしょう。グループ企業となると100数十社あるでしょうし・・」
曽根原
「何事もやってみなくちゃわからないよ。一度トライしてみたらどうかね。案外簡単かもしれない。もちろん全国一か所というわけにはいかないだろうから、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡とか何カ所かに分けて集合教育を行うとかね」
佐々木
「それと今日の大越さんの希望をすべて満たすことは考えてもしょうがないと思う。もう少しヒアリングをしてみて最大公約数的なものを考えるとか、あるいはできることしかしないと割り切ることも必要だろう」

うそ800 本日の不安
だいぶ前、N様から「マネジメントシステムといいながらマネジメントシステムについて書いてない」というお叱りというか苦情を頂きました。
心を入れ替えて(ウソ)このところマネジメントシステムについて書いているつもりですが、いかがなものでしょうか?
お酒 実は先日N様と飲みまして、きついことを言われました。それは、私が書いていることはISO規格と会社の実務を理解していない人には全く理解できないことだろうし、ISO規格と会社の実務を理解している人にとっては読むまでもないことだ、つまり誰も私の書いたものなど見ないだろうというのです。
うーん、もう言葉がありません。武蔵未熟なり、おばQ不熟なり

もうひとつ、N様から言われたこと
自分の勤めている会社のヒアリングをするなんておかしい。ヒアリングしなければわからならないならその人は努力不足であるとの仰せ!
そりゃそうですが、佐田が何でも知っていてそれを語るだけではお話になりません、これは物語ですからと防戦一方でありました。トホホ



レイシオ様からお便りを頂きました(2014.06.19)
マネジメントシステム物語について
私が書いていることはISO規格と会社の実務を理解していない人には全く理解できないことだろうし、ISO規格と会社の実務を理解している人にとっては読むまでもないことだ、つまり誰も私の書いたものなど見ないだろうというのです。

大丈夫です。審査員の誤解釈を押し付けられた私のような環境担当者にとってはバイブルのようなものです。
また,実務が書き物として残されるような文化がなく,口伝(よく言えばOJT)で伝承されながら,「技能技術の伝承が課題」等とのたまわくうちの会社からすれば,あるべき姿が見えるのはありがたいものです。

レイシオ様 毎度ありがとうございます。
駄文にも存在意義があることに一票入りました。この一票は大きい!
では、明日からまた駄文を・・・


外資社員様からお便りを頂きました(2014.06.22)
おばQさま
マネジメントや組織の在り方を、考えてみる意味で、至近のいくつかのケーススタディを興味深く拝読しております。
いつもお書きになっているように、マネジメントとはISOに定められるものに限定されず、本来 会社の機能として持っているものです。ですから、審査員様がご指摘するまでも無く、会社の中でまともに機能してるべきものであり、その価値感や行動基準は会社ごと経営者によっても異なりますからよほどどうしようもない会社以外には、ISO審査で指摘が存在するものではないのだと思います。
ISO審査の費用対効果の問題を、マネジメントの観点で考えれば、これを数値化するのは普通のマネジメントなのです。
会社は不要なものはやりませんので、佐田氏の会社のように、その利害得失を明確にして判断するのはマネジメントの健全な発露なのだと思います。
となると、無駄と承知しつつ、二重規約を続けている、教条的で無駄なISO審査対応を継続している会社の場合には、マネジメントに何らかの問題があるのだと思います。
その原因を考えてみると、
 1)正しい姿(つまり問題点)がマネジメントに報告されていない
 2)無駄を越えるメリットや価値がある などが主と考えられます。
1)の場合には、ISO審査に対応する社内部門が報告しないのですから、大きな問題です。
どんな会社でも、現場が正しく報告しなければ、適切な対応をとれません。
とは言え、現場が問題を隠しても、何等かの異常に気付くのもマネジメントの責務ですから、この場合には、マネジメント側が、別の側面で調査し、問題を掴む必要があります。
そのような問題点への敏感な感覚と、多面的に組織を見る力は、マネジメント側の責務でもあります。
2)の場合には、その価値評価の主体が誰かが重要です。マネジメント側が判断しているならば、問題ありませんが、現場が勝手に良い事だと思っているならば大問題です。ましてや、社外の審査員や認証会社が価値基準を押し付けるものでもありません。
とは言え、現場が誤った価値観を持っている場合には、それを察知し、修正する事もマネジメント側の責務と思います。

以上のように考えてみると、ISO審査は、会社のマネジメント能力を判断する事に使えるのだと思います。
但し、それはISO審査で合格している事ではなく、どのようにISO審査に対応しているかなのだと思います。
無駄をなくした審査を行う事が出来れば素晴らしいでしょうが、マネジメントと異なった価値観:ISO教条主義を現場が持っている場合に、それをいかに察知し、修正するかも、非常に重要なのだと思いました。
以前 佐田氏は、審査機関を選ぶときに、ユニークなアンケートを導入しましたが、これと似たもので、取引先に、ISO審査にどのように対応しているかのヒアリングを行えば、その会社のマネジメント能力を、ある程度 判定できるのではと思います。

