ギリシア、EU、ISO

15.06.29
本日のタイトルを見て、頭に浮かんだことが私と同じならたぶん1992年頃からISO認証に関わってこられたお方だろうと思う。私は常識的なことしか考えないから、
では行ってみよう。

このところギリシア破綻というニュースが報じられている。実際に破たんするのかしないのかはわからないけど、大変な事態なことは間違いない。 そしてそれはギリシアにとどまらず、スペインやイタリアのほうまで波及するのではないか心配されている。
ギリシア国旗
実を言って私はギリシア国旗が
どんなものか知りませんでした。
どうしてそんなことになったのかということは三橋貴明などが懇切丁寧に解説しているからそれをお読みになるとよろしい。
複雑で経済的なことは私には分り難いが、私の理解していることを簡単に言えば、EUといってその国情が一様ではないということからきている。団体行動をするとき、全員が同じ体力であれば足並みがそろって順調に進むが、そんなことはめったになく速い人と遅い人がいるのが普通だ。速い人に合わせると遅い人がついていけないし、遅い人に合わせると速い人は不満だろう。欧州というと先進国ばかりと思うかもしれないが、実際には先進工業国といえるのはドイツやイギリス、フランスなどである。南欧は農業国であり、世界的大企業も少なく経済も工業化も遅れている。そんないろいろな国々が10個以上集まって一緒に何かしようというのは難しいだろうというのは誰もが考えるだろう。日本と韓国の二か国でさえ難しいのだからね、
第二次大戦のとき、一番の戦場となったのは欧州だ。日本では沖縄とかナガサキ・ヒロシマが一番ひどかったなんて思い浮かべるかもしれないが、もっとも長期間住民がいるところが戦場になり、 B17 大勢が死んだということでは沖縄や広島との比ではない。東京大空襲のような爆撃がB17によって1年も続けられた。もちろんドイツもV1やV2でお返しをした。
もちろん戦場は西欧だけでなく東欧もロシアもひどいものだった。
いや、沖縄の方がひどかったと異議があるなら調べてから言うこと。
ということで第二次大戦後は二度と欧州(正確に言えば西欧)が戦争をしないようにといろいろ考えられた。「ローマの休日」でヘップバーン演じるアン王女が欧州が二度と戦場にならないようにと語ったのは外交辞令ではなく当時(1953)実際に戦争のない欧州を作ろうとみなが希求していたと思う。
もちろんソ連をリーダーとする東欧に経済的、工業的、そしてなによりも軍事的に対抗することも大儀であった。
そのためには欧州域内での経済協力から貿易自由化と時と共にどんどんと経済の一体化が推進されてきた。

ヨーロッパ統合の歴史を簡単にまとめると次のようになる。
名称発足年初期の加盟国目的
EEC
欧州経済共同体
1958年 西ドイツ、ベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6ヵ国 アメリカ、ソ連に対抗できる経済圏の確立をめざして関税の統一、資本・労働力移動の自由化、農業政策の共通化などを目指した
EC
欧州共同体
1967年 西ドイツ、ベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、英国、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの12ヵ国 国境のない単一市場をつくることを目的とし、商品取引の自由化のほか労働力取引の自由化を図った。
EU
欧州連合
1993年 ECに同じ。但し西ドイツから統一ドイツに変わった。 国境のない単一市場をつくることを目的とし、商品取引の自由化だけでなく労働力取引の自由化を図った。
 
