マネジメントシステム物語68 不祥事

14.07.21
マネジメントシステム物語とは

この物語は2007年のこと、佐田も55歳になった。役職についていれば、そろそろどこかに行くのかと・・・つまり出向先はどこかと腰が落ち着かなくなる時期だろう。だが無役と言えば聞こえがいいが平社員の佐田にとって役職定年は無縁だ。もちろん認証機関に審査員として出向とか、業界団体に出向という可能性も無きにしもあらずだが、その可能性は非常に低い。実際のところ、佐田が工場や関連会社に異動したとしても、今から役職に就くはずがなく、また担当者の仕事をさせるには賃金が高すぎる。上長から何も言われないところをみると、このまま定年まで環境管理部に居座るのかもしれない。
だがそうともいえない要因もある。竹山が本社に戻ってきて早2年が経った。彼も今ではしっかり仕事をする。そんな状況を見ていると仕事に対して人が余分と思える。どこかに飛ばされる前に、自分が次の職場を探して出ていった方がいいかなとも考える。聞くところによると監査部とか関連会社部の人たちは、そこにいる間に次の職場を探して移るというのが暗黙のルールらしい。
ところでと佐田はまた考える。定年したらどうしようか。退職金なんていってもまとまったお金ではない。公的年金が満額もらえるのは66歳からで、それまでは働かねばならないのは見えている。もっとも44年特例という制度があるから、高卒の佐田は62歳まで働けばそのときから年金を満額もらえるはずだ。そのためには定年後最低2年間は仕事しなければならない。佐田のプロフェッションといえば今は環境管理というか公害防止であろうが、そんな専門的な仕事でなくても退職後軽い現場作業でも見つけようかと思う。ただ今まで仕事で訪問した関連会社に雇ってくれませんかなんて言うことだけは絶対にしたくない。相手にとっても迷惑だろうし、そんなお願いをするのは恥ずかしい。
そういえば塩川課長は今年役職定年のはずだ。何のうわさも聞いていないがどうなるのだろうか?
そんなことを考えていると塩川課長が佐田を呼んだ。
佐田は立ち上がって塩川課長の席に行く。
佐田
「はい、なんでしょうか?」
塩川課長
「ここで聞いてもらうような話でもない。あっちに行こうか」

塩川は佐田を連れて打ち合わせ場に行く。二人はコーヒーを注いで座った。
塩川課長
「佐田よ、このところ環境不祥事というのかなあ〜、いろいろと報道されているのを知っているだろう」
佐田
「はい、最近の報道をみてますと、もう業種もいろいろ、所在地もいろいろ、内容もいろいろ、環境担当者として他山の石とせねばと考えております」
塩川課長
「お前に似合わないようなことを言うもんだ。舌を噛んだりしないのか?」
佐田
「ハハハハ、私も田舎から都会に出てきてもう12年になります。標準語くらい話せるつもりです。でもね、課長、本音を言えば全然問題じゃないと思いますよ」
塩川課長
「問題じゃないってことは、ウチでは問題がないということか?」
佐田
「そうじゃありません。報道ではあたかも今まで隠れていたというか、隠していた不祥事が沸いたように出てきたといったニュアンスです。でも過去からの報道を振り返ってみれば、件数が増えているようには思えません。そういったことは従来から報道されていました。ただそのニュアンスが、過去には違反があったという事実だけだったのが、最近では悪質だ、凶悪だ、許せないといった形容詞付き、これは言葉のあやですが、そういったニュアンスというか趣旨で報道されているものですから、人々は不祥事が増えていてかつ悪質になったと感じているように思います」
塩川課長
「その〜不祥事が増えていないというのは事実なのか?」
佐田
「私もこんな商売をしていますから、そういったことには気にかけています。課長は公害の苦情が増えていると思いますか?」
塩川課長
「公害って典型6公害のことか? わからんな」
佐田
「全然増えていませんよ。ここに過去10年くらい騒音が若干増えている他は変わっていません。騒音は都市型公害といいますか、工場ではなくカラオケとか一般家庭のピアノなどが多いのです」
公害苦情発生状況
排水基準違反件数