外資社員様 毎度ご指導ありがとうございます。
正直言いまして、外資社員様やN様からお便りをいただきますと、何を指摘されたのかと脂汗が流れます。(本当です)
お書きになられましたが、
無駄と承知しつつ、二重規約を続けている、教条的で無駄なISO審査対応を継続している会社
正直言ってそういう会社は多いと思います。特に東証一部上場などの会社はISO認証でなにか改善の機会があるだろうなどとは決して考えていないでしょう。
なぜならそう言った会社で役員になれないどころか、関連会社に出向もできなかったノーナシの人々がISO審査員になっている実情があるからです。
私は審査に来た審査員が役員の名刺を頂いて喜々としているのをいつも眺めていました。そういった人が審査を受けた企業を改善するほどの知識、知能、アイデアがあるとはその場にいた人は決して思いもつかないでしょう。
もちろん私にとっても、そういった審査員が語ることが企業に役に立つとか、自分が考えつかなかったことを明示するとは思いもよりませんでした。
つまりそこに大きな誤解があったと思います。
審査員はただの人なのです。私は第三者認証制度を否定しません。その効果はあるだろうと考えています。しかしその効果とは、規格要求との比較判定だけであって、企業をよくするなんてこととは大違いなのです。
審査員の方々はそのことを良く理解して、大口をたたいてはいけません。へたにマネジメントのことを語れば経営者に論駁されるでしょう。現実的なパフォーマンス改善のことになれば我々担当者が心血を注いで考え実行していることにかなうはずがありません。そういう現実を謙虚に認め、己の立場、己の見識、己の限界を悟って審査を行わなければ自分の立ち位置を失ってしまうでしょう。世の中の善意によって己の存在が認められているという現実は認めがたいかもしれませんが、認めるしかありません。なにせ現実ですから


外資社員様からお便りを頂きました(2014.06.23)
いつも、お付き合いありがとございます。

つまり審査とは税金とか寄付のようなものと思っているからです

これは、実態としては判りますが、これを誰が判断するかが重要ですよね。
佐田氏の偉い所は、自分の所信は述べず、事実(メリット・デメリット)を報告してマネジメント側の判断を仰いでいます。
マネジメントが判断した結果として受け入れているのならば、責任はマネジメントが負うべきで審査機関も審査員も無罪なのです。

但し、社内のISOの事務局や所管部門が、合格する為に社内の無駄や発生している問題(二重規格など)を隠したり、外部の権威に乗っかって、必須である如くふるまうならば、それこそがマネジメントの問題と思います。
それを審査機関や審査員が、助長して、その挙句に「マネジメントに寄与する」などと言えば、悪い冗談にしか聞こえませんし、正気を疑います。
それでも平気でいうのならば、前に書いて御叱りを受けましたが、社会心理学の問題か(何故このような人達がいるか)自身の矛盾に気付けないか見ぬふりをしているのでしょうね。

外資社員様 毎度ありがとうございます。
企業側でISOに関わっている人は、もちろん事業をする上で認証が必要だと考えているわけですが、その必要性という言葉の意味するところが多様だと思います。
税金は法規制で義務、近隣を掃除するのは企業市民としての常識、飲み屋のミカジメ料は・・、まあ必要といってもいろいろな意味があるわけですが、ISOはどうでしょうか?
認証をすることによって企業をよくする、良くなると考えている人はおめでたい人ではないかと愚考します。
おっしゃるように「外部の権威に乗っかって、必須である如くふるまう」事例は結構見かけたり、雑誌にそれを自慢して書いている人も多いようです。審査の前に事務局担当者が私利私欲のため、あるいはまったくの善意であっても、個人の意向を審査員に伝えてそれを経営者に審査側の意向として伝えてほしいと要請するなんてのはもう多々あります。またISOのためだ、これをしないと認証できないなんて見当違いの無駄な仕事をさせるのも多いですね。そういうことによってISO事務局を自称する人が己の存在を内外に示す、それを雑誌や座談会で自慢するという、アホ丸出しも多く見かけます。
よその会社であるなら私も笑っているだけですが、関係するところなら徹底的にダメ出ししたものです。それこそ背任じゃないですか。
「マネジメントに寄与する」などと言えば、悪い冗談にしか聞こえません
おっしゃる通り、何を語ってもよいですが、証拠、実績で立証することが人々の信頼を得る唯一の方法です。審査員がそう語るとき、どこでどのような成果をだしたと証拠をあげてくれれば、私は裏を取らせてもらいます。それが事実であったなら、少しは真面目に話を聞くことを約束します。


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