通貨統合
1999年 イギリスなどを除く 通貨の統一を図った。

しかしながら前述したようにEUに参加した国々の産業構造は一様ではない。1993年にEU統合のとき、ドイツなど先進工業国は南欧の安い労働力とそれによる製品が高賃金の先進国に流れ込むことを恐れた。それでEU統合になれば各国の製品が域内を自由に流通できるけれど、その条件として製造者がISO9000sを認証していることを条件とした。ISO認証していない製造者の製品はEU域内でも輸出しちゃいかんと。
ISO9000sというのは、当時はISO9001、ISO9002、ISO9003というみっつの規格があったからだ。末尾の「s」がシリーズの意味なのか複数の意味なのか私は知らない。
2000年改定でISO9001一つに統一された。
もちろんそういう条件をスペインやイタリアにだけ要求することはできない。本音はどうであろうと、建て前は平等でなければならないのが欧州の流儀である。EUのすべての国、そしてEUに輸出するメーカーにもそれを要求した。日本の輸出企業は青くなった。
ご存じのようにISO9000sが制定されたのはそれよりもはるかに早く1987年のことである。しかし当時は「ISOそれオイシーノ」状態で、日本は小集団活動や提案制度があり、そんなガチガチの標準化という手法を取らなくても品質が良く競争力は高いなんて言っていて、ISO認証した企業はほとんどなかった。だがISOという黒船が来襲したためにその鎖国はあっというまに破られた。
ISO認証なんて当時も今もあっというまにするわけにはいかない。EU統合となる1993年にISO認証しているためには、その1年あるいは2年前から認証活動をしなければならない。そのために1991年末頃から欧州に輸出している企業は認証を取らなければならない。そして認証活動に血道をあげた。それが日本でISOブームが起きたきっかけである。
だがそれは悪いことばかりではなかった。私個人について言えば、当時品質保証課で腐っていた私おばQはおかげさまで一躍重要な職務とみなされ、そしてISO認証を期限前にやりとげたおかげで脚光を浴びることになった。人生捨てる神あれば拾う神あり・・
欧州統合が日本にどのような影響を与えたか私は知らないが、ISO認証制度の要求は間違いなく私の生活を変えた。おかげさまで私は窓際から、最先端の仕事とみなされ、それ以降の会社人生は日の当たる坂道・・・もっとも登ったり降ったり波はありましたけど、

さて、最終的な形態である通貨統合するとその輸出競争力は強くなるのか弱くなるのか?

現実にはEU各国の輸出競争力の平均になったようだ。工業製品を輸出品にもつ先進工業国は本来よりも安くなった通貨によって、以前よりも輸出競争力が高まりドンドンとベンツやエアバスを売りこむことができた。じゃあ工業製品を持たない輸出競争力のない国はドンドンと傾いたのか、国民の暮らしが貧しくなったのかというと、うまいことに本来よりも強くなった通貨によってドンドンと外国からものを買うことができた。ギリシアやイタリアやスペインの国民は、統合前よりも安くEU各国からも日本からも買うことができ豊かな生活を謳歌した。
しかしながら先進工業国もそうでない国もみなハッピーになって末永く暮らしましたとさ、なんてシンデレラのようなエンディングは迎えられなかった。物語は多少矛盾があってもよいだろうが、現実の経済ではつじつまが合わなければいつかは破綻する。先進国もそうでない国も同じユーロを使っているわけで、更にその通貨発行権が国家になくEUにあるという現実、そして公定歩合も経済政策も国が決定できずEUというくくりで決定されるという現実は、先進工業国は儲けてもその国民は分が悪く、南欧の国民は豊かな生活をしても国家は貧しくなるということになった。そして国家の借金は国民があがなわなくてはならない。
1枚足りない
財政赤字といっても、日本とギリシアの違いは大きい。
日本政府の借金は日本国民から借りているが、ギリシアの借金は外国から借りている。だから日本政府は日本円を印刷して日本国民に返してしまうことができる。ギリシアの通貨はユーロだから好き勝手に発行できない。そして当たり前だが外国のお金を刷って返すことはできない。偽札作りを国家レベルでしているのは北朝鮮だけだ。
ここんところが大きな違いだ。もっとも多くの経済評論家はこの違いを知らない。それとも知らないふりをしているだけか?
以上がギリシア危機のあらすじだが、経済音痴の私がはしょっているから間違っていたらごめんなさい。詳しくは三橋貴明のウェブサイトなどで勉強しましょう。
参考
書名著者出版社ISBN初版価格
希臘ギリシアから来たソフィア
三橋 貴明
さかき 漣
自由社49152377442013/03/081600円

結果としてギリシアの豊かな生活は誰かが負担しなければならない。いや豊かな生活をした人はその費用を後払いしなければならないのだ。それはいつなのか?