西暦件数
200319
20049
200518
200610
このお話は2006年時点なのでそのときまでのデータを載せた。JABがISO認証の信頼性が損なわれたと騒いだのはそこまでのデータを基にしてのことだから。
とはいえ、2014年公表のグラフを下図に示すが、大して変わっていない。ただ大気についてはダイオキシンについての恐怖が消えたせいか大幅に減少している。まさにテレビ朝日恐るべし、テレビの影響は大きいということだ。



塩川課長
「大気汚染が数年前に極端に増えているが、これは都市の大気汚染のせいか?」
佐田
「課長、ボケたのと違いますか? これは例のダイオキシンの・・・」
塩川課長
「そうか! あれだな、久米ひろしがニュースステーションでダイオキシン公害のねつ造報道をしたあれだな。1999年だったかな?」
佐田
「ねつ造というと語弊がありそうですがね。事実誤認の報道をした結果、その直後から人々が不安になり苦情が急増したのです。実際にはそれは間違いでしたが」
塩川課長
「だけどよ、公害苦情と不祥事はリンクしないだろう」
佐田
「おっしゃるとおり。ただ環境事故や環境法違反が報道されているようには増えていないことは事実です」
竹山
「私も話に加わってよろしいですか?」
突然脇から声がして、ふたりは振り向いた。
竹山が塩川をはさんで佐田の反対側に座った。
竹山
「私は報道だけでなく、ISO関係者とか環境関係者が現実の指標とか事実関係を調べずに、報道を聞いて大騒ぎしているように思います。報道で一般人が不安を感じるのはまあ専門家じゃないですからしかたないところもあるでしょう。でも、ISO関係者が「不祥事が増えている」とか「ISO認証をしているのに問題を起こした」なんて言い出すものだから、余計混乱に輪をかけていると思います」
塩川課長
「竹山よ、おれはお前の言っているのがよくわからないが、具体的にはどんなことかね?」
竹山
「こんなウェブサイトを見つけました。
ウェブサイトの主宰者はISO審査員のようですね。そのウェブサイトでは、大手企業5社でデータ改ざんがあったことをとりあげて、環境不祥事が増えている、企業はウソをついているのではないかということを語っています」
塩川課長
「ちょっと待てよ、環境不祥事と犯罪は同じなのか?」
佐田
「そういった言葉の定義は定められていないようです。とはいえ環境不祥事というのは犯罪だけでなく事故も過失も含むのでしょうね」
竹山
「私はそこはあまり厳密に考えませんでした。ともかくこの人は事故が5件あったことで、環境不祥事が増えていて問題であると主張しています。なぜこの5件から環境不祥事が相次ぐとか増えていると言えるのか、根拠がわかりません。根拠というか事実関係をちゃんと示さなくてはデマにすぎませんよ」
塩川課長
「ちょっと読ませてくれ・・・・・これを読むと、このウェブ主は環境不祥事に関して、ISO審査員の責任はない。すべて企業が悪いと言いたいだけのようだな」
竹山
「つまり報道される環境不祥事がISO認証の責任ではないという人がいたから、余計に環境不祥事が目立ったということでしょうか?」
佐田
「ISO関係者の論は企業の環境不祥事が多いぞという報道を受けて、それを火消しようとしてかえって火の粉を広げているように見えますね」
塩川課長
「論理に飛躍があるが、結論としては当たらずとも遠からずかな・・・
ともかく環境不祥事にISOが関係があるか否かの前に、環境不祥事が増えているのかいないのかをはっきりさせなくてはならないな。ここは佐田や竹山のいう通りだ。
そしてその環境不祥事の原因がなんなのか、それが事故か過失か故意かの分析が必要だ。その辺を究めずに俺たちは責任がないというのもおかしな話だ」
竹山
「人々は事実を把握しようという気は起きないのでしょうか? 不良対策なら常識だと思いますが」
佐田
「課長に質問ですが、課長が私に話しかけてきたときは、環境不祥事が増加しているとお考えだったのではないでしょうか?」
塩川課長
「うーん、そう言われると・・」
竹山
「佐田さん、私も佐田さんのお話を聞くまでは、そう思っていましたよ」
佐田
「今はテレビや新聞の影響が大きいですからね。テレビ朝日が所沢市のダイオキシンが高いと報道したのを聞いて、それが事実か否かを確認した人はまずいないでしょうね。でもその根拠を確認することは必要です。環境不祥事が増えているという報道を観たときも同様です」
塩川課長
「だが環境不祥事が増加していないとしても、当社で発生しないようにしないとならないな。
それがそもそもお前に指示したかったことなんだが」
佐田
「こんなことを言うと無責任に聞こえるかもしれませんが・・」
塩川課長
「というとウチでもいつかは起きますよというのか?」
佐田
「そのとおりです。あのですね、精神論とか建前論を語っても意味はありません。我々は法を調べ、それに対応するように設備を作り、教育訓練しそして運用しています。そんなことはISO14001なんてものが現れる前からやっているわけです。でもソフトウェアのバグを完全に見つけることは不可能でしょう。何年も経った後にエラーが起きてバグに気が付くこともあります。
我々の環境管理の仕組み、設備、人間にも同じようにエラーがあるだろうし、ミスが起きてあたりまえです。もちろん過去の失敗の是正処置、日々の日常点検や他社の状況、技術や設備の進歩を取り入れて予防処置をしています。だけど完璧なんてあるはずがありません」
塩川課長
「だから確率的に発生するというのか?」
佐田
「そうです。神ならぬ人間ですからそれはやむをえません」
塩川課長
「じゃあ、我々ができるのはお祈りすることだけか?」
佐田
「課長が信心深ければお祈りも有効でしょう。私は信心深くないのでお祈りするのではなく、不祥事が起きないように努めるだけでなく、起きた時の対応を考えているということです」
塩川課長
「俺だって考えているよ。会社規則にだって製品不具合や工場で事故が起きた時、企業犯罪が起きた時の対応を決めているじゃないか」
佐田
「その通りです。ですからお祈りする暇があったら、その規則で決めてあることの予行演習、つまり謝罪会見の言い方、頭の下げから、記者から怒鳴られてもカッとしないなんて練習をしておかなくてはなりません」
大河内部長
「おお、佐田よ、俺も今環境担当役員からそれを言われてきたところだ」
突然、部長の声がしたので三人は驚いて顔をあげた。
大河内がコーヒーカップを持ってそばに立っていた。大河内は竹山の隣に座った。
大河内部長 竹山 塩川課長 佐田
大河内部長 竹山 塩川課長 佐田
大河内部長
「常識的に考えて、他社に不祥事が起きてもウチでは起きないなんてことはないだろう。不祥事が起きないように教育し実施させ点検するというのも必要だが、起きたときの対応もまた必要だ」
塩川課長
「当社の環境内部監査は他社よりはレベルが高いですよ。他社にはISO14001認証したから内部監査で環境をみないとか、ISOの真似事のような内部監査しかしていないところが多いですから」
佐田
「私も他社の同業者に会うといろいろ先方の状況を聞いていますが、課長のお話は間違っていません。しかしだからといってウチで事故や違反が起きないというわけではありません」
大河内部長
「その通りだ。塩川よ、ウチの緊急時の体制ってどうなっているんだ?」
塩川課長
「その手順は会社規則で決めています。まず工場や関連会社で事故や違反が起きましたら、即環境管理部に連絡することになっています。休日のときは部長と私の携帯に入ることになります。言い換えると、この段階で機能しないと・・初動が大事ですね」
大河内部長
「会社規則で決めているとしてだ、その会社規則は社内の工場にはともかく、関連会社に対して有効なのか? 強制力がなくちゃ意味がないぞ」
塩川課長
「ええっと、佐田よ、それはどうなっているんだ?」
佐田
「当然ですが当社の規則は関連会社に対して影響力を持ちません。しかし会社規則で、関連会社を監督する部門は所管している関連会社に対して、それと同じルールを作るように指導することを定めています。当然私どもが行っている環境監査において、監督している部門が関連会社にどのような指導監督をしているかをチェックしています。また関連会社の監査においては、そのルールが制定されているかを確認しています。現実に規則の制定状況は大丈夫ですから仕組みに漏れはないでしょう」
大河内部長
「なるほど、それで過去その仕組みは機能していたのか。報告漏れなどはなかったのか?」
佐田
「それも私どもが環境監査で点検しています。まあ、結論として9割方は機能しています」
大河内部長
「じゃあ1割は機能していないのか?」
佐田
「そうですね。昨年は・・・詳細資料が手元にありませんのでオフハンドですが、当社の群馬工場で市の環境課の立ち入りの際にマニフェストの記載にミスが多いという指摘を受けていましたが、それを本社報告していませんでした。それから一昨年でしたか、愛知県の子会社が取り外したエアコンを工場空き地に放置していてフロン回収をしていないと書面で注意を受けたことを関連会社部に報告しなかったことがありました」
大河内部長
「佐田よ、お前が何でも知っているのはわかったが、それに対してアクションをとっているのか?」
佐田
「監査やその他の方法で見つかった事項については是正処置を指示し、処置の実施をフォローしています。もちろん通知1本で動くわけではなく、私もなだめたりすかしたり、脅したりしてやらせています。
またそういった問題が発生したときには重要性を判断して、重大なものは即時、重大ではないものは半年ごとにまとめて社内とグループ企業に周知しています。また定期環境会議などでも周知しています。その他、我々の環境監査項目にも反映しています。とはいえ完璧はありません。是正処置、予防処置は問題発生の確率を低くするだけであって、皆無にはできません。是正処置とは語義的には再発防止のことらしいですが、完璧な再発防止なんてありません」
大河内部長
「完璧ってのは無理なのか?」
佐田
「完璧というのはありません、絶対に。神ならぬ人間には無理でしょう。我々は仕事の仕組みをより改善し、また誠実に職務を執行することで問題発生を少なくすることができるだけです」
大河内部長
「おいおい、人生論かよ」
佐田
「そうかもしれませんね。こんな商売をしていると、ある意味諦めも必要です。いや諦めというよりも、最悪に備えるといいましょう。世の中には完全とか完璧はありませんよ。努力しても報われるとは限らない。しかし努力しなければ良くなることはない。それは事実です。ですから少しでも可能性をあげ、そして目標値をあげるように努力しているわけです」
大河内部長
「わかった、わかった。それで佐田たちのしていることによって、不具合発生は減っているのか?」
塩川課長
「もちろんです。行政から違反だと言われたり事故になってしまったものはめったにありませんが、それも過去10年減少しています。その他、環境監査で見つかる不適合も年々減少しています」
大河内部長
「わかった。ところで環境不祥事といっても工場の事故だけではないよな。じつはさ、役員から言われたんだが、今や製品に含まれる化学物質規制も厳しくなったからその対応はどうかと聞かれた。俺はわからなかった。次回会ったとき答えなくてはならない」
塩川課長
「REACH規制は来年2007年からですが、既にそういったことは対策を進めています。いろいろありますが、今部長がおっしゃったことについてはトレーサビリティを確立して製品の流れを把握して対応すること、欧州の行政への報告や広報などについても手順を決めています」
大河内部長
「国内はどうなんだ?」
塩川課長
「欧州ほど精緻なことはしていません。とはいえ、言い方を変えると法規制ないところに対応はありません」
大河内部長
「まあ、そういうことになるのか? 不誠実なようにも思えるが、規制がないものには対応しようもないか」
佐田
「日本でもREACH類似の規制が検討されています。ゆくゆくはそうなりますよ」
大河内部長
「そうだ、輸送中に問題が起きたときはどうなんだ?」
佐田
「まず輸送についてはJRや宅配便各社がそれぞれの規制基準を決めています。それを遵守することを決めています。化学薬品などを輸送する場合は容器や表示など輸送会社によって異なります。扱わないとしている会社もありまして、ともかくそういったことを守ることが第一です。それから事故発生した場合の手順も決めています。本社報告とか監督官庁への報告、安全対策など」
大河内部長
「質問が二つある。そういったことは関連会社も含めて周知されているのかがひとつ、
もうひとつは、過去に問題があったのか、その仕組みは有効に機能したのかということだ」
佐田
「先ほどの緊急事態発生対応の規則と同じく、化学物質を輸送するときの手順についても定めていますし、関連会社に制定を求めるように決めてあります。
輸送中の事故は私が知るかぎり数年前の1件だけです」
大河内部長
「それはどんなことだった?」
佐田
「ある工場から研究所まで宅配便で薬品を送ったところ、輸送途中に容器から漏れたという事故がありました。被害は他の荷物に薬品が染み込んで汚れただけで済みました」
大河内部長
「それは合法だったのか? そしてその宅配便会社の規約にはどうだったのか?」
佐田
「まず、これは環境問題というよりも安全衛生問題でした」
大河内部長
「分類はどうでもいいが問題に変わりはない。対策しなければならないことだろう」
佐田
「分類次第で担当部門が異なります。このケースは総務部が担当でしたが、環境管理部はどんな性質で危険性はどうかという問い合わせを受けました。結果は、輸送しても法的には合法でしたし、危険性があるものでもなく、そういう観点では問題はありません。ただ野菜から水が漏れて、他のお客さんの荷物を汚したって問題です。そのときは宅配便会社に薬品の説明をして損害賠償などで事なきは得ました。まあ、いいことじゃありませんね」
大河内部長
「今はどういう仕組みにしているのか?」
佐田
「申しましたようにこれは総務マターで、総務部は運ぶものによる宅配便利用の可否を決め、その際の輸送方法、容器などを定めました。また輸送にあたっては宅配便会社に事前説明するとしています」
大河内部長
「今後、そういう事故が起きたら対応は総務ということで良いのか?」
佐田
「郵便物や小荷物の輸送は総務部です。しかし工場の機械設備の輸送になりますと生産技術部ですし、部品・材料であれば資材部、製品の輸送となるとロジスティクス部の責任です」
大河内部長
「うーん、複雑なのだな。塩川よ、その辺の役割分担は大丈夫なのか?」
塩川課長
「まあ隙間はないと考えておりますが・・・」
佐田
「そういった事故対応といいますか、緊急事態対応はしっかり決めてあると思います。ISO規格でも緊急事態対応の手順を作れなんてのがありますが、我々は経験を基に常にルールを見直していますので実効性は高いと考えています」
大河内は手帳に佐田と塩川の話を聞きながらメモを取っている。
大河内部長
「そうか、今度役員に会ったときはそれを説明しておくわ、
それとさ、昨日業界団体の環境の会合があったんだよ。まあ定例のどってことのないやつだが、本当はその後の親睦会がメインじゃないかって俺は考えているんだけどさ、まったく同業他社にはヒマ人が多いようでさ、俺は酒なんて飲んでいるより会社に戻って仕事をしたいよ、
ま、それはそれとして、その席上で話題になったことなんだが、つい最近、日本適合なんとか協会ってところでISO認証の信頼性が低いとか言い出したんだって? 他の参加者は深刻そうな顔をしていろいろ議論していたが、それは一体何なんだ? 俺はさ、分らないから話を聞いていただけだったがあまり重要なこととも思えなかったがなあ〜」
竹山
「私も話に加わってよろしいですか」
大河内部長
「いいとも、まずその日本適合なんとかから説明してくれ」
竹山
「最近といってもここ2・3年の企業不祥事をご存知ですね。工場のばい煙測定データを改ざんしたとか、廃棄物と思われるものをリサイクルという名目で処理したとか、食品の賞味期限を改ざんしたとか・・」
大河内部長
「うんうん、けっこうあるなあ。ウチは大丈夫だろうなあ〜」
塩川課長
「まあ、それはおいといて竹山君の話を最後まで聞きましょう」
竹山
「そういった企業の多くがISO9001とかISO14001を認証していたので、その有効性があるのかということがマスコミや行政が疑問視したのです。ISO認証は日本の場合、認定機関というのがひとつありまして、それは日本適合性認定協会というのですが、そこが実際に審査業務を行う認証機関を認定、認定がなくても認証ビジネスはしても良いのですが、まあなんといいますか、つまり一人前であるという証明といいましょうか、そんなものですが、しているわけです。ともかくその認定機関である日本適合性認定協会が認証機関にしっかり審査しろと檄を出したということでしょうか」
大河内部長
「実際にそういった企業不祥事は増えているのか?」
竹山
「実は今佐田さんと本当にそうなのかということを話し合っていたところでした」
佐田
「環境に限らず不祥事というのは増えているとは思えません。報道も過去からされています。ただ世の中のモラルの基準といいますか倫理基準というものが、年と共に厳しくなってきたということはあるでしょう。それは悪いことじゃありません。話は変わりますが今ではセクハラなんて厳しく言われるようになりました。部長だってご存じでしょうけど私が若いとき、1975年頃は職場にヌードカレンダーを貼っておいても騒がれることはなかったです。当時ヘアは解禁されてませんでしたけど。総会屋だって同じです。つい15年くらい前まで経営者が総会屋と付き合っていても社会的糾弾を受けるということはなかったでしょう。もちろんそれが良いとは言いませんよ。
環境不祥事も同じで、以前は排水が規制を満たさなかっても今ほど大騒ぎはしませんでした。
もちろん社会の倫理基準が上がっているのですから、それに合わせて、いやそれ以上にしなければならないのはもちろんです。ただ不祥事が増えているとか、ISO審査が甘いからだという表現はどうかと思いますね」
大河内部長
「だが、その日本認定ナンチャラだって環境不祥事が増えているというなら、その裏付けデータくらい示しているんだろう」
佐田
「それが一切データは示していません。問題だ、問題だというだけで、何がどれだけ問題なのか、誰も分りません。たぶん日本適合性認定協会でさえ分かってないんじゃないですかねえ〜」
大河内部長
「わかった。佐田よ、その辺のいきさつを簡単にまとめてメールで俺に送っておいてくれ。あっ、もちろんそれと当社がどう対応すべきか、あるいは対応しなくてもよい理由などをな」
佐田
「承知しました。
課長、それじゃ私はこれでよろしいですか」

佐田と竹山が自席に戻り部長と課長が残った。
大河内部長
「佐田のことだがよ、奴は有能で何でも知っているようだが、それは問題でもあるな。奴だってもういい歳だろう。奴がいなくなった後はどうするのかというのがひとつ、それとあまり奴に情報が集中しているのはまずくないか」
塩川課長
「まず年齢的に佐田よりも私がいなくなるのは早いですから、そこんところは部長が考えてくれないと困ります。それから奴が当社グループの環境事故や違反のネガティブ情報を知りすぎているということですが、事故対策、違反対策は本来管理課が担当なんです。しかし能あるものがするのが最善ということで事故や違反が起きると彼が処置対策を指揮しているのです。
佐田の不祥事が起きてもしょうがないという口ぶりに不満を持たれたかもしれませんが、まああれは言葉のあやです。奴はけっこう頑張っていますし、それなりに結果を出しています。当社グループの管理レベルは同業他社に比べてひけはとりません。しかし彼は実際に仕事をしていて、確率的に問題が起きるのはしょうがないと諦念の境地なんでしょう。まあそういう実態を踏まえてご理解ください」
大河内部長
「わかった。うーん、奴の評判は工場にいたときから聞いていたが、確かに有能ではあるが扱いはむずかしいな。それと後釜をどうするか・・・」

うそ800 本日の思い
こんなストーリーにしよう、こんなことを語らせようということは頭にあるのですが、キーボードを打つのも結構手間がかかります。いや、正直言うとめんどくさくなってきました。会社を辞めてからブラインドタッチの力量低下防止と考えていましたが、別にタイプのスピードが遅くなっても構わないと気がつきました(オイオイ)
金にもならないことを手間かけることもありませんね。こんなこと止めた方が賢いのでしょう。



マネジメントシステム物語の目次にもどる


Finale Pink Nipple Cream