今でしょ!

ギリシア国民は高い賃金、豊かな年金、豊かな生活を手放したくない。じゃあ、どうするの?
ドイツやフランスにギリシア国民の生活を支えてほしいと思う。今までの借金をチャラにしてほしいと思っている。だってドイツは70年前の戦争でギリシアに迷惑をかけたじゃないか。援助するのは当然だよな!
それが2015年今の状況だ。
日本なら沖縄であろうと北海道であろうと、日本である。北海道の人が本州を本土と呼んでも北海道は外国ではなく住んでいる人は日本国民だ。北海道の税収が足りなければ東京都かどこかの住民や企業が支払った税金で道路を作り生活保護を払う。沖縄の暮らしやインフラを支えているのは沖縄県の人が収めた税金じゃ足りなく、関東地方の住人の税金じゃないかと思う。
北海道と沖縄はあまり豊かな県ではない
項目北海道沖縄
県民所得(2012)34位47位(最下位)
失業率(2014)5位1位

まあ日本国民が県人同士争うことはない。国家というのはそういうものだ。同じ日本人なら助け合い、同じアメリカ人なら助け合う。支援する人と支援される人が争う必要はない。
だが、国家が異なればそうはいかない。現実がそれを証明する。ドイツの納税者は自分たちが払った税金でギリシア国民が豊かな生活をするのを納得できないだろう。働き者が怠け者を養う理由がないと、
これからギリシアはどうなるのか?
それは予測困難で私にわかるはずがない。ギリシアは国民投票でどうするのか決めるというけれど、しかし借金している人が決められるはずはない。決めるのは金を貸しているドイツやフランスの納税者だ。
最終的には軟着陸するかもしれないが、あるいはIMFが乗り込んできて金目のものをすべてかっさらっていくかもしれない。15年前の韓国のように、

こ難しいお話はここまでで、以下は私の妄想である。
ISOMS認証制度が今流行を過ぎたとはいえ、いっときはわが世の春を謳歌していたし、今でも認証制度はビッグビジネスであることは間違いない。そうなったのはEU統合とそれに伴ってISO認証が非関税障壁としてのデジュリ(デファクト?)スタンダードとなったおかげである。
デジュリとデファクトの意味はまったく異なる。ただ私は四半世紀前にEUがISO9000s認証しろと言ったのがどちらなのか分らないから上記のように書いた。
今EUがメンバー国家間の利益の享受が異なることによって脱退あるいは分裂の危機にあるのを見ると、ISOMS認証制度の先行きもそれに倣うのかなという気がする。
ISOMS認証制度の終焉が先か、EU分裂が先か、ギリシア国家破産が先か、認証制度破綻が先か、どうなるのかと考えると非常に興味があります。
そしてどうなろうと、その影響は定年退職している私を直撃することでしょう。EU統合の結果としてのISO9000sは40にして閑職にいた私に幸運をもたらしましたが、EU分裂そしてISOMS認証制度の終焉は私だけでなく日本経済に多大なインパクトを与えるのでしょうか?
もっとも4半世紀前のEU統合とISOMS認証制度が、結果的にはあまり日本経済に影響がなかったように、EU崩壊とISOMS認証制度の終焉も日本経済になにも影響がないのかもしれません。
ギリシア問題はあと1年2年で決着するでしょうし、EUの行方も10年で決まるでしょう。私はあと10年は生きるでしょうから、どうなるか看取ることができるだろうと楽しみにしております。

うそ800 本日の吉田松陰
身はたとひ、武蔵の野辺に朽ちるとも、留めおかましアイソ魂